2020年2月19日水曜日

ミャンマー・ビジネスの難しさについて、近所のカフェ閉店から考えた

2018年10月にこのブログでご紹介した、サンチャウンのWorking House Cafeが今月に入って閉店しました。2018年の10月に、台湾人が開業したカフェでしたが、1年4か月あまりでミャンマー撤退となりました。 去年の後半からFacebook Pageを更新しなくなっていたので(さっき調べたらFacebook Pageは既に削除済)、そろそろ危ないのかなと思っていましたが、やはり経営が立ち行かず閉店となったようです。



現在、解体工事中のWorking House Cafe



開店当時のWorking House Cafe

食事もそこそこ美味しいし、インテリアを含めて雰囲気の良いカフェでした。rough cutなき後、落ち着いて読書やPC作業ができるサンチャウン唯一のカフェでしたが、そうした店を求める客層がこのエリアには少な過ぎたのが原因でしょう。近所なので、よく店の前を通りがかってましたが、外国人客がちらほらいる程度で、客入りは常に少ない印象でした。

サンチャウン初の洗練されたカフェのrough cutも、二年余りの営業で閉店しています。
 
現在、rough cutの店舗跡は売出し中の貼紙が貼られています



在りし日のrough cut

ただしrough cutの場合は、事前に閉店の告知をしていましたし、営業最終日には、盛大なお別れパーティーを開催していました。
その後も共同経営者だったイギリス人はミャンマーに残り、現在は別の場所でBodhi Navaという店名のカフェ兼ホステルを経営しています。こちらのカフェはそれなりに繫盛しているようです。

Working House Cafeの場合は、閉店の告知もなく、いつの間にか廃業していました。Facebook Pageを削除しているところを見ると、ミャンマーから完全撤退なのでしょう。
まあ、ミャンマーでどちらのケースが多いかというと、出処進退を明らかにせず、行方知らずになるケースの方が圧倒的に多いのですが。外国人がミャンマーで事業を興して、撤退する場合、当地では公正で透明性の高い商習慣が一般的でなく、民法などの法律も未整備なため、事業資金の回収もままならず、尾羽うち枯らして逃げるようにこの国を去る人が多いからです。お気の毒なことです。

私見では、個人や中小企業がミャンマーでBtoCのビジネスを興すなら、ターゲットとなるセグメントは二つしかありません(資金やリソースが潤沢なグローバル企業による、マスマーケットを対象とするビジネスではこの限りではありません)。

ひとつは、ミャンマー総人口およそ0.1%の割合の主に欧米で高等教育を受けて帰国した富裕層の子女に在ミャンマー外国人所得上位10%を加えた層です。
基本的にミャンマー人の中で、先進国的な嗜好やセンスを求めているのは、概ね0.1%の海外で高等教育を受けて帰国した富裕層子女のみです。
在ミャンマー外国人には、NGO勤務やインターン等の可処分所得が少ない層が含まれているため、所得上位10%程度のグローバル企業の社員及び各国大使館や国際機関勤務の外国人が客層となります。

もう一つはミャンマー人全体のおそらく20%程度の中産階級の層です。 こちらはミャンマーに進出した外資系企業の従業員や独立自営業者が中心となります。このセグメントには、先進国で生活した経験のある人々が少ないため、先進国的な嗜好やセンスはアピールしません。

さきのサンチャウンでのカフェの撤退例から説明します。
サンチャウンの居住者はミャンマー人の中産階級が中心です。外国人も多く住むエリアですが、この場所に住む外国人はNGO勤務やインターンが多くを占めます。
このため、先進国的な嗜好やセンスを打ち出したカフェをこのエリアに開店しても、周辺にターゲットとなる客層が少なすぎて経営的に成り立ちません。
外資系勤務や政府機関の外国人高所得層は、インヤ湖やゴールデンヴァレー周辺などの高級コンドミニアムに居住します。やはりこうした立地でないと、上にあげたようなカフェの経営は難しいです。
シンプルで洗練されたインテリア、油分が少ないヘルシーな料理などの先進国的な嗜好やセンスは、ミャンマーの中産階級にとっては魅力的に映りません。

ヤンゴンでローカル向けの居酒屋を経営している、私の知る限りミャンマー人中産階級向けのビジネスで成功している唯一の日本人O氏によれば、彼もミャンマーに来た当初はこの辺の事情が分からず、お店のメニューにグリーンカレーやパスタを入れていたと話していました。しかし、こうした一般的にカフェで供されるタイプの料理はまったく人気がなかった。その結果を受けて、それらの料理を廃し、タミンジョー(ミャンマー風チャーハン)などのオイリーなミャンマー料理中心のメニューに切り替えたところ、売り上げが飛躍的に向上したそうです。
彼のように現状分析して、方向転換を図れる人は稀で、ほとんどの場合、方向転換ができず、売上が低迷し、資金がショートして、人知れずミャンマーを去っていきます。

