2017年9月18日月曜日

ミャンマーの英語圏と日本語圏の市場規模の違いを考えた

先日、Princess Tailoring Shopでロンジー用生地を使って作るワンピースの製作料金の改訂を、日本語英語で当ブログで告知しました。
言語が違うだけで、内容はまったく同じです。
日本語版は新たに投稿を作成し、英語版は以前の投稿を変更しました。
言語圏毎の市場規模を比較する、ちょうどいい機会だったので、それぞれの投稿へのアクセス統計を取り出してみました。

日本語版の投稿から48時間後の記事へのアクセス数が100

 英語版の元の投稿を修正してから24時間後の記事へのアクセス数が623

英語版の投稿を変更して24時間内のアクセスのリンク元:
日本語版はブログ村に掲載し、英語版はミャンマーの情報交換のためのFacebookページYangon Cnnectionで告知しました。
ブログ村経由のアクセスは13、FacebookページYangon Connection経由が約600

日本語版が投稿から48時間後、英語版をYangon Cnnectionで告知して24時間後の国別のアクセス数:
ミャンマーが大多数を占めています。

この統計とミャンマーで暮らしている生活実感から、ミャンマーにおける英語圏と日本語圏の市場規模の違いを推計すると、英語圏の市場規模は日本語圏のそれの約10倍くらいでしょうか。
以前の投稿でも書きましたが、村上春樹の長編が他の日本の作家と比べて圧倒的に多くミャンマー語に翻訳されているのは、彼の長編がすべて英訳されているからです(ミャンマー語に訳された短編集は、英訳があるアメリカ市場向けのアンソロジーのみ)。

ミャンマーの英語圏の市場とは、単にミャンマー在住の欧米人だけではなく、ミャンマーに住む英語話者全体を指します。その中にはミャンマー人はもちろん、ASEAN出身のミャンマー在住者や中国人など他のアジア系も含まれます。
私もミャンマー在住の中国人やインドネシア人が、自分より英語が遥かに上手いので気まずい思いをしたことが何度もあります。

ミャンマーで日本語圏の市場だけを対象にしても、事業として成立させるのが難しいことは、日本人にしかアピールしないタイプの日本食レストランの撤退が近年相次いでいることからも明らかです(又聞きです。私自身は、まったくと言っていいほど、ミャンマーの日本食レストランに行かないので)。
個人的には、ミャンマーのマス・マーケットを緻密に調査・研究して、ローカルに最適化したビジネスか、ミャンマー人の英語話者を含むミャンマー在住の外国人全体を対象にしたビジネスでないと、ミャンマーでは事業として立ち行かないのではないかと考えています(ODA等の日本の公的資金を対象にしたビジネスは除きます。厳密な意味で、ミャンマーの市場を対象とした事業をしているとは言えないので)。
前者の場合、一人当たりGDPを反映して、一人当たりの購買単価の低い、薄利多売型のビジネスモデルになるため、事業に一定以上の規模を求められます。ローカライズのためのノウハウや開発に必要となるリソースを勘案すると、リソースの豊富な大企業向けのビジネスと言えます。ミャンマーに進出を果たしている、外資系飲料メーカー、外資系食品メーカー、携帯通信キャリアなどが、このカテゴリーに入るでしょう。コカコーラとか、P&Gとか、日系企業だとキリンビバレッジとか、エースコックなどがこれに当て嵌まります。
後者の場合、市場規模は小さいですが、ターゲットが教育・生活・所得レベルが一定以上の層となるため、先進国のセンスやトレンドをそのまま導入できるメリットがあります。私が会ったことがあるASEAN出身のミャンマー在住者は、欧米の大卒で国際機関などに勤務しており、私なんかよりも遥かに高学歴で富裕層に属します。工場等の建設を伴わなず、参入に比較的費用のかからない飲食店経営もこちらに含まれます。

