2017年12月30日土曜日

ミャンマー初の屋内型ナイトマーケットUrban86の立ち上がり不振からミャンマーの市場特性を考えた

【追記】
本投稿について、JAPACLO店のオーナーよりメッセンジャーを通じて、「我々は、店頭に『ALL JAPAN BRAND』と記載してあるように、日本のファストファッションブランド品を取り扱います。 H&MやForever21の"不合格品"どころか、日本以外の欧米ファストファッションブランド品を扱うことはありません」との抗議を受けました。
JAPACLOの幟が、向かって右側にはみ出していたので、右側の店舗がJAPACLO店と誤認していました。右側は別経営の店舗のようですので訂正いたします。
幟の左側の店舗がJAPACLO店で、Forever21やAbercrombie&Fitchなどのアメリカのファースト・ファッションの商品が販売されていた右側の店舗とは無関係のようです。
(2018年1月4日記)

ミャンマー初の屋内型ナイトマーケットという触れ込みで開業した商業施設Urban86が、立ち上がりで苦戦しています。
12月23日にグランドオープンしましたが、初日のイベント開催日でのお客さんの入りは20%くらいで、ほぼミャンマー人のみの客層で、外国人はほとんど見かけませんでした。


施設内の建物は工事中の箇所も多く、テナント募集中のスペースが目立ちます。



施設は、飲食、物販、キッズ(エンターテイメント)の三つのテーマで構成されていますが、キッズコーナーは未だ工事中で、テナントもまったくと言っていい程入っていません。


飲食コーナーのテナントは、すべて埋まっているそうですが、開業イベントが終わった平日に訪れると営業中の店は七割くらいでした。お客さんが少ないので、営業を控えているようです。

フードコートは、ベトナム、台湾、中華、タイ等他国の料理店が目立ち、ミャンマー料理がテーマとなったお店は少ないです。

出店者の中で、数少ないミャンマー料理のカチン料理店


ミャンマーで飲食チェーンを展開しているO氏のお店



こちらは物販エリア。テナントの入りは2割くらいで、空きスペースが目立ちます。
日借りで、この場所のラックを借りることを検討してますが、現時点での集客力では、売上げは見込めません。外国人客、観光客がゼロですし。


物販エリアで唯一のミャンマーブランドのCiCi

ヤンゴン市内によくある雑多な商品構成の洋品店


ミャンマーでよく見る塩化ビニール製のテカテカしたバックを売っているお店

プラダの財布は、ミャンマー製ではないと思います。

物販エリアで一番売場が大きいのは、ジャパクロというお店です。
H&MやForever21の不合格品をディスカウントして売っています。
ちなみにユニクロの商品はありませんでした
上の記述を訂正します。JAPCLO店は左側の店舗で、右側にあるアメリカのファースト・ファッションを販売している店舗とは無関係とのことです。右側の店舗には看板が出ていなかったため、店舗名は不明です。



アディダスのTシャツを売っているお店。不良品かコピー商品のどちらかは不明です。

ざっと写真を見ていただいても、外国人や観光客が是非とも訪れたくなる場所ではないのがお分かりいただけたかと思います。

私も当初は、バンコクのウィークエンド・マーケットのような魅力的な商業施設がヤンゴンにもできるのかと期待していました。
参考のため、バンコクのウィークエンド・マーケット写真を以下に掲載します。