0.1%のミャンマー人富裕層と在ミャンマー外国人所得上位10%からなるセグメントとミャンマー人の中産階級の両者は、可処分所得もさることながら、嗜好やセンスがまったく異なります。このため、ミャンマーで事業を始める場合は、どちらのセグメントにターゲティングするかによって、どのような商品・サービスを提供するかが大きく変わってきます。

過去7、8年にわたり、ミャンマーでは、こうした市場特性をよく理解しないまま日系資本が日本食レストランを開業して、1~2年程度で撤退するケースが相次いでいます。
皮肉なことに、ヤンゴンで一番認知されいると思しき日本食レストランは、香港資本とイギリス人の共同経営により立ち上げられたGEKKOです。


ここのイギリス人統括マネージャーは、ミャンマー財閥のYOMA経営のレストランやParami Pizzaも管理しているので、現在はYOMAや他の資本も入っている可能性があります。


ジャズのインストアライブや他国からバーテンダーを招聘してカクテルパーティーを開くなど、イベントを頻繁に企画することにより、コミュニティ・スペースとして認知され、0.1%のミャンマー人富裕層と在ミャンマー外国人所得上位10%の層をリピーターとして繋ぎとめる努力を継続しています。
ミャンマーで客単価の高い日本食レストランの顧客となるのは、この層しかいないからです(ローカル資本の中産階級向けの低価格日本食レストランとは客層が違います)。

話が逸れますが、GEKKOの統括マネージャーのインタビューを『Myanmore magazine』で読んでいて、思わずのけぞりました。
We are also back at Wonderfruit in Thailand again this year, and this time we have the main stage which will be even crazier than ever. It is so great seeing so many people from the Yangon community in the fields, I can’t wait to do it all over again!
毎年12月にタイ郊外で開催されるアジア最大級の野外音楽フェスティバルWonderfruitに、二年連続で出店しているからです。
私はこのイベントに出店すれば、世界市場に打って出るチャンスが開けるのではと考え、2年前からメールやFacebookで主催者に何度か連絡していますが、今のところ完全に無視されています。
ミャンマーからのオファーだからしかたないのかと思っていましたが、彼らはちゃんと出店している。
この彼我の差はなんだ?
YOMAグループが彼らのバックにあるとすると東南アジアの富裕層華人グループの伝手で入り込めているのかもしれないし、Wonderfruitのオーガナイザーはおそらく世界各地でフェスを運営している野外音楽フェス専門のイベンター(たぶん欧米人のグループ)なので、そのイベンターと何らかのコネクションをこの飲食グループの誰かが持っているのかもしれない。
いずれにせよ、私は完全に蚊帳の外で、Wonderfruitに出店するための情報もコネクションも持ち合わせていません。
今年は参加したいけど、どうすればいいのか今のところ見当がつきません。
情報をお持ちの方はご一報ください。

Wonderfruit2019

話を戻します。
日本人経営の日本食レストランは、0.1%のミャンマー人富裕層と在ミャンマー外国人所得上位10%の層にしか受け入れられない価格設定と味付け(日本人の嗜好に合わせている場合がほとんど)にもかかわらず、情報発信も日本語のみの場合が多く、在ミャンマー日本人のみをターゲットとする傾向が強いため、その多くが数年で行き詰まり、撤退の憂き目にあっています。

BtoCの事業で、在ミャンマー日本人のみにターゲティングするのは、あまりに市場が小さすぎます。日本人在住者も他国同様に、一定水準の可処分所得がある割合は、本国から赴任した駐在員や政府機関勤務の職員等とその家族を合わせた約10%です。在ミャンマー日本人の総数が3000人程度なので、在ミャンマー日本人のみを客層とした場合約300人が全体の市場になります。日本食レストランが、ヤンゴンに二、三店舗だけならなんとかなりそうですが、なぜか多くの日本人は、海外でも自国民のみを相手にしたビジネスをやりたがるため、小さな市場に多数の店舗が群がるレッドオーシャンと化しています。

最近シンガポール資本の日本食レストランSUSHI TEIが二店舗目をヤンゴンに出店しましたが、経営層に日本人のいないGEKKOやSUSHI TEIが比較的堅調なのは、日本人の経営する日本食レストランが、ミャンマー在住日本人以外にマーケティングをしないため、 日本食のカテゴリー内では、0.1%のミャンマー人富裕層と在ミャンマー外国人所得上位10%の層を巡って競争する必要がないからではないでしょうか。この場合、彼らの競合は、ホテル併設のレストランや他の飲食店グループ経営によるフレンチやイタリアン・レストランになります。

では、(私を含む)英語が苦手な日本人には、0.1%のミャンマー人富裕層と在ミャンマー外国人所得上位10%の層ではない、ミャンマー人中産階級にターゲティングした方が得策かと言えば、そうとはとても言い切れない。
2012年まで、約50年間にわたって鎖国していたミャンマーは、富裕層を除いて、海外の文物に触れる機会がほとんどなかったため独特で、 他国の人間にはその嗜好が非常に理解しにくい。そのうえ、このマーケットではミャンマー人経営のローカル企業が競合となるため、厳しい価格競争を強いられます。
今回は近所のカフェ閉店から話を起こしているので、料理に例をとれば、ミャンマー人中産階級をターゲットとする場合は、他国の人間からするとオイリー過ぎて美味しいとは感じられない料理を出さないとこの市場で通用しない。それを本気で美味しいと思って出しているローカル企業とは違い、自らの味覚とミャンマー人中産階級との嗜好との乖離を埋める試行錯誤の中で、味付けや油分の量を調節する作業が不可欠となります。そして、この層へのマーケティングは、ミャンマー語で行うことが必須です。