日本人在住者と観光客の多いタイとは違い、今のミャンマーでは日本語圏だけでビジネスが成立するのは、せいぜい一業種につき一社(もしくは一人)でしょう。おそらく、その席取りゲームは数年前に終わっています。
後続の参入者は、市場の大きなミャンマー・ローカルのマス・マーケット(大企業向け)か、ミャンマー人の英語話者も含むミャンマー在住の外国人全体(中小企業、個人向け)のどちらをターゲットとするかの選択を迫られます。

私はごく限られたミャンマー在住の日本人としか付き合いがないので、確実なことは言えませんが、ミャンマーの日本語圏ビジネスの席取りゲームは終わっている(たぶん)にも関わらず、相変わらず日本語圏だけでビジネスを試みる後続の日本人が多いような気がします。
資本やリソースの不足している中小企業や個人は、薄利多売型のビジネスモデルが要求されるローカル市場を対象とするのは難しいので、ミャンマー在住の外国人全体を対象とせざる得ないし(これもたぶん)、そのためにはマーケットに対して、英語で市場に対して情報発信・コミュニケーションをしていく必要があります。

私も読み書きはある程度できますが、英会話はさっぱりなので大変な目に遭うことがよくありますが、それは自分の能力や今までの努力の不足が原因だと考えて割り切ってます。
英会話がアウアウだと、知的レベルがもの凄く低く見えるらしく、欧米人からもアジア人からも、残念な人扱いされることもよくありますが、それも仕方ありません。実際、ASEAN出身の英語話者だと、欧米の有名校卒の超高学歴(MITとか)だったりすることもあります。

大きなお世話かもしれませんが、ミャンマーという海外にいるにも関わらず日本語圏に閉じこもった人が多いような気がしたので、敢えて書き連ねました。もちろん古くからミャンマーにいる日本人の方々は、新規参入者には難しいローカルのマーケットや人びととしっかり向き合っている人たちも多いでしょう。
日本語圏の外に出ると、英語力の足りなさから、恥もかくし、軽んじられて不愉快な思いをする時もありますが、日本の会社で働いていた時には体験できなかった充実感もあります。日本の組織で起こりがちな同調圧力に屈する(一般的な言い方では、空気読む)必要がないため、精神的に自由であることや、異なる価値観と触れて海外でビジネスをしている実感を味わえるなど、得る物も決して少なくありません。ミャンマーで日本語圏の外で活動する日本人がもっと増えれば、在ミャンマー外国人のコミュニティも多様性を増して、より豊かなものになるでしょう。
もちろん、どちらを選択するかは、個人の嗜好や考え方次第なんでしょうけど。

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2017年9月16日土曜日

ヤンゴンで読書会を計画しています

ミャンマーの本好きの有志を募って読書会を計画しています。
第一回は、来月10月の第二週の10月14日(土)か10月15日(日)の午後を予定しています。開催地は未定ですが、たぶんサンチャウンのカフェになります。
読書会は、以下の二つのルールを守っていただけたら、どなたでも参加できます。

・課題図書を読了していること
 読書会なので、課題の本を読み終わっていることは必須です。

・原則として、他の人の発言に対して、批判的な態度を取らないこと
 どのような感想であれ、意見であれ、公共良俗に反したり、故意に他人を傷つけるものでない限り、ひとつの見解として尊重しましょう。

第一回目の課題図書は、ラッタウット ラープチャルーンサップの短編集『観光』です。参加予定者のNさんと話し合って決めました。5、6年前に日本のいろんな雑誌の書評で大プッシュされて話題になった本です。 


