2020年1月11日土曜日

ヤンゴンの本好きにはたまらない季節がやってきました

今年の一月も去年に引き続き、ヤンゴンで世界最大の本の展示即売会のBig Bad Wolf Book Saleが開催されています。
東南アジア各地を巡業しているイベントで、開催元はマレーシアの企業のようです。
自分のブログで確認すると、去年は1月18日~1月29日に開催されていました。
今年の開催日は、1月10日から1月20日の間です。
今年は去年とは場所が変わって、Fortune Plaza内のMyanmar Expo Hallで開催されています(場所の詳細は後述)。

ヤンゴンには、国際空港内の紀伊國屋書店しか海外の書籍が買える大きな本屋がないので、ここに住んでいる活字中毒者は、だいたい本に飢えています。
なので、活字中毒の在住者にとっては、干天の慈雨のようなイベントです。
去年は開催中日に2、3回行った記憶がありますが、今年は気合を入れて、初日の朝から行ってきました。


価格帯は、ペーパーバックで5,500MMK、ハードカバーが7,000~9,000MMK、ビジュアル・ブックは値段にばらつきがあって15,000~25,000MMKくらいです。
市価の半額以下なので、バンコクへ一時出国した時に買うよりも安い。








今年の傾向として、ビジネス書はあまり目ぼしいものがありませんでした。
そのかわり、文芸書が充実していました。
おそらくここで販売されているのは、出版社や取次から余剰在庫を低価格で大量に買い取った本です。
フィクションでは、村上春樹とかポール・オースターとか、ノンフィクションでは、マルコム・グラッドウェルとかユヴァル・ノア・ハラリのような、普通の本屋に平積みしているような売れ筋の本はありませんが、ある程度の目利き力があれば、面白そうな本を手頃な値段で入手できます。

ウィリアム・バロウズの『ソフトマシーン』も5,500MMK。
ミャンマーでバロウズ読む人間がいるのか?

今年の戦果をいくつかご紹介します。

ガブリエル・ココ・シャネルの伝記。
日本のビジネス書の分野では、ベストセラー作家の出口治明氏が、よくシャネルの言葉を引いて、教養の必要性を説いています。
「私のような大学も出ていない年をとった無知な女でも、まだ道端に咲いている花の名前を一日に一つぐらいは覚えることができる。一つ名前を知れば、世界の謎が一つ解けたことになる。その分だけ人生と世界は単純になっていく。だからこそ、人生は楽しく、生きることは素晴らしい」

出口氏はシャネルを敬愛していて、彼女の伝記本はすべて読んでいるとどこかに書いていました。それを知った時に、ビジネスマンがシャネルの生き様に興味を持つのは意外な気がしました。

日系アメリカ人作家による長編デビュー作。
21世紀に入ってから、アメリカ文学界で活躍するアジア系・アフリカ系の作家が増えていますが、アジア勢はインド系・中国系が中心で、日系人は影が薄い気がするので、どうなんだろうと思って。

イタリアの作家イタロ・カルヴィーノの『見えない都市』とドイツのカフカの『城』。今回は、フィクションのコーナーに、カルヴィーノの小説がたくさんありました。いま東南アジアでカルヴィーノ・ブームが起きているのか?


カルヴィーノの『見えない都市』は、フビライハンに仕えたマルコ・ポーロが、主君に、これまで訪れた奇妙で不思議な都市を語るという断章で綴られた短編集です。私の知る限り、世界で最も美しい、宝石箱のような小説です。東京大学の米文学の元教授で、現在は翻訳家の柴田元幸氏も、翻訳小説のヘヴィー級チャンピオンはガルシア・マルケスの『百年の孤独』で、ミドル級チャンピオンがこのカルヴィーノの『見えない都市』だと、東大駒場祭で開催された講演会で語っていました。

フィリップ・K・ディックの『パーマエルドリッチの三つの聖痕』と『火星のタイムスリップ』。


私が中学生の時、最もハマっていた作家は、筒井康隆とフィリップ・K・ディックでした。久しぶりに読んだらどんな感想になるのか、興味があったので。

ジェニファー・イーガンの『マンハッタンビーチ』。


前作の『ならずものがやってくる』から7年ぶりの新作。未読ですが、『ならずものがやってくる』は、よくカオサンの古本屋で見かけるので、どんなものか興味があったので。しかし英語圏の作家は、本当に創作ペースがゆっくりです。カズオイシグロなんかも、新作出るの5年おきくらいだし。英語で書かれた本は読者数が多いため(英語が母語でない国でも読まれるので)、頻繁に新作を発表しなくても食えるので、じっくり時間をかけて書けるんでしょうけど。

今回の目玉はこの本。見つけたら絶対買うべき本です。
ジュノ・ディアスの『オスカー・ワオの短く凄まじい人生 』。


ドミニカ系アメリカ人作家による、ドミニカ系アメリカ人の日本オタクの青年が登場する長編小説。ウルトラマンとか小松左京原作『復活の日』の角川映画が作中に出てくるのは、この作品だけでしょう。日本語訳を読んだとき、ガルシア・マルケス ミーツ カート・ヴォネガットという感想を持ちました。
ピュリツァー賞、全米批評家協会賞をダブル受賞、英米で100万部のベストセラーとなった話題作なので、ヤンゴンに住む外国人もこの小説のことを知っている人が結構います。
昨日Facebookで、イベント会場にチェックインして、この本の表紙をアップしたら、「この本いいよね!」とヤンゴン在住のケニア人からレスが入りました。
21世紀になってから発表された私が読んだ小説の中で、今のところ、これがベストの作品です。
この作家は、親日家で、下北沢のサブカルチャー事情にも詳しいです。福岡のラーメン店事情を世界の知るところになったのは、この人が雑誌に寄稿したコラムによるところが大きいです。関心のある方は、Junot Diaz Ramen Fukuokaでググってみてください。

それでは、会場への行き方をご案内します。


上記地図の通り、会場はFortune Plaza内のMyanmar Expo Hallです。
ヤンゴン郊外の場所なので、市内中心部からタクシーを使うと往復10,000MMKはかかります。
そんな交通費使うより一冊でも多くの本を買いたいという人(私です)のために、バスでの行き方をご案内します。
バスだと片道200MMK、往復400MMKなので、25分の一の交通費で行けます。

ダウンタウンから行く場合は、マハバンドゥーラ公園前のバス停から、 4、5、9、33、81、85、89のいずれかの番号のバスに乗って、タカタ橋を渡ってから二つ目か三つ目のバス停 Wet Su 下車です。バス停から会場までは100メーターくらいです。
大型バスは4番と81番で、あとはマイクロバスになります。本数の多い、4番で行くのが一番無難でしょう(私は行き帰りとも4番を使いました)。



20日までの開催で、まだ間があります。本が好きな方にはご来場をおススメします。

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