あくまで個人的な見解ですが、 ミャンマー人中産階級よりは、0.1%のミャンマー人富裕層と在ミャンマー外国人所得上位10%の層を対象とした方が、まだ外国人には与しやすいのではないでしょうか。後者の市場だと英語圏の競合のいる市場で、英語でマーケティングするというノンネイティブには不利な点はありますが、こちらだと日本人特有の美意識や仕事に対する哲学、目の細かさなどが評価され得ます。その分、付加価値が入り込む余地がまだある。
ミャンマー人中産階級の市場だと、ミャンマー人同業者との真っ向勝負の競争になるので、精神的に相当にタフで、かつ現地に則した経営能力がないと生き残れません。

やはり日本のような同質的な社会を擁する国から来ると、ミャンマーや他の東南アジアの国々のように、属する社会階層が違うと、同じ国の人間でも気質や嗜好がまったく異なるということが、すぐには腑に落ちません。視察に訪れて、ミャンマー人の経営者層と会ってから進出を決めても、実際に雇用することになる人々は、経営者層とは、まったく気質や行動様式やライフスタイルが異なります。

ここ1,2年の間、『万引き家族』『ジョーカー』『パラサイト』などの格差社会の矛盾を描いた映画作品が目立っています。
『ジョーカー』『パラサイト』はミャンマーでも映画館で上映されましたが、一般のミャンマー人の間ではまったく話題になりませんでした。
生まれた環境や属する社会階層によって、格差は途方もなくあっても、そこにはあまり問題意識は向かわない。
以前その辺りのミャンマーの事情について、詳しく書きましたので、お時間あればお読みください。

【長文】ミャンマーが経済的な意味で発展することはかなりむつかしいと思うけど、それは必ずしも悪いことではないかもしれない

『ジョーカー』を観て「誰もがいつでも社会の階層から転落する可能性があるのを見せつけられて怖かった」とか、『パラサイト』観て「これを観ながら、何でミャンマーでは、こうした社会格差の矛盾を衝いた映画が作られないのかずっと考えていた」とかの感想をFacebookに英語で書いていた若いミャンマー人の投稿を見かけましたが、こういうことを書くのは、当然、欧米で高等教育を受けて帰国した0.1%の富裕層の子女です。
本来問題意識を持つべき層がこうした映画にまったく関心を示さず、特権階級にいる層がこうした映画について(英語で)論評しているのを見ると複雑な気分になりますが、今のところ変化の兆しも見えてこないので、この状態が少なくともあと5年くらいは(本音を言えば10年くらいは)続くのではないかと予想しています。

よって、これからも当分の間は、個人や中小企業がミャンマーに進出する場合は、上にあげた二つのマーケットの内どちらを選ぶかをしっかり吟味した上で決断し、そのターゲットに向けたマーケティングを深く考えて実行することが(富裕層なら英語で、中産階級ならミャンマー語で)、ミャンマーの市場で生き残るための方法論ではないかと考えています。

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2020年2月5日水曜日

The Makers Market #10の出店から今後の戦略を考えた

2月2日の日曜日に開催されたローカル物産展 The Makers Market #10 に出店しました。
同日の同じ時間帯にヤンゴン市内で、TEDxYANGONとシンガポール・フェスティバルが開催されていたので、集客が少ないのではないかと懸念していました。
TEDxYANGONもシンガポール・フェスティバルもThe Makers Marketと客層が完全に被ります。三つとも在ミャンマー外国人とミャンマー人富裕層が行くタイプのイベントです。





毎回、午後6時から7時くらいが来場者のピークタイムです

いざ蓋を開けてみると、2ヶ月振りの開催のためか、それなりの盛況でした。従来と同じ、およそ3000人くらいの来場者数でしょうか。


こちらは私の出店テント

ローカル・ファッションブランドの出店者のカテゴリーの中では、テントへの来客数は、相変わらず私は4番手かなという印象でした。1位 Urban Rangoon、2位 Charlotte Barjou、3位 lilla、そして4位が私です。

こちらはFacebookページのベンチマーク結果。
「いいね」の数では上にあげたブランド中3番目です。
2位のViryaは欧米人顧客を中心とするテーラーハウス、4位のSunflowerはオーガニックコットンの製造・販売業です。


