2015年11月28日土曜日

ミャンマー・ドリームの終焉

先日、INSTITUT FRANÇAIS de BIRMANIE(ミャンマーのフランス文化センターみたいな所)で、昨年に引き続き2回目のWorld Music Festivalが開催されました。

2014年11月
2015年11月

欧米人の観客がメインのイベントなのですが、去年に較べて外国人の数が減っているような気がしました。
在ミャンマー外国人の情報交換のためのFacebookページYangon Connectionでも今年に入ってから、ミャンマーから出て行く外国人が家具や電化製品を売るためのガレージセールの告知が目立つようになっています。
統計データがないので、あくまで体感なのですが、ミャンマー在住外国人口は絶対数が減っているのではないかと推測します。この一年は、ミャンマーからの外国人の転出数の方が、転出数より多いのではないでしょうか。

ミャンマーの軍事政権が民主化へと舵を切った時には、ミャンマーは「アジアのラストフロンティア」とさかん喧伝されました。たしかに、先進国では当然あるような商品やサービスの多くはこの国には存在しないため、最初にこの国を見た時には、競合の存在しない手付かずの広大な市場が拡がっているように思えます。
ただし、 実際にビジネスを始めるとなると、難易度は相当に高いと言わざるを得ません。
電気・ガス・上下水道等のインフラが未整備な上、事業に関する法規制も運用が曖昧な場合が多く、行政手続き等が必要な場合は、申請方法が不透明で、非常に時間を要することも良くあります。
特に問題が頻発するのが、人の問題です。
合弁等で現地企業と事業する場合、現地パートナーが契約を守らない、適切な会計を実施しない等のトラブルが起こり得ます。そもそもミャンマーでは、従来、文書よりも口約束で仕事を進めることが多かったため、契約書や財務資料の重要性を認識していないことが多々あります。たとえば、契約を締結しても内容を読んでいないため、当然のように契約を守らないといったケースもあり得ます。
また、現地で従業員で雇用する場合も、先進国企業の要求水準に達した能力を持つ人材を探すのは極めて困難です。ミャンマーの教育制度に問題がある上、就業経験を通じて一定水準のスキルに達した人材は極めて稀です。よくある例をあげると、飲食店だと器の中に指を入れて配膳しないように注意しないといけないし、デスクワークだとエクセルのシートを作る時は、電卓で計算した値をセルに打ち込むのではなく、計算式を入れて自動計算させることを教える必要があります。
日本からミャンマーへ進出する業種として、飲食業が多いことが目立ちます。製造業等と比較して設備投資の金額が少ないため、個人経営者でも参入が比較的容易であることや、インフラの脆弱さから受ける影響が小さい等の理由からでしょう。
ただし、経営を継続するだけの売上を確保することは難しいようで、一年足らずで撤退するケースが相次でいます。
ミャンマー進出の際にはさかんにプレスリリースを発表したものの、ひっそりと撤退した居酒屋チェーンハンバーガーチェーンもあることから、個人経営に較べて資金・人材等のリソースが豊富な企業体にとってさえ経営が難しいことが伺えます。

最近では、途上国を先進国の市場化することは原理上不可能という説も出始めているようなので、「アジアのラストフロンティア」という認識は、元々無理があったのかもしれません。
以下にそうした議論のひとつをWebから引用します。
そこで先進国によってかつて徹底的に“低開発化”された途上国が先進国のかわりに成長して、先進国を下から押し上げてくれるんじゃないかという都合のよい期待が出てきました。“周辺”が“中核”になっていくという、世界システム論の視点からすればありえない矛盾したストーリーが21世紀になってもてはやされるようになったのです。
<中略>
最初は鳴物入りだったこの議論も、最近は思ったような成長発展が見られず、ずいぶんと旗色が悪くなってきています。結局、“低開発化”された“周辺”は“中核”とは異なる道を歩んでいるので、同じような成長をすることはできないのです

1年足らずで閉店したサンチャウン通りのトリンプ。日本資本であったかどうかは不明


ミャンマーへの製造業進出の切り札と見られていたティラワ工業団地も、工場建設のコストがベトナムと比較して四割程度割高で、経済合理性の観点から大規模な工場の建設に踏み切れないと伝え聞いたこともあります。

近所の友人から話を聞いたところ、最近では企業体力のない中小企業はミャンマーを去り、代わって中堅企業・大企業が長期的な展望のもとに進出を始めたとのことです。
現在のミャンマーのビジネス環境では、短期的に利益を上げるのは非常に難しいので、企業体力のある中堅企業・大企業の進出が中心となってきているのは、必然かもしれません。
ゴールドラッシュ的な射幸心に誘われてミャンマーにやって来た外国人が経済的に報われたケースは、私の知る限り見受けられません。 「アジアのラストフロンティア」としての、ミャンマー・ドリームはもう終わったのかもしれません。今や、ユーフォリア的な夢から目覚め、現実のミャンマーと向き合う時期に来ています。

これからは、企業体力のある中堅企業・大企業がミャンマー進出の主流になるのでしょうが、それだけでは寂しいので、個人起業家にも奮起してもらいたいものです。
エコツーリズムや少数民族の製造する民芸品の企画・販売等は、市場規模が小さく大手の参入する余地が少ないので、ミャンマーでは個人のビジネスチャンスのある業種ではないかと思います。開発途上国のミャンマーには、手付かずの自然や、古来からの文化や伝統を受け継ぐ少数民族が数多く残っています。
エコツーリズムの分野では、面識はありませんがこの人に注目しています。異様な行動力があるし、男気(女性だけど)もあるし。
人のことばっかり言ってないで、自分でもやらなきゃとも思いますが、現実のミャンマーを見続けているとなかなか踏み切れないのが辛いところです。

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