これから読む人のために、本書の背景を少し説明します。
著者はタイ系アメリカ人で、欧米と東南アジアの二つの世界を経験、理解している、著者ならではの観察や洞察が、それぞれの短編にちりばめられています。
この短編集の登場人物たちは、タイ社会・コミュニティに属している生粋のタイ人、その外部にいる観光客や外国人、そしてタイと欧米の二つの世界の間で引き裂かれているタイ人と欧米人のハーフや欧米人相手のビジネスを営むタイ人たちです。
南国を楽園とするステレオタイプのイメージは、その外部に住む先進国の人間たちの幻想・憧憬によって形成されてきました。
外部からの幻想であれ、現地の実情であれ、こうした南国や第三世界を、その地を訪れた外国人の視点から語った物語や研究は、大航海時代から数多くありました。一方、その社会・コミュニティ内部が、外側の人間から向けられた幻想によって形成された楽園的なイメージをどのように受けとめているかについての報告は稀少です。
先進国の人びとから向けられた上から目線の幻想を、「高貴なる野蛮人」の神話、「オリエンタリズム」とする批判はありましたが、いずれも思想・哲学的なマターであったため、南国や第三世界に住む市井の人びととは縁遠い、高踏的なフィールドで起こった議論だったと言えます。
 ところが2000年代に入ってから世界文学の多様化・多国籍化が進む中で、それまで「周縁」、「第三世界」と見なされていた国々から、英語で作品を発表する作家の登場が目立ってきたことで風向きが変わります。こうした作品の中から、我々はそのコミュニティの出身者、あるいは現地生活者と近い場所にいる表現者による、その土地に住む人びとの現実的な実感や現状を知ることができるようになりました。ちょうど1970年代にブルース・スプリングスティーンが登場して、それまで語り部を持たなかったアメリカの労働者階級の生活実感や人生観を、その外側にいる人たちが知ることができるようになったように。
この短編集も、こうした世界文学の多様化・多国籍化の文脈に沿う作品と言えるでしょう。

読書会は、できれば定期的に月一回くらいのペースで開催していきたいと考えています。
課題図書の主要なテーマは、世界文学とミャンマー及び東南アジア関連の文化・歴史・宗教とします。
世界文学の定義ですが、世界中に読者がいる作品であること、作家の出自国のみならず多くの世界の文学者・読者に影響を与えた、あるいは現在進行形の現代文学の変容や進化の過程の中で生まれた作品とします。
ミャンマーで開催する読書会なので、ミャンマーと東南アジアの文化・歴史・宗教(主に仏教)に関する本も対象にします。
自己啓発本やハウツー本は対象外です。課題図書は、多種多様な読み方が開かれている、多義的で深みのある書籍から選びます。

今のところ、以下の本をリストに上げていますが、今後、参加者の方々の意見を聞きながら、課題図書を決めていきます。

世界文学
    

ミャンマー及び東南アジア関連
   

計画が具体化したら、改めて情報をアップします。
読書会への参加を希望される方は、本ブログの プロフィール > お問い合わせ > メールをクリックして、ご連絡ください。

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2017年9月15日金曜日

【Princess Tailoring Shop】日本語通訳付きロンジー及び注文服製作サービス【9月17日】

9月17日(日)10:00~12:30の間、日本のNGO AAR Japanさんが運営するテイラー・ショップのPrincess Tailoring Shopに、日本語通訳ボランティアのLさんが入ります。


ロンジーやワンピースなどのオーダーメイドの服をミャンマーで作ってみたいけれど、言葉の壁でためらっていた方は、これを機会に作ってみてはいかがでしょう?


Princess Tailoring Shop 【No.8 Ground Floor, Nyaung Tone Road, Sanchaung Township, Yangon (レストラン喜洋洋の二軒左隣)】


これとは別件ですが、同じサンチャウン地区にある9月16日(土)10:30~12:30にKOKO Candles - Home Storeアロマ・キャンドル作りのワークショップが開催されます。原則、予約制なのですが、現在二席空きがあるようです。どんな雰囲気か覗いてみるのも面白いかもしれません。定期的に開催するようなので、楽しそうだったら次回参加するかどうかの参考にもなります。

KOKO Candles - Home Store:
No.5 Ground Floor, Kyaung Kone Street, Sanchaung Township, Yangon