Urban Rangoonのテント


Charlotte Barjouのテント


lillaのテント

ローカル・クラフト、ローカル物産の購買層の主体は、欧米人を中心とする在ミャンマー外国人とミャンマー人富裕層です。そのため、かなり英語ができないと接客とマーケティングがおぼつかない。
私の場合、英会話能力にかなり難があるため、接客、マーケティング共に弱いです。
Charlotte Barjouは、ミャンマーで一番よく外国人に読まれている『MYANMORE magazine』にたびたび紹介されています。lillaは在ミャンマーフランス大使館でのファッションショーや社会起業家系のイベントでの講演などで認知度を上げています。
私もマーケットに向けて何かフックのあるマーケティングを仕掛けるべきなのでしょうが、英会話能力に制約があるため、出来ることは何なのか考えあぐねています。
ミャンマーに来てから必要性に迫られて、英語の読み書きはある程度できるようになりましたが、会話はさっぱりだし、スピーチとかだと苦行だし。しかも、約20年前に突発性難聴を患って聴力に障害があるため、英会話能力がこれから劇的に向上する見込みは薄い。

一方、強みとしては、他の事業者よりも多様なミャンマー産の生地を使っていることです。他では、素材として使われているのが、だいたいチン、ナガ等のエスニック・テイストの強い生地かプレーンな女性向けのシャン生地です。
私の場合、メンズの生地も素材としてフォローしているため、メンズのラカインやカチンといった生地の動向にも詳しい。
今年はこうしたメンズの生地の特徴を生かしたデザインを採用することで、マーケットでの差別化を図っていく予定です。
他事業者にはないテイストとデザインを提案することで、ローカル・ファッションブランドとしての棲み分けを狙います。
小さな市場を競合として取り合うより、ブランドとしてユニークなポジションを確立できるような素材選びとデザインの採用に力を入れます。
これからは、そうした意図のもとに企画した商品をブログやFacebookページに掲載していきます。

次回の開催は、おそらく3月第一週の日曜日だと予想されます。
ファッションにご興味のある方は、ご来場してブランド毎のテイストや立ち位置を比較して見られるのも楽しいかと思います。

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2020年1月26日日曜日

【2月2日(日)】ローカル物産展 The Makers Market #10 に出店します

今年最初の開催となるミャンマー・ローカル物産展のThe Makers Marketに出店します。
10回目となる今回の開催日は、2月2日(日)です。開催時間は、いつもと同じ16:00~21:00です。
今年は一月中の開催はありませんでした。主催者の意向により、在ミャンマー外国人のバケーション・シーズンが終わってから始めることになりました。

The Makers Marketは、ローカルメイドの工芸品やファッション・ブランドが一堂に会する、ミャンマーでは貴重なイベントです。
タイのようにナイトマーケットが充実していないミャンマーでは、こうしたローカルブランドに触れる機会はそう多くありません。このイベントに参加するような独立系小規模事業者は、アクセスの良い商業地に店舗を構える余裕はなく、在住者でも商品を目にする機会が少ないのが実情です。
そのため、ミャンマーのローカルブランドが一望できるThe Makers Marketは、ミャンマーでしか手に入らない工芸品や服飾品をまとめて見れる機会を提供するイベントとして、在ミャンマー外国人にとって人気が高く、広く知られています。


主催者のFacebookページに、今回出店するローカル・ファッションブランドの一つとしてYANGON CALLINGも紹介されています。
この分野での日本人の出店者は私一人なので、日本を代表して参加してきます(笑)。

The Makers Marketは、主催者が出店者を事前に選定しているため、会場で販売されている物品に、一定のクオリティが保証されています。
主催者側のスタッフが会場を巡回していて、人気のないお店は、次回の出店者として選出されないこともあります。 
ここには、ミャンマーのローカル・マーケットにありがちな、中国製の安価な衣料品や非正規コピーのキティちゃんやドラえもんのぬいぐるみなどは販売されていません。
出店者の販売する商品が、ミャンマー製であること、環境を配慮した製品であること(会場内でのプラスティックの使用は不可)、大量生産品ではないことが参加条件となっています。回を重ねる毎に、飲食店の出店者も増えてきていて、軽い食事もできるようになりました。

開催場所は、いつも通りKaraweik Gardenです(公園内のKaraweik Palaceの手前)。 会場の公園に入場する際に、入場料の300MMKを入口で徴収されます。


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2020年1月11日土曜日

ヤンゴンの本好きにはたまらない季節がやってきました

今年の一月も去年に引き続き、ヤンゴンで世界最大の本の展示即売会のBig Bad Wolf Book Saleが開催されています。
東南アジア各地を巡業しているイベントで、開催元はマレーシアの企業のようです。
自分のブログで確認すると、去年は1月18日~1月29日に開催されていました。
今年の開催日は、1月10日から1月20日の間です。
今年は去年とは場所が変わって、Fortune Plaza内のMyanmar Expo Hallで開催されています(場所の詳細は後述)。

ヤンゴンには、国際空港内の紀伊國屋書店しか海外の書籍が買える大きな本屋がないので、ここに住んでいる活字中毒者は、だいたい本に飢えています。
なので、活字中毒の在住者にとっては、干天の慈雨のようなイベントです。
去年は開催中日に2、3回行った記憶がありますが、今年は気合を入れて、初日の朝から行ってきました。


価格帯は、ペーパーバックで5,500MMK、ハードカバーが7,000~9,000MMK、ビジュアル・ブックは値段にばらつきがあって15,000~25,000MMKくらいです。
市価の半額以下なので、バンコクへ一時出国した時に買うよりも安い。