バンコクのウィークエンド・マーケット
それぞれ店毎のコンセプトを打ち出した、タイの独立系ローカルブランドや、新進ブランドが出店しています。



Myanmoreに掲載された運営者へのインタビューを読むと、様々な国の料理店と同時にミャンマーのローカルの料理店や、最新のファッションアイテムを販売する物販業者がテナントとして入居することを期待していたようです。
We aim to bring in various international food and authentic local foods in our F&B outlets. In retails, we aim to bring in latest and trendy fashion items through our vendors.
ところが、いざフタを開けてみると、そうしたタイプの業者がミャンマーには非常に少ないことに直面します。
フードコートに入ったテナントは、ベトナム、台湾、中華、タイ料理などで占められていて、ミャンマー料理店が少ない。ミャンマーに来たならここで食べなきゃ、と思わせるお店を見つけることは難しいです。
物販エリアになるとその傾向はさらに顕著です。
ミャンマーのローカル・ブランドはCiCi一店のみで、他の店で売られているのは、工場の検品ではねられたファースト・ファッションの不良品か、PRADAやAdidasなどのコピー商品です。
ミャンマーにも独立系デザイナーによるファッション・ブランドはいくつか存在しますが、大多数は資金力がないため、こうした場所へ出店することができません。その他、少数の経営的に成り立っているブランドは、客層をミャンマー人の富裕層のみにターゲティングしているため、こうした場所に出店することはありません。
こうした店舗・商品構成では、一般的に可処分所得が平均的なミャンマー人よりも多く、成熟した消費性向を持った観光客や外国人を引き付けることは難しいでしょう。

今回の結果は、ミャンマーの郷土料理を洗練させた食事や、ミャンマー独自の美意識を進化させたアパレル・雑貨などを提供するプレイヤーの市場での不在を改めて浮き彫りにすることになりました。
近年、ヤンゴンにも大型のショッピングモールが相次いで開業していますが、入居しているテナントで、ミャンマーのナショナル・ブランドはほとんど見かけません。たとえ資本がミャンマーでも、店舗で売っている商品は中国製や他のASEAN諸国で製造された商品です。とりわけ、どこのモールに行ってもあるのが、SAMSUNGやHUAWEIといった中国・韓国スマートフォン・メーカーの店舗で、どのモールに行っても商品構成が似たり寄ったりで、モール毎のテイストの違いやユニークさが存在しません。

ミャンマーのこうした市場プレイヤーの層の薄さや、他国と比較した際の競争力の低さは、これまで、そうしたプレイヤー自体を評価する、成熟した国内市場が存在しなかったことが大きな原因です。そのため、ミャンマー独自のオリジナリティを追求した、志や理念を持ったプレイヤーが国内市場で育ちませんでした。

ミャンマー政府は外貨の獲得手段として、観光客の増加に力を入れているようですが、やっていることがチグハグな感は否めません。
観光関連でよく話題に上るニュースに、国際空港の移転・新設があります。新空港の予定地は、ヤンゴン市内から現在の空港よりも遠くなりますが、どうも大きな空港を建設することのみに固執していて、空港から市内までのアクセス手段を考えている形跡がありません。今でさえ、空港から宿泊地への交通機関がタクシーしかなく、しかもしばしばボラれるので、外国人にすこぶる評判が悪いのにも関わらず。まず取り組みべき課題は、空港発のシャトルバスの運行でしょう。
そもそも普通の観光客が観光地に望むのは、グルメとショッピングです。重点的に、この二つの分野での充実を図って、観光客の誘致に努めるのが常道ではないでしょうか。
仏教マニアや、コアなミャンマー好きを除けば、パゴダを見たい外国人はそんなにいないはずです。隣国のタイと比較して、なぜここまで観光客数と観光収入で大差をつけられているのか、いい加減、客観的に分析すべきだと思います。少なくとも、空港の規模の違いが原因ではないはずです。

そうしたわけで、今回のUraban86でのスタートのつまずきから、ミャンマーの市場プレイヤーの層の薄さと、質の高いミャンマー・ブランドを評価する市場の不在を改めて実感させられることになりました。
来月1月から、週末だけハンガーを日借りして出店することを検討していましたが、現在の状況を見ると再考せざるを得ません。
こうした施設では、ミャンマー的なオリジナリティを備えた魅力のある飲食店やブランドが集積していることが必要条件ですが、上述したようにそうしたプレイヤーの層が薄いため、それを実現させることは相当に難しいでしょう。
現実的な解決方法として、運営者自体が、集客力と魅力のある業者を選別して、有利な条件で出店を要請することが考えられますが、他のテナントとの兼ね合いもあり、実行可能かどうかは不明です。また、運営者側に、魅力のある業者を見つける能力のある目利きがいるかどうかも分かりません。