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2017年9月11日月曜日

ミャンマーの奥の細道〜ミャンマーの翻訳出版事情について考えた

定期的にミャンマーの本屋を回って、どんな本が翻訳されているのかをチェックしています。
最近、新たに村上春樹の『1973年のピンボール』と『めくらやなぎと眠る女』のミャンマー語訳が出ているのを見つけました。長編に関しては、ほとんどの村上作品がミャンマー語に訳されて出版されています。
ただし、短編集に関しては『象の消滅』と『めくらやなぎと眠る女』しか見たことがありません。この二冊はアメリカ市場向けに編まれたアンソロジーなので、英語版からの重訳だと思われます。
また、『1973年のピンボール』が日本で出版されたのは1980年ですが、正式な英訳が出たのが比較的最近なので、最近出版されたミャンマー語訳もおそらく英語版からの重訳でしょう。
ミャンマーでも英語話者の方が、日本語話者よりも圧倒的に多いので、日本語の元本からの翻訳よりも、英語版からの重訳が多くなるのは当然かもしれません。そして英語圏でもポピュラーな作家である村上春樹の作品が、ミャンマーでも数多く翻訳されているのも商業的な理由からも必然でしょう。ただし、版権・著作権等はクリアしてないと思いますが。

ミャンマー語版『1973年のピンボール』

ミャンマー語版『めくらやなぎと眠る女』


そして最近、オーストラリアの作家 リチャード・フラナガンの"The Narrow Road to the Deep North"のミャンマー語訳を本屋で見つけて、こんな本も翻訳されるようになったんだ、と感慨深いものがありました。2014年にマン・ブッカー賞を受賞した、英語圏で評価の高い長編小説です。リチャード・フラナガンの小説は、長編2冊が日本語に翻訳されていますが、本書は今のところ未訳です(たぶん)。
2年前に香港の空港でトランジットした際に、空港の本屋でこの本を買いました。英文で450ページ近くある長編なので、私の英語力ではなかなか歯が立たずに、少しづつしか読み進めなかったのですが、ミャンマー語訳も出たこともあり、これを期に一気に読み通しました。
私の拙い英語力でどこまで理解できているかどうか不明ですが、以下に本書を紹介します。

ミャンマー語版"The Narrow Road to the Deep North"


松尾芭蕉の『奥の細道』の英語訳のタイトルは、The Narrow Road to the Deep Northだそうで、この長編小説のタイトルはそこから付けられています。
主人公のドリゴ・エヴァンズはオーストラリア人医師で、軍医として参加した第二次大戦時に、戦争捕虜としてタイービルマ鉄道(泰緬鉄道)建設現場に送られた過去があります。
タスマニアの田舎でただ一人の大学進学者としてメルボルンに出てきたこと、物資も食料もない中で、鉄道建設に従事させられたオーストラリア兵が次々と死んで行くのを止めることことができなかった無力感と贖罪意識、捕虜収容所での無私のオーストラリア兵たちへの貢献から戦後、国民的英雄に祭り上げられたことへの居心地の悪さなどが、戦前・戦中・戦後の時系列をランダムに前後しながら語られます。作品中大きな主題をなしているのが、戦前に体験した激しい恋愛が、戦争によって切り裂かれたエピソードです。
泰緬鉄道建設キャンプでの日本兵と在日韓国人兵からのオーストラリア兵への虐待も克明に描かれています。満足な道具も食料もないまま、強制労働に従事させられ、飢餓やコレラで衰弱して次々と命を落としていく捕虜や、体調不良を理由に作業に従事しなかった捕虜が一日中殴打された末に死に至る描写などは、読んでいて辛いものがありました。
今のいい方で言えば、究極のブラック企業的な環境だと言えます。
企業なら辞めれば済みますが、このケースだとサボったり逃げたりすると、殺される可能性が高いので(ほぼ殺される)、逃げ場がありません。
日本の組織にありがちな、いつの間にか手段が目的化する、戦略の欠陥を現場の努力と犠牲(戦術)で補わせるという問題は、泰緬鉄道建設キャンプで起こっていたと考えてよいでしょう。
インドービルマの国境で実施された、インパール作戦の大日本帝国陸軍の従軍経験者も最大の敵は、日本軍であったと語っていたくらいですから。
この作戦では、兵站・補給を度外視して、食料の入手が困難なジャングルを縦断するという戦略自体に欠陥があったにも関わらず、現地調達という命令のもとに兵士が前線に送られ、大多数の死者が敵軍との戦闘ではなく、餓死と病死により命を落としたと伝えられています。