今年の傾向として、ビジネス書はあまり目ぼしいものがありませんでした。
そのかわり、文芸書が充実していました。
おそらくここで販売されているのは、出版社や取次から余剰在庫を低価格で大量に買い取った本です。
フィクションでは、村上春樹とかポール・オースターとか、ノンフィクションでは、マルコム・グラッドウェルとかユヴァル・ノア・ハラリのような、普通の本屋に平積みしているような売れ筋の本はありませんが、ある程度の目利き力があれば、面白そうな本を手頃な値段で入手できます。

ウィリアム・バロウズの『ソフトマシーン』も5,500MMK。
ミャンマーでバロウズ読む人間がいるのか?

今年の戦果をいくつかご紹介します。

ガブリエル・ココ・シャネルの伝記。
日本のビジネス書の分野では、ベストセラー作家の出口治明氏が、よくシャネルの言葉を引いて、教養の必要性を説いています。
「私のような大学も出ていない年をとった無知な女でも、まだ道端に咲いている花の名前を一日に一つぐらいは覚えることができる。一つ名前を知れば、世界の謎が一つ解けたことになる。その分だけ人生と世界は単純になっていく。だからこそ、人生は楽しく、生きることは素晴らしい」

出口氏はシャネルを敬愛していて、彼女の伝記本はすべて読んでいるとどこかに書いていました。それを知った時に、ビジネスマンがシャネルの生き様に興味を持つのは意外な気がしました。

日系アメリカ人作家による長編デビュー作。
21世紀に入ってから、アメリカ文学界で活躍するアジア系・アフリカ系の作家が増えていますが、アジア勢はインド系・中国系が中心で、日系人は影が薄い気がするので、どうなんだろうと思って。

イタリアの作家イタロ・カルヴィーノの『見えない都市』とドイツのカフカの『城』。今回は、フィクションのコーナーに、カルヴィーノの小説がたくさんありました。いま東南アジアでカルヴィーノ・ブームが起きているのか?


カルヴィーノの『見えない都市』は、フビライハンに仕えたマルコ・ポーロが、主君に、これまで訪れた奇妙で不思議な都市を語るという断章で綴られた短編集です。私の知る限り、世界で最も美しい、宝石箱のような小説です。東京大学の米文学の元教授で、現在は翻訳家の柴田元幸氏も、翻訳小説のヘヴィー級チャンピオンはガルシア・マルケスの『百年の孤独』で、ミドル級チャンピオンがこのカルヴィーノの『見えない都市』だと、東大駒場祭で開催された講演会で語っていました。

フィリップ・K・ディックの『パーマエルドリッチの三つの聖痕』と『火星のタイムスリップ』。


私が中学生の時、最もハマっていた作家は、筒井康隆とフィリップ・K・ディックでした。久しぶりに読んだらどんな感想になるのか、興味があったので。

ジェニファー・イーガンの『マンハッタンビーチ』。


前作の『ならずものがやってくる』から7年ぶりの新作。未読ですが、『ならずものがやってくる』は、よくカオサンの古本屋で見かけるので、どんなものか興味があったので。しかし英語圏の作家は、本当に創作ペースがゆっくりです。カズオイシグロなんかも、新作出るの5年おきくらいだし。英語で書かれた本は読者数が多いため(英語が母語でない国でも読まれるので)、頻繁に新作を発表しなくても食えるので、じっくり時間をかけて書けるんでしょうけど。

今回の目玉はこの本。見つけたら絶対買うべき本です。
ジュノ・ディアスの『オスカー・ワオの短く凄まじい人生 』。


ドミニカ系アメリカ人作家による、ドミニカ系アメリカ人の日本オタクの青年が登場する長編小説。ウルトラマンとか小松左京原作『復活の日』の角川映画が作中に出てくるのは、この作品だけでしょう。日本語訳を読んだとき、ガルシア・マルケス ミーツ カート・ヴォネガットという感想を持ちました。
ピュリツァー賞、全米批評家協会賞をダブル受賞、英米で100万部のベストセラーとなった話題作なので、ヤンゴンに住む外国人もこの小説のことを知っている人が結構います。
昨日Facebookで、イベント会場にチェックインして、この本の表紙をアップしたら、「この本いいよね!」とヤンゴン在住のケニア人からレスが入りました。
21世紀になってから発表された私が読んだ小説の中で、今のところ、これがベストの作品です。
この作家は、親日家で、下北沢のサブカルチャー事情にも詳しいです。福岡のラーメン店事情を世界の知るところになったのは、この人が雑誌に寄稿したコラムによるところが大きいです。関心のある方は、Junot Diaz Ramen Fukuokaでググってみてください。

それでは、会場への行き方をご案内します。


上記地図の通り、会場はFortune Plaza内のMyanmar Expo Hallです。
ヤンゴン郊外の場所なので、市内中心部からタクシーを使うと往復10,000MMKはかかります。
そんな交通費使うより一冊でも多くの本を買いたいという人(私です)のために、バスでの行き方をご案内します。
バスだと片道200MMK、往復400MMKなので、25分の一の交通費で行けます。

