グーグルのキーワード検索数ランキングを眺めていたら、1位が「ミャンマー」だった。選挙が終わって、日本でもずいぶん注目されているんだなあと実感。
でも、2位の「ばびろんまつこ」って誰?
Google先生に聞いてみた。
ばびろんまつこは、そのキラキラしたツイートで知られた人物。
ブランド品や海外旅行、高級マンションに高級料亭などを誇示し、わかりやすいセレブツイートを連発しては多くの人からの支持を集め、キラキラ系には憧れの存在となっていた。
こういうツイートをしていた人物らしい。 ずいぶん強気だ。
「正直な話年収が1500万超えたあたりから自分より年収が低いであろう異性は自然と身近にいなくなる。いてもコンビニの店員さんとか宅急便の配達員さんくらい」
「若かりし頃に一度だけエコノミーでヨーロッパに行ったんだけど、まるで奴隷船のようでわくわくぎゅうぎゅうな感じが楽しかったな」
「秋冬物のお買い物は、アイテム一つに余裕でOL1ヶ月分のお給料か飛んでいく」
偽ブランド品をネットオークションに出品し、京都府警に逮捕された無職の女(26)は、セレブ生活を自慢する「キラキラ女子」としてネット上で話題になっていたらしい。
そして、 偽ブランド品をネットオークションに出品したことが発覚して、逮捕されたことで、Twitterフォロワー以外にも知られることになり、 グーグルのキーワード検索数ランキングでミャンマーに次ぐ2位になっていた模様。
いつもなら、ふーんで終わるトピックなのだが、今回は引っ掛かるところがあった。この人の教育的バックグラウンドが私と非常に近いのだ。
卒業した大学は同じ(学部は違うけど)、高校も自分と同じく九州の地方公立校。しかし彼女は、そうした教育的バックグラウンドを持つタイプの一般的な人物像から、言動とか行動形態が、ずいぶんとかけ離れている。
私の学生時代の友人・知人の八割くらいは、自分も含めて地方公立高校-->地方国立大学という進学コースだったので、こうしたコースを歩むタイプの人達の行動様式とか思考パターンはかなり知っているつもりだ。
良く言えば質実剛健で堅実、悪く言えば地味でいささか退屈な行動様式や思考パターンの人が多い。学生時代から堅実で、あまり冒険や無茶をしない。卒業してからの就職先も、地方公務員や地銀や地元の公立校の教員などの堅実なところを選ぶ傾向が強い。ベンチャー企業や外資系企業などの華やかそうではあるが、浮き沈みが激しい会社を希望することはほぼない(希望しても、入れるかどうかはさておき)。生活様式も地味で堅実で、民間よりも政府機関、株式投資よりも郵貯、メガバンクよりも信用金庫、外車よりも国産車、紀伊国屋よりも生協、みたいな選好をする傾向が強い。
要するに、ばびろんまつこさんがさかんにツイートしていたような、ラグジュアリー・ブランドのバックをたくさん持ったり、ハイエンドなリゾートホテルに宿泊したりするライフスタイルから、かなり遠い場所に位置するセグメントである。
どうして、彼女は地方公立高校-->地方国立大学という出自が必然的に導く、地味で地道なジミジミした価値観・ライフスタイルから、キラキラしたラグジュアリーな世界へと転向を試みたのだろう?
テレビのワイドショーでもこの事件が取り上げられたようなので、識者やコメンテーターがテレビでコメントしたり、コラムニストが週刊誌に論評を書いているだろうが、おそらく、彼女の心理の深層には踏み込めてはいないと思う。
そうしたマスメディア内で情報発信する職業や立場にある人の中に、地方公立高校-->地方国立大学という出自を持つ人はほぼいないから。
地方公立高校-->地方国立大学の進学者に共通した心象風景を持たない人々が、この事件について語ってもリアリティがないように思う。
サイレントマジョリティという言葉は元々、知識人層が持つような属するクラスを代表するスポークスマン・語り部を持たない、アメリカの物言わぬブルーカラー・労働者階級を指していたようなのだが、 地方公立高校-->地方国立大学といった出自を持つ人々も同様に、その数は多いものの語り部を持たない階層だと思う。
あなたの周囲や親戚の中にも、地元の国立大学出て、地方公務員や地銀に勤める人はきっといるだろうが、そういった人々は大抵SNSもブログも熱心にやってないないはずだ。所属組織や地域社会が居場所である彼らにとって、不特定多数に情報発信する必要性もインセンティブもないから。
でも、彼女の置かれた環境や文化的背景を理解できる当事者が一人くらい、この件について書いた方が良いだろうと思ったのが、この投稿のきっかけだ。
同じ出自を持つ一人として、なぜ彼女がキラキラした世界を目指したのかを考えてみた。
おそらく、彼女は地方の日常に潜む継続性や予測可能性を、退屈さや凡庸さとして嫌っていたか、もしかしたら憎んでいたのではないかと推測する。昨日の生活が今日も繰り返し、そして明日にも繰り返される。代わり映えのしない日常は未来永劫繰り返し、それは自分が地域の共同墓地に親族と共に葬られるまで続く。地に足が着いた人間としては当然の与件として受け入れるべき条件だが — 地方公立高校-->地方国立大学の人間の多くにとっては社会生活の前提条件 — 彼女には耐えがたかったのではないか。