まだ、私もこの施設の発展と成長を完全に見切ったわけではないので、しばらく今後の動向を見守るつもりです。いつか出店できるタイミングが訪れるのを期待しています。
出店のポイントは、成熟した消費性向を持つ外国人を施設に取り込んで集客できていることです。
私が企画・製造している商品は、一般的なミャンマー人には訴求しないので、ミャンマーにいる外国人を対象とせざるを得ません。ミャンマーの素材を使って、ミャンマーの障がい者支援しているNGOで製造していますと言っても、ミャンマー人の一般的な市場の消費性向には訴えないので。

ちなみに、フードコートに出店したO氏は、早々に撤退を決めたようです。ミャンマーで成功している人は、さすがに損切りの決断が早いなと思いました。

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2017年12月29日金曜日

ミャンマーの本屋で書籍文化について考えた

ひさびさに激しい下痢を患っています。
2ヶ月前は謎の足の激痛で歩けなくなり、1ヶ月前は激しい咳で眠れない夜が続きました。今年は年末近くになってから、連続していろんな症状がやって来て、なかなか大変です。

今までサンチャウンに籠りきりで、ダウンタウン方面には滅多に足を運ばなかったのですが、ダウンタウンに屋内型ナイトマーケットのUrban86ができて以来、出店の可能性を探るため、11月以降、視察にダウンタウンを訪れることが増えました。

せっかくなので、ダウンタウンに行った時は、周辺の本屋をチェックしています。
一昨日はPansodan通りにある大型書店、Bookworm Booksに行ってみました。



平日の昼間でしたが、そこそこの数のミャンマー人の本好きが店に集っていました。
平積みの本を眺めていて、目についてたのがこの本。パンクロック・カルチャーのガイドブックです。


開いてみると、ベルベット・アンダーグラウンド、パティ・スミス、テレヴィジョンなどのNY勢から、ピストルズ、クラッシュらのロンドン勢まで、ひととおりの関連バンドを網羅しています。
この手のロック・バンドをミャンマーでちゃんと紹介したのは、この本が初めてではないでしょうか?

ベルベット・アンダーグラウンド


パティ・スミス


テレヴィジョン


セックス・ピストルズ


クラッシュ


このタイプの音楽にハマっていた10代の頃を思い出して、なんだか懐かしかったです。
ミャンマーの本屋で見かける本も、以前に比べて多様性が出てきました。
最近、本屋で見つけた本を以下に紹介します。

チェゲバラの伝記本

不良老人詩人チャールズ・ブコフスキーの詩集

ガルシア・マルケスの『百年の孤独』

『百年の孤独』は、日本の翻訳界の大家、柴田元幸氏をして、外国文学のヘヴィー級チャンピオンと言わしめる、外国文学愛好家にとってマストの本ですが(ちなみにミドル級チャンピオンは、イタロ・カルヴィーノの『見えない都市』)、とうとうミャンマーにも上陸しました。
インテリ層のミャンマー人と話す時の話題の書になりそうです。


村上春樹のエッセイ集『村上ラヂオ』
ベストセラー・コーナーにあったので、結構売れているのでしょう。

これから日本人が、読書好きのミャンマー人とお友達になりたい時の必読書になるかもしれません。

ミャンマーで昔から安定の人気のシャーロック・ホームズ・シリーズ。ミャンマーでは珍しく全集化されています。


こちらは同じく、Pansodan通りの古本屋が集まるエリア。
30年前以上に出版された本が、陳列された本のほとんどを占めています。


『はだしのゲン』の英訳版の古本がありました


東南アジアの他国同様に、ディズニーやジブリ的な、分かりやすくて、ベタなものが好まれるミャンマーですが、少しづつではあるものの、書籍文化に多様性が増してきています。
サンチャウンには新たにブックカフェ The Plant House Cafeができたのも、本を巡る文化環境が変わりつつある証左かもしれません。
もともと、他の娯楽が少なかったため、読書人口が他の東南アジア諸国と比べて多いと言われていたミャンマーなので、ここからASEANを牽引する多様な出版文化や、文芸運動が興ることをこの国に住む一人として祈っています。