ダウンタウンから行く場合は、マハバンドゥーラ公園前のバス停から、 4、5、9、33、81、85、89のいずれかの番号のバスに乗って、タカタ橋を渡ってから二つ目か三つ目のバス停 Wet Su 下車です。バス停から会場までは100メーターくらいです。
大型バスは4番と81番で、あとはマイクロバスになります。本数の多い、4番で行くのが一番無難でしょう(私は行き帰りとも4番を使いました)。



20日までの開催で、まだ間があります。本が好きな方にはご来場をおススメします。

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2020年1月8日水曜日

【YANGON CALLING】メンズパンツ、ドレスの新色が入荷しました

メンズ・ショート・パンツとドレスの新色が入荷しました。

メンズのパンツはラカイン産のロンジー生地を使用して作られています。
ラカイン産のロンジー生地は、厚手で丈夫なのでボトムスに向いています。




今年からサイズ設定を広げて、現在、SサイズからXXXXXLサイズまで展開しています。

サイズ設定は以下の通りです。
S =78cm, 30inch
M=82cm, 32inch
L=86cm, 33inch
XL=90cm, 35inch
XXL=94cm, 37inch
XXXL=98cm, 37inch
XXXXL=102cm, 40inch
XXXXXL=106cm, 42inch

お買い上げできるカラーやサイズの在庫は、YANGON CALLINGのオンラインショップで確認できます。
https://www.ygncalling.com/men

シャン州産の生地を使ったフレンチ・スリーブのサイド・タック・ドレスの新色も入荷しました。


こちらも在庫状況は、オンラインショップでご覧になれます。
https://www.ygncalling.com/women

新年だしミャンマーの素材で作った服を着て
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2020年1月2日木曜日

(2) ミャンマー人の行動と気質を理解するための統一理論について考えた

前編「(1) ミャンマー人の行動と気質を理解するための統一理論について考えた」の続きです。

これまで、ミャンマー人の行動様式を、時間軸という概念を用いて説明してきましたが、一昨日あたりに、もっと上手く説明できる方法があるのではないかと思いつきました。
経済や会計の概念である、フローとストックを援用すれば、より包括的かつ明示的な説明がつきそうです。

Wikipediaでは、「フロー(Flow)とは、一定期間内に流れた量をいい、ストック(Stock)とは、ある一時点において貯蔵されている量をいう」と説明されています。

Dynamic Stock and flow diagram

上図では、流れたフロー(当期利益)がダム状のストック(自己資本)として貯まり、それがまたフロー(消費・投資)として、 ダムから流れ出します。

会計の分野では、複式簿記において、期間の損益状況をあらわす損益計算書P/L(収益・費用)がフロー、特定時点での財産状況をあらわす貸借対照表B/S(資産・負債・資本)がストックにあたります。

ミャンマーのローカル企業の会計では、複式簿記を採用していないため、フロー(P/L)は見ていますが、ストック(B/S)は見ていないケースが多いです。
つまりミャンマーには、フローの概念はあるが、ストックの概念はあまり一般的ではないとも考えられます。複式簿記を採用しないのは、単なる会計上の習慣ではなく、ミャンマー人の世界観に根差した、民族的な深層意識に由来する選択である可能性があります。

これまで、ミャンマーでは、真面目さと勤勉さ、善良さと誠実さは別の概念であることを論じてきましたが、この先、フローとストックの概念を導入して、説明をしてみます。
<フロー>真面目、善良 <-- その場において観察される資質
<ストック> 勤勉、誠実 <-- フローが蓄積した結果として事後的に認められる資質
として捉えてみると、ミャンマーはフローの流出量は多いが、それがストックとして蓄積されていないと言えます。
上図のイメージで言うと、水量(フロー)は多いが、ダムの貯水できる容量が非常に小さいため、十分なストックが形成されない。

真面目さと勤勉さ、善良さと誠実さという人間的な資質を説明するに限らず、ミャンマーで起こっている事象全般をこのフロー・ストックの概念を適用して考えてみましょう。
  • 植民地支配から独立して以来、発電施設、上下水道、都市計画などのインフラを自力で立ち上げたことがほとんどない --> 社会資本(ストック)の概念がないから
  • 公営の充実した図書館や美術館がない --> 文化資本(ストック)の概念がないから
  • 安易に他社のデザインや商標やソフトウェアのコピー・模倣をする --> 無形資産(ストック)の概念がないから
  • 辞職する際に業務の引継ぎをしない --> 事業の継続性(ストック)の概念がないから
おお、全部説明できそうだ。