陰惨な暴力や、悲惨な死が描かれているものの、作品に起こった出来事を告発するトーンはなく、淡々と物語は語られます。虐待する側の日本の軍人も悪逆非道な人間だからという理由ではなく、大本営からのプレッシャー、そして皇軍の威光を示すためにも鉄道を予定内に完成させる必要に迫られているため、人命は二の次とせざるを得ない事情が説明されています。

以下に少しばかり日本語に翻訳します。邦訳されていない小説なので、日本語になるのは最初かもしれません。
時刻は真夜中に近かった。彼は目の前に整列した700人に向かって、これから100マイル先のサイアムのジャングルを行軍して別のキャンプに移動する100人を選ぶのが自分に課せられた仕事だと説明した。選抜者は朝の行軍の後、すぐに出発することになる。
男たちは何度も何度も点呼された。何度かは帳簿の数字と合わなかった。何人かの男がよろめいて、列から外れたため、さらに事態は混乱した。軍医は誰を送るべきか、留めるべきか、そして留める理由をどう言うべきかを考えた。福原との間に激しい応酬があった。彼はこの遅い時間にも関わらず、清潔な軍服を着ていた。そして何人かのオーストラリア人兵が張り倒された後に、警備兵による点呼が再開された。
中村少佐は福原と共に、一時間早く彼の所にやって来て、スリー・パゴダ付近のキャンプまで行軍する100人を選抜するように命じた。
もうこれ以上、誰にもそんな要求は出せません。ドリゴ・エヴァンズは抗議した。そんな行軍に耐えられる捕虜は、このキャンプにはいません。
中村少佐は、100人を選抜すべきであると譲らなかった。
あなた方が捕虜の待遇を変えない限り、全員が死ぬことになるでしょう。
中村少佐は、オーストラリア人の大佐がそうしないなら、自分が選ぶとほのめかした。
全員が死んでしまいます、ドリゴ・エヴァンズは言った。
再度、福原中尉が通訳した。中村少佐はこう言っておれられる。
それは結構なことだ。それで日本兵のための米が節約できる。(P435)
ちなみにこの中村少佐は、終戦直後には戦犯指定されて、偽名を使って生活し、ポン引きを殺して米兵の持っていたドルを奪うところまで一時は零落します。
かろうじて生き残ったオーストラリア人もトラウマから、いつも戦友とつるんでアルコール漬けになる者もいます。
ある意味、誰もがあまねく平等に戦争によって人生を狂わされ、心に傷を負っています。その中には、徴兵され戦地に送られた者だけではなく、その家族や恋人まで含まれています。勝者も敗者もいない、英雄も悪漢もいない、そこにあるのは無作為に降りかかる暴力と死だけという戦争観は、クリント・イーストウッド監督の戦争映画にも通じるものあがあります。


タイトルが芭蕉の代表作から取られているのは、主人公のドリゴ・エヴァンズと副主人公の中村少佐が、俳句の愛好者であることが理由だと思われます。

作中では、小林一茶の俳句の英訳が引用されています。
A world of dew and within every dewdrop a world of struggle
露の世の 露の中にて 喧嘩かな
残念ながら「露の世の喧嘩」は、今も世界各地で起こっています。
マーヴィン・ゲイが "What's going on" と歌い、スライ・ストーンが "There's a riot going on" と無音の曲で抗議したように。