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2017年12月27日水曜日

ミャンマーらしいTシャツをデザインしてみた

ミャンマーには、旅行者や外国人が欲しくなる、気の利いたお土産や商品がなかなかないと言われていますが、土産物屋のTシャツに関してもそれは当て嵌まります。

街を歩いていると、現地企業がプロモーション用に制作したと思しきTシャツを建設労働者が着ていて、たまに、それがすごく恰好良かったりする時がありますが、商店で買える物で洗練されたミャンマー産のものはほとんどありません。
その国らしいテイストが入いりつつも、普段使いできるデザインのTシャツは、観光客にも需要が高いはずですが。

昔から、チェ・ゲバラやボブ・マーリー的に、アウン・サン将軍のグラフィックをプリントしたTシャツがあれば良いのにと思っていました。
ミャンマー人にとってアウン・サン将軍は、キューバ人にとってゲバラ、ジャマイカ人にとってマーリーに匹敵する建国の英雄ですから。
時々、Tシャツプリント店の店先などで、アウン・サン将軍がプリントされた見本は見かけますが、観光客向けの商品としては見たことがありません。



待っていても誰も作ってくれそうもないので、自分でプリント用のグラフィックをいくつか試しに作ってみました。




カラーバリエーション の豊富な無地のTシャツを売っているお店と、小ロットでTシャツのプリントを請負ってくれる業者をご存知の方がいればお知らせください。

条件が合えば商品化して、販売するかもしれません。

ミャンマーらしいテイストのクールなTシャツが
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2017年12月22日金曜日

ミャンマーで読むべき雑誌(2)〜POSH

前稿に引き続き、ミャンマーで読むべき雑誌についての記事です。
今回は、ファッション・グラビア誌の『POSH』を紹介します。

ファッション雑誌自体は、ミャンマーにも数多くありますが、他の雑誌に比べてこの雑誌は、アートディレクションもスタイリングも、ずば抜けて独創的で、アイディアがよく練られています。
他のファッション雑誌は、『VOGUE』等のグラビアをミャンマー流に安易に翻案して、たいていの場合、おかしなところに着地していますが、この『POSH』については、ミャンマー流の新たな美意識の提案をするという意思が、誌面から伝わってきます。
この雑誌は季刊で、年四回の発刊ですが、新刊が出るたびにヤンゴンの本屋を探し回っています。私が普段行くシティマート内の大手書店には置いていないので、ヤンゴン内の独立系の本屋を巡り歩いて、探すことになります。たぶん大手流通の配本系列に入っていないのだと推測します。ミャンマーの書籍の取次ぎや流通・配本のシステムについてがどうなっているのかは知りませんが。


他のミャンマーのファッション雑誌が『VOGUE』等のグラビアを表層的に模倣しているのと比較して、先行する表現手法をかなり研究して、ミャンマー流に昇華するための工夫が随所に伺えます。

アーヴィング・ペン風のモノクロ写真

元ネタはコレ? ファッション写真の大御所アーヴィング・ペンによる有名なショット


上のビッグショルダーのドレスは、今、パリコレで最も旬なデザイナー、デムナ・ヴァザリアの作品にインスパイアされたのか?

 ハイファッションと日常風景の共存という手法も、今ではモード雑誌で一般的ですが、ミャンマーで上手く使われることは珍しいです。







CGを利用したグラビア・ページも、ミャンマーらしいグラフィックのエフェクトが効果的です。




このページを制作したのは、おそらくイギリスでCGを学んだミャンマー人。

スタイリングのクレジットを見ると、タイ人らしき名前が多いので、おそらくタイ人や他の東南アジア人のスタッフが、クリエーションに関わっているのではないかと推測します。
近代化が先行するタイなどのASEAN諸国では、欧米のファッションが浸透して、日常的な場面で民族衣装を着る伝統が途絶えているため、民族衣装の文化が今なお残るミャンマーで、西欧とは異なる東南アジア的な美意識の確立や、伝統的な民族衣装を現代化するという志を持ったクリエイターが、他の東南アジア諸国からも参加しているのかもしれません。

ミャンマー的な色彩感覚を生かしながら、民族衣装をモダナイズすることを意図したと思われるページ。こうした方向性で、今後、ミャンマーのファッショが進化すると、外国人にとっても魅力的な国になると思います。







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