正確を期せば、2006年に旧首都ヤンゴンに代わる首都ネピドーが建設されていますが、あの都市は政府庁舎が点在するだけで、公共交通・商業施設と居住区のバランスと利便性、娯楽や文化施設などの都市としての魅力を考慮して建設されていないため、ここでは除外します。
1961年に発表された都市論のバイブルと呼ばれる、ジェイン ジェイコブズ 著『アメリカ大都市の死と生』では、都市の様々な機能や用途 ー 居住区・オフィス地区・商業施設・公共の文化施設など ー が相互に絡み合い、多様な生態系を形成することにより、活気や魅力が生まれ、イノベーションが発生し、あたかも有機体のように都市が成長・発展するプロセスが活写されています。
都市を建設するにあたっては、成長・発展の萌芽となる、複合性や多様性をいかに設計するかが、現在の都市計画においては重要な要素となっています。
1960年に遷都されたブラジルの首都ブラジリアは、建設にあったて、そうした都市の発展の条件を考慮していなかったため、自然発生的な成長・発展が果たせなかった都市の代表的なケースとしてよく挙げられます。
ネビドー同様、巨大な建造物と広大な道路が広がる整然とした巨大な計画都市ですが、市内の移動は自動車による移動を前提にしているために、実際の市民生活を送るには不便なことや、直線的な道路が広く長く伸びる設計であるため、コミュニティが生成する区画(ブロック)や路地が存在せず、都市としての自然な繁栄を遂げることができませんでした。イノベーションの発生には、クリエイティブな人材の重層的・複合的なコミュニティの存在が不可欠とされています。このため、現代の先進的な都市作りでは、徒歩や自転車で移動が可能な、利便性が高く緊密なコミュニティ生成の場を作ることが重要な課題となっています。
ブラジリア建設から46年後に建設されたネピドーは、ブラジリア同様に都市の発展プロセスに対してこうした洞察を欠いているのは否めません。


東南アジア人と東北アジア人の気質の違いは、イソップ童話の「アリとキリギリス」寓話によく喩えられますが、これにもフローとストックの概念が適用できます。
  • アリ(東北アジア人) --> 食べ物(フロー)の途絶える冬がある -->食べ物(フロー)がある夏の間に食料を貯蔵する --> ストックの概念が育ちやすい
  • キリギリス(東南アジア人) --> 食べ物(フロー)の途絶える冬がない -->常に葉っぱが茂っている(フローが豊富)ため、食料を貯蔵する必要がない --> ストックの概念が育ちにくい
ミャンマーは、旅行者には概ね好印象なのですが、ここで実際にビジネスを営んでいる外国人にはけして評判が良いとは言えません。
これは通りすがりの旅行者が体験するのは、フロー(真面目さ、善良さ)であるのに対し、実際にこの地に足を付けて事業を営むのにあたっては、事業者は被雇用者にストック(勤勉さ、誠実さ)を求めることに起因します。
ミャンマーに進出した外資系企業の成功例がいまだに少ないのは、視察時にフローの部分だけを見て、投資判断をすることも大きな理由の一つではないでしょうか。
あるいは、自国のストック(上図では、ダムの貯水量)と同様のキャパシティ(ダムの容量)がミャンマーにもあるという、誤った前提で投資判断をしている可能性もあります。

いずれにせよ、これからミャンマーの様々な事象を読み解くにあたって、補助線としてフローとストックの概念を用いるのは、 正確なミャンマー像を把握するのに有用な試みではないかと個人的には考えます。

<追記:2020年1月3日>
本稿を書き上げた後、フローとストックの概念で説明できる代表的・典型的なケースをさらに思いついたので、ここに追記します。
一つ目は、ミャンマーに投資する投資家や、進出する外資系企業の成功例が少ない理由です。
株式投資に喩えると、彼らは、 フロー(損益計算書P/L)だけを見て、ストック(貸借対照表B/S)を見ずに、投資を決めていたケースが多いのではないかと推測します。
もう一つは、11世紀頃に建造された歴史的な価値のあるパゴダに、コンクリートやモルタルの現代の素材で補修したり、新たに建て増ししたりするケースです。
これは、迸る信仰心や、より良き来世への熱望といった個々人のフローが大量に流れ出した結果、先人の遺した遺蹟や文化・歴史的な価値のある建造物といったストックが押し流されている状態であるとも説明できます。

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2020年1月1日水曜日

(1) ミャンマー人の行動と気質を理解するための統一理論について考えた

明けましておめでとうございます。
去年の投稿では「 ミャンマーでは、善良であることと誠実であることは別の概念であることを考えた」が飛びぬけてアクセス数が多かったです。私の投稿でアクセス数が400近くあるのは珍しいことです。
せっかくなので、新年最初の投稿として、このトピックを深堀りしてみることにします。

まずは、前回までの考察をおさらいします。

前回の投稿で、ミャンマーでは、真面目さと勤勉さ、善良さと誠実さは別の概念であることを論じました。

前者は、その表出が瞬間的に観察される心性の有り様なのに対して、後者は、もっと長い時間軸の中で継続的に観察され、当該者の行為・行動の蓄積により、それらが当該者の持つ資質の発露であると事後的に認められる心性の有り様である。
ミャンマーでは、継続的・長期的に人が評価される社会的な基盤や価値観が希薄なため、後者(勤勉さ、誠実さ)の資質は育ちにくい(ゼロとはいいません)。
そのためミャンマーでは、儒教文化圏の東北アジア人には、多くの場合、自明とされている、前者(真面目、善良)に後者(勤勉、誠実)が包括される、あるいは同一の集合に属するという概念は当てはまらない。
真面目な人物が怠惰であったり、善良な人物が不誠実であるということもあり得るし、真面目で善良だと思っていたミャンマー人から裏切られた、騙されたというケースもしばしば仄聞する。