 

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2017年8月27日日曜日

ミャンマー在住者が8月30日、31日にミャンマー・プラザに行くべき理由

ここ2、3年の間、ヤンゴンでは数多くの大規模ショッピングモールの開業が相次いでます。
だからといって、ショッピングの楽しみや買える物の選択肢が増えたという実感は、まったく湧きません。
主な理由は、そうしたモールに入っているショップに、ミャンマーでしか買えない物、ミャンマーの地域性を反映した魅力的な商品がほとんどないからです。
モールのテナントとして目につくのが、サムソンやファーウェイなどのスマートフォン・メーカー、アディダスやコンバースのようなグローバル・スポーツブランド、高級な物ではロレックスやエンポリオ・アルマーニなど、いずれもミャンマーで買う必然性を感じない物ばかりです。むしろ、商品の品揃えと選択肢が多い他の国で買った方が良いものが大多数です。特にミャンマーだから安いというわけでもありませんし。

現在、ビザの滞在期限が切れたため、タイのバンコクへ一時出国していますが、ここに来ると、欲しい物が売っていないためミャンマーでは封印されていた物欲が復活して困っています。現地で企画・生産された、魅力的な商品がたくさんあるからです。

観光客がよく訪れるヤンゴンのアウンサン・マーケットとバンコクのチャトゥチャック・ウィークエンド・マーケットを比較すると、その違いは明らかです。
アウンサンマーケットでは、概ねショップの商品構成が似たり寄ったりで、店毎のセンスやテイストの違いがほとんどありません。
 一方、チャトゥチャック・ウィークエンド・マーケットでは、多くのショップがオーナーが企画したオリジナル商品が販売されており、差別化やブランディングの意思が読み取れます。

チャトゥチャック・ウィークエンド・マーケットの写真
店毎に企画・製造した商品を販売しています
狭い店内で制約のある中、商品を魅力的に見せるようディスプレイを工夫しているショップも珍しくありません







バンコクでは、チャトゥチャック・ウィークエンド・マーケットで評価を高めて、ターミナル21などのメジャーなショッピングモールへ店を構えるというブランドの成長コースも、ある程度確立されているようです。

このようなドメスティック・ブランドのプレイヤーの質と量、そして成長するためのステージも含めて、隣国に比べて相当に貧弱なミャンマーですが、2年ほど前から30代のミャンマー人を中心に、ミャンマーでオリジナル・ブランドを立ち上げるケースが目に付くようになりました。彼ら・彼女の多くは、近年、海外の学校や就職先から帰国した人たちです。

そして、8月30日(水)、8月31日(木)10:00~21:00に、こうした独立系のミャンマー・ブランドの展示会がミャンマー・ブラザ 1階で催されます。
イベント名は、LET'S GROW TOGETHER!です。

参加ブランドは以下の通りです。
- The Workshop Studio
- Yangon Calling
- AZURE Designer's Couture
- Lady B Myanmar
- Mondemyanmar
- KOKO Soy Candles
- The Skin District 9
- Retroretro Plants
- Wolf Kitchen Myanmar 

- Sin Phyu Lay Myanmar cookies
- Mya Nant Thar Thanakha Powder


このイベントに行けば、今のミャンマーにどんなオリジナル・ローカル・ブランドがあるのか一覧できます。
そしてイベントのタイトル通り、彼らの成長を後押しすることは、ミャンマーを消費者にとって魅力的な選択肢の多い国、他国では経験できない消費体験ができる住んで楽しい場所とすることへも繋がります。
お時間のある方は、ぜひ8月30日(水)、8月31日(木)10:00~21:00にミャンマー・プラザへお越しください。