ファースト風土が土地を覆い、ヤンキー・ギャル的な価値観・美意識が幅を利かす地方に馴染めず、東京へと脱出を図るものの、突出した才能や能力が無ければ、やはり東京に居ても何者にもなれない。そうした、地方と東京とに引き裂かれた地方出身者の状況や心理を、地方に住む10代から30代の女性の日常を通して鮮やかに描いた連作短編集が数年前に話題になった。
本のタイトルが『ここは退屈迎えに来て』なのは象徴的だし、本当に秀逸なタイトルだと思う。
でも、地方で待っていても都合良く、誰かが迎えに来てくれるわけはないので、彼女も自分から出て行くしかなかった。地方での職を捨て、東京に出た彼女は、キラキラ生活を支えるパトロンを探していたようだが、生活全般に渡って面倒を見てくれる太客はどうも見つからなかったようだ。
デヴィ夫人や叶姉妹ほど大胆不敵になれないところが、地方国立大的な中途半端さと振り切れなさを感じさせて、愛おしさすら感じる。そういえば、ガブリエル・ココ・シャネルも貧しい出自から、愛人家業で得た資金で自らのブランドを立ち上げ、モードの帝国を築き上げたのだった。
この人のツイートをちょっと見てみたが、シャネルやデヴィ夫人や叶姉妹のような底辺から成り上がった人物特有の底の見えない怪物性は感じられなかった。良くも悪くも普通の女の子が、ネットで別人格を演じているうちに、気がついたら戻れない場所まで来てしまったという印象。もちろん犯罪はいけないことだけど、詐欺が発覚したため、事態がさらにエスカレートする前に中断して良かったのではないかと感じる。
中には諧謔味や自虐性を感じるツイートもあり、設定したキャラクターが時々ブレているのも微笑ましい。
私は、自分と共通する彼女の教育的バックグラウンドから、彼女の言動について考えてみたが、もちろん違った観点からの見方もある。
某掲示板の鬼女板で、いかにも盛り上がりそうなトピックだなと思って、見てみるとやはりそうだった。なるほどと思った書き込みを抜粋。
地方の進学校から国立行くような子は「ウブ」なのよ。女のヒエラルキーとかに無知なの。
がんばって勉強したら、その努力に見合った成果を受けられるとか信じてるの。
そういう子が都会に出て、
「女はどれだけいい男を捕まえるかが勝負」
「女を売って世渡りした要領いいゲスが勝つ」
「女はしょせん男社会の売春婦」
こういう現実を初めて理解して、実家の財力と育ちで最初から格差が決まってるということもわかって
22過ぎてから慌てて軌道修正して女磨きすると、アサッテの売春路線にすっ飛んでいくわけよ。
というか、地方出の貧乏娘が都会で勝負しようとしたら売春するしか道がないから、ほとんどみんなそうなる。「女の勝ち」を目指す子は。
「女の勝ち」を求めず、「自分なりの勝ち」を目指す真面目な子ももちろん大勢いるし、そっちが多いわけだが「女の勝ち」に行く子もいると。
なるほど「女の勝ち」ね。 こういう見方もあるんだ。
でも、彼女はずいぶん善戦したと思う。事件前から、Twitterのフォロワー数も1万を越えていたようだし(事件発覚後の11月16日現在では、約3万フォロワー!)、外資系金融機関のエリートが出席するプライベートなパーティーにも出入りしていたようだし(東京に10年住んでいたが、そんなものがあるとは知らなかった)。勝負する土俵の選択の正否はさておき、何の人的コネクションも地縁もない場所に、一人で徒手空拳で乗り込んでの成果だから、相当の達成だと思う。私にはできない。
最後にいちOBとして、ばびろんまつこさんの今後の身の振り方について提案いたします。
出所後は、ミャンマーにいらっしゃるのは如何でしょうか?
物欲や他人からの賞賛に飢えるのは、仏教でいうところの我執・執着です。
ミャンマーは、我執・執着を捨てるのに、うってつけの国です。
ヴァンクリーフ&アーペルもカルティエも売ってないので、物欲に身を焦がすことがありません。ラグジュアリーブランドはおろか、店に行っても欲しい物がほとんど見つからないので、物への執着は明らかに減ります。
ツイートを読むと、ばびろんまつこさん自身も、うすうすご自分がなさっていることが、無間地獄の中でもがいていることに過ぎないと自覚されてますね。
思い切って、ミャンマーで出家するのも、我執を捨てるひとつの方法です。
上座部仏教では、出家・還俗のハードルが低いため、一週間のプチ出家も可能です。
出所後は、僧院でしばらく修行して、我執を捨ててみては如何しょうか?
それから、お勧めはしませんが、ばびろんまつこさんが東京で培ったオヤジ転がしの手練手管は、ここではもの凄く効くのではないでしょうか。バビロンシティ・トーキョーでは、強力な競合がひしめいていて、あまり上手く行かなかったようですが、ミャンマーでは(ry
うーん、ここでやっても高いワインとか飲めないし、ラグジュアリーな生活もできないから、意味がないですね。もし、ミャンマーにいらっしゃったら、やっぱり我執・執着を捨てて、地道に地味に生きられるのがよろしいかと。
人間、地道にコツコツと生きるのが一番だと思います。
あまり面白い結論ではありませんが、事実です。
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