これは、彼ら・彼女らが、真面目で善良な仮面の下に邪悪な魂を隠し持っているからではありません。
北ヨーロッパの推理小説なんかでは、陰惨な殺人事件を起こしている犯人は、登場人物中、最も善良で悪意のなさそうな人物であるのが常道ですが、そうした自らの邪悪さを善意の仮面で覆って他者を欺くような複雑さ、狡猾さ、陰険さはミャンマーには存在しません。
理由は、おそらく、もっと単純です。
それは、彼ら・彼女らの世界観では、時間軸で評価する文化が希薄なのではないか、という仮説を立てています。
人物が、時間の経過を伴う行為・行動の中で、蓄積的・累積的に評価される社会的な土壌があまりない。
そして、個人単位でも、時間の経過の中で、行為・言動に一貫性や整合性を失っても、自己矛盾や齟齬に悩まされることは少ない。

通常、人間には自己同一性(アイデンティティ)を保つため、自らの行為・言動に一貫性・整合性を持たせる心理機構が存在します。
この心理機構を利用したセールス・テクニックを『影響力の武器』という本で読んだことがあります。
ずいぶん前に読んだ本なのでうろ覚えですが、著者の体験したこんなエピソードが実例として紹介されていました。

ある日著者の家に、タンクトップを着た魅力的な若い女性が、アンケートに協力してもらえませんか?と訪ねてきた。魅力的な女性の申し出なので、とりあえずアンケートを了承した(著者は男性)。あなたは健康とライフスタイルの充実に留意してますかとの問いに、イエスと答えた(魅力的な女性の前でいい格好したかった要素が多分にある)。すると、では、あなたはこれを買う必要がありますねと、健康食品か健康器具を売り込まれた。著者は、健康とライフスタイルの充実に留意していると言った手前、自らの発言を裏切れずに、その商品を買う破目になった。


これは、 自己同一性を維持するため、自らの言動の一貫性・整合性を保とうとする心理機構を利用したセールス・テクニックですが、ミャンマー人に同様の営業をした際、どういう結果が出るか興味があります。

以前の投稿で書いたAさんから、メッセンジャーで、クリスマスカードやら新年祝いの画像が頻繁に送られてきますが、彼女は自分の行為に矛盾や齟齬を感じていないため、こちらに対して後ろめたさや罪の意識はまったくなく、これまでと同様に接してくるのでしょう。
ちなみに、彼女が持ち出したネームタグは、年末に買い取りました。出自のよくわからない物にお金払うのは、抵抗がありましたが、知らない所で勝手に使われてブランド価値を棄損されても困るため、持たせておくわけにもいかなかったので。

あくまでここに書いているのは仮説ですが(fMRIで、実際に脳の活動を観察した実証実験をしたわけでもないので)、これまでの仮説を補強するエピソードとして、以下のようなケースを実際に見たことがあります。

ミャンマー人実業家Mさんと中小企業社長の日本人Iさんは、20年以上の付き合いがあった。
Iさんは、これまで一緒にMさんとは仕事をしたことはないが、交友歴が20年以上あるので、Mさんとは信頼関係が構築できていると考えていた。6、7年前のミャンマー投資ブーム時に、Mさんの元に日本の投資家が日参するようなった。中には、個人で数十億円を動かせる投資資金を持つ投資家もいた。Iさんも当時のミャンマー投資ブームに乗じて、Mさんとの共同事業の提案をした。Iさんは20年来の交友関係があるので、信頼関係がある自分が優先されるものと信じていた。しかし、Mさんは、知り合ったばかりの潤沢な投資資金を持つ日本人投資家との関係を重視し、大きな投資資金を持たないIさんを次第に疎んじるようになり、Iさんから電話があっても居留守を使うようになった。

このケースは、上述した、時間軸のない世界観から導き出された典型的な行為として観察し得ます。
時間を伴う行為・行動の蓄積(ここでは20年以上の交友関係)よりも、目先の利得を優先するのは、Iさんが考えていたのとは異なり、Mさんにとっては、長期にわたる交友関係には大した価値がなかったからでしょう。
行為・行動が蓄積されて、累積的に信用という形で評価される東北アジア人的な価値観と、その時々の利害関係によって、毎回関係性がゼロクリアされるアジア東南アジア人的な価値観がすれ違った典型的なケースと言えます。

ここまでが、前回までのおさらいです。
少し肉付けしたり、実例を入れて実証性を補完したので長くなりました。
いままで、ミャンマー人の行動様式を時間軸という概念を用いて説明してきましたが、もっと包括的かつ明示的に説明できそうな方法を思いついたので、本稿を書き起こしはじめました。
おさらいが長くなったのと、書きながら考えていて疲れてきたので、新しい説明方法については、次回の投稿で書くことにします。

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