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2017年8月25日金曜日

いまのミャンマーで、かっこいいことはなんてかっこ悪いのだろう

この投稿のタイトルは早川義夫のソロアルバムから取りました。


先日、ミニゴン地区のシティマートでOwayのプロモーション・ビデオを見かけました。
Owayは、ミャンマーのベンチャー企業が提供するUberと類似したサービスです。
創業者はスタンフォード大学卒業した後、シリコンバレーで働いてから起業したミャンマー人で、勤務先がGoogleに買収されたことで、Googleで働いた経験もあります。

それはともかく、シティマートで流れていたOwayのプロモーション・ビデオのひとつがあまりにも時代錯誤だったのでびっくりしました。 制作者もしくは出演者はゴージャス感を演出するつもり作ったのでしょうが、世界の潮流から百万光年くらいズレています。
今は、エコロジカルとか、サスティナブルとか、ソーシャルとか、エシカルが、同時代で活躍する人たちが共有する課題、いいかえれば時代の気分です。GDPの規模や伸び率で比較する単なる経済成長上の追求・指標から、エネルギーや資源の持続可能性などの課題の解決策を内包した、新たな成熟した社会・経済システムの未来像が、様々な文化圏の人びとから異なるアプローチで提案されています。
こうした価値観は、ある程度先の読める人たちの間では、21世紀に入って以来、当然のように思潮の中心となっていますが、このプロモーション・ビデオは、そのようなポイントを見事に外しています。
出演者は米国からの帰国子女のミャンマー人ですが、2007年のリーマンショック以降、ラグジュアリー的な演出よりも、地域に根ざした独自性や虚飾を排した実質さのほうがクールという、米国のポートランドとかブルックリンのようなサブカルチャー先進地域が発信源になり、今や主流となりつつある価値観とは、まったく無縁で、しかも理解していないように見えます。
2010年代から、清澄白河とか蔵前とかの東京の東側に、サードウェーブ・カフェとか、外国人がたむろするバーとか、独立系のアパレル・ショップが出来はじめたのも、こうした地域性や実質性を重視した世界的なムーブメントに連なる現象です。

とりあえず、以下にそのプロモーション・ビデオのリンクを貼っておきます。


朝の目覚めは、ホテルのルーフトップでくつろぐ
ゴージャスなワ・タ・シ

この人、顔が短いのでティアドロップ型のサングラスがまったく似合いません

とにかく、カメラを意識したキメキメのショットが多くて、微妙な気分になります

今夜はパーティ!とびきりのワインを用意しなくちゃ

いつもの仲間と女子会

かんぱぁーい!

打ち方のフォーム見てると、たぶんちゃんとビリヤードやったことないと思う

どう私たちイケてるでしょう?的なショットがこれでもかと続きます
正直言って、イケてませ(ry

いやぁ、楽しかったわー

タクシーを携帯で懸命に呼んでいるイケメンの白人

あなたこれ知らないの?

じゃあお先にー♡

日本もバブルが弾ける90年代前半までこうしたノリはあったので、偉そうなことは言えませんが、もはや時代が変わっています。これを見ると、未だにこれがイケてるつもりなのかと、制作者側のセンスを疑ってしまいます。

何かの記事で、今の30代以下の世代ではフェラーリ乗ってるよりも、ソーシャル・ビジネス立ち上げて、軌道に乗せた方がモテるというのを読んだ覚えがあります。別にモテが目的でやることでもないでしょうが、やっぱりモテた方がプレイヤーのタイプと裾野が広がって良いなとは思います。
旅先でCNNとか見てると、白人のイケメンとか、綺麗な女の子が途上国でソーシャル・ビジネスはじめたり、NGOで働いている映像をよく見るようになりました。あれは今の時代のリア充像のひとつの典型なのでしょう。

