2014年7月14日月曜日

カチン料理屋に外国人客が集まる理由

行きつけだった近所のカチン料理屋が、Sanchaung地区から移転してしまいました。数少ない外食の選択肢が減ってしまい苦慮していましたが、同じSanchaung地区に別のカチン料理屋を見つけたので、今はそこへ通っています。

さて、前に行きつけだったお店もそうでしたが、いま足繁しく通っているお店でも、外国人客を良く見かけます。行けばたいてい一組以上の外国人客がいます。近所にミャンマー人向けの英会話教室があるのを勘案しても、ローカルレストランにしては、異例の外国人比率の高さです。彼ら彼女らが、ここへ来る理由は、おそらく私が通っているのと同じかと思われます。

以下に、その理由を列記します。

(1)英語のメニューがある
観光客を対象としていないローカル料理屋には、大抵英語のメニューがありません。ミャンマー語が読める外国人は極めて少ないため、当然、外国人の足は遠のきます。ところが、カチン料理屋にはなぜか英語のメニューが用意されています。しかもオーナーになると英語話者の場合も珍しくありません。これはカチン族は、キリスト教徒がマジョリティであることも関係しているのかもしれません。

(2)ローカルのミャンマー料理屋と比較して、油分が控えめ
日本人がミャンマー料理に躓くのは、その極端にオイリーなところに依る所が多いです。さらに、味付けがすべて同じなので、常に同じ味なのに飽きて、滞在が長期になると食べる気がしなくなるという側面もあります。
カチン料理は、ミャンマー人が食する一般的なビルマ料理と比較すれば、油分が控えめです。といっても日本食に比べれば、相当にオイリーなわけですが、現地で可能となる選択肢の中では、油分が他と比べて控えめというのは、大きな魅力です。

(3)価格帯がローカル料理屋の範囲にある
では、日本食のレストランに行けばいいじゃないかという意見も出て来るかもしれません。日本食レストランは、ここ1、2年で急激に数を増やし、ヤンゴンだけで約200店になったと言われています。しかしながら、日系資本の経営による日本食レストランの多くは、日本で食べるのと価格がそれほど変わりません。翻って、ミャンマー現地採用の日本人の日系企業での給与相場は、10~15万円がヴォリュームゾーンと言われています。現地の所得水準を考えると、多くの今の日本食レストランの値付けは、大部分のミャンマー人のみならず、ミャンマーに根を下ろす日本人にとっても響かないものになっています。
本国と同じ値段を気にせずに、レストランに通える客層は、大使館等の政府機関関係者や、ミャンマーへ転勤で来ている本社採用の駐在員の人たちです。駐在員の家族を含めたミャンマー在住の推定2,000人の邦人の一割が、本国と同等の(もしくは在外手当がつくため、本国以上の)可処分所得があると想定すると、本国と同じ価格帯のレストランの対象となる潜在顧客は、ミャンマー駐在員とその家族を含めた約200名と、日本からの出張者しかいないことになります。
プレスリリースで「現地の富裕層も対象に」というフレーズを頻繁に見かけますが、現地の富裕層でも、本格的な日本料理は口に合いません。ミャンマー料理の味付けと日本料理のそれは、あまりにも開きがあり過ぎて、海外で育った人物でもない限り、薄口の微妙な味わいはミャンマー人の嗜好に合いません。ただし、 和牛はミャンマーの富裕層の中でブランド化しているため、高級焼肉店はそこそこ人気があります。
そして上述しましたが、現地の所得水準に準じた、現地採用の日本人、現地のローカル企業に勤務する日本人、NPO・NGOに勤務する日本人の足は、本国と同じ価格帯のお店に頻繁には向きません。
ミャンマーに2年あまり住んで身に付いた、現地で妥当と感じる価格帯は、一皿が上限4,000チャット、客単価がアルコール抜きで5,000チャット未満、アルコール入れての客単価合計が7,000チャット程度です。

さて、カチン料理屋に話を戻します。
このお店の価格帯は、ローカルレストランの中では、やや高めというところでしょう。

ご飯類は2,000チャット(約200円)。ミャンマーの典型的なチャーハンに比べると、油分控えめです。


麺類は2,500チャット(約250円)。日本で言うと肉ソバ。カチン族は、ミャンマーでは珍しく、牛肉を常食としています。


ちなみにミャンマービールは、大瓶1,800チャット(約180円)です。

お店の情報は以下の通り。Sanchaung地区の消防署の近くです。

Jing Hpaw Myat
No.2(B), Kyun Taw Street, Sanchaung Township, Yangon
Tel: 01-524525, 01-503521

上に書いた値頃感に則しているのも、現地在住の外国人ーその多くは近所の英会話学校の講師ーが数多く訪れる大きな理由でしょう。ミャンマーでの英会話講師の給与水準については知りませんが、現地の授業料を勘案すれば、それほど高いとは思えません。この前は、店にワインを持ち込んで飲んでいる強者の外国人を見かけました。外国人が多いと書きましたが、他の日本人客は見たことがありません。Sangchaung地区の日本人の皆さんは、自炊派が多いのでしょうか。

現地のレストラン相場のご参考に、同じくSangchaung地区にある家鴨料理の人気レストランをご紹介します。


ここは家鴨の肉入りソバが、700チャット(約70円)。ローカルフード価格です。


調理は、屋外に張り出したテントの下でされています。


さすがに衛生面の不安があるためか、このお店では外国人を見たことがありません。ですが、いつもローカルのミャンマー人で賑わっています。ちなみにメニューは、ミャンマー語表記のみです。


これからミャンマーへレストランの出店を考えるなら、たとえ日本人でも、業態は日本食レストランにこだわる必要はないかと思われます。日本料理を提供するとなると、食材や調味料等の調達にどうしてもコストが嵩みます。加えて料理人の育成などにも時間とコストを要するため、ローカルレストランに競争力のある価格を提示することは難しいでしょう。
発想を変えて、現地で容易に調達できる食材で調理できるミャンマー料理を、外国人向けに提供することを検討しては如何でしょう?
外国人にターゲティングしているわけでもないカチン料理屋に、外国人が集まっていることからも、英語のメニューがあり、油分を控えた、リーズナブルなレストランに大きな潜在需要があることが読み取れます。年々、外国人のミャンマー在住者が増えてきているので、この需要は今後も右肩上がりでしょう。
外国人の嗜好にマッチした、ローカル価格のミャンマー料理屋、そんなお店が近所にあれば私も通います(笑)。さらに、インテリアを、東京とかロンドンにあるカフェぽい内装にして、アルコールも含めたドリンク類を充実すれば、観光客にも人気が出るのではないでしょうか。
最後の方は、ミャンマーで生活する者として、存在して欲しいお店の願望になってしまいました(笑)。   

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