ミャンマーには、格差の是正とか、実質的な産業の振興・育成とか、機会の平等とか、雇用の創出とか、ローカルが取り組むべき課題が山積みなので、こうした空々しい(そしてセンスが中途半端で、時代遅れなためかえって貧乏臭い)ゴージャスさよりも、ソーシャル・ビジネスやったり、NGOで活動して社会問題を解決する方がかっこいいという価値観がミャンマーにも早く根付いて欲しいものです。とくに彼女たちのように、親がお金を持っている層の子女には、この国が抱える問題を解決する義務があります。

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2017年8月23日水曜日

今週末はサンチャウンに行くべき二つの理由

サンチャウンに住んで約5年になります。出不精なので、普段はほとんどサンチャウンから出ることなく生活しています。
もともとヤンゴンの中産階級の居住区だったサンチャウンですが、ダウンタウン・エリアの賃料の高騰のため、このエリアに3年程前から外国人の居住者が増えてきています。
外国人の居住者の増加に伴い、外国人のテイストに合うカフェやバーも増えつつあります。
飲食店以外のショップに関しては、まだ洗練されたお店は少ないですが、これから増えるのではないかと予想しています。
近所のビアステーションWin Starで飲んでいても、顔見知りと挨拶してるうちに欧米人と同席することがここ1、2年でずいぶんと増えました。




今のところ外国人客もミャンマー居住者が中心ですが、タイのカオサンのように観光客も集う場所になると、気の利いた土産物屋がもっとできるでしょう。
これからホテルやゲストハウスも増えることが予想されます。実際、Win Starの近くにBike21 Hostelというレンタルバイクを置いたホステルが最近開業しています。


ヤンゴンで最も風俗の変化と文化的洗練の進行が体験できるエリアであるサンチャウンは、ミャンマーで今何が起きているかを定点観測するのにうってつけの場所です。

そんなわけで今週末にサンチャウンを訪れる人たち向けの情報を投稿します。

まずは、日本のNGO AAR Japanさんが運営するドレスハウス Princess Tailoring Shopを紹介します。


Princess Tailoring Shop 【No.8 Ground Floor, Nyaung Tone Road, Sanchaung Township, Yangon (レストラン喜洋洋の二軒左隣)】


8月27日(日)10:00~12:30の時間帯に日本語通訳ボランティアさんが入るため、日本語でお気軽にロンジーや注文服が作れます。


お気に入りの布を持参してお越しください。ショップにも数は多くありませんが、ロンジー生地を販売しています。

次に最近オープンしたKOKO Home Storeです。ミャンマーでアロマキャンドルを製造・販売していたKOKO Soy Candlesのオーナーがサンチャウンに店舗をオープンしました。
Princess Tailoring Shopから徒歩で5分くらいの場所なので、ここでオーダーメイドした後に訪れるのに便利な場所です。






キャンドル以外にも雑貨やインテリア・グッズも置いています。
これから扱う商品も増やしていく予定なので、定期的にチェックすることをお勧めします。アロマキャンドルの製作教室も近日中にはじめる予定です。


No 5 G Floor, Kyaung Kone Street Kyaung Kone Street, Sanchaung Township, Yangon
Phone: 099 6088 7376 (Burmese, English)
 

手前味噌ですが、YANGON CALLINGの商品も販売しています。シャン州産の生地を使ったドレスは、サイズや生地のカラーを選んでここで注文できます。





レディメイドの新作もこのショップに置いていますので、よろしればご覧ください。

ロンジー生地を使用したワンピース



上記2点ともSサイズ:40,000MMK

同デザイン・別布のモデル着用写真

メンズシャツの新作も入荷しました。高級なメンズ用ロンジー生地を使用しています。製造原価が高くなるので、このレベルの生地を使用したミャンマーの既製服は、おそらくないはずです。


Sサイズ:40,000MMK

Lサイズ:40,000MMK

同デザイン・別布のモデル着用写真

そんな訳で、今週末はサンチャウンで時間を過ごされてはいかがでしょう。

サンチャウンについての以前の投稿、【厳選】ヤンゴンのカオサン、サンチャウンで行くべき五つのスポットもよろしければご参考にしてください。

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