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2020年8月6日木曜日

東南アジア的な視点から、北九州市の活性化について考えた(2)

前回の投稿では、北九州市の気風やそれが形成された経緯について述べました。 製鉄業を中心とする重工業産業が、この街から去って久しいですが、そうした産業が隆盛だった時代の痕跡を未だに街を歩けば目にします。

たとえば、24時間営業のうどんを中心とする定食屋の「資さんうどん」や、こちらも24時間営業の海産居酒屋「磯丸水産」。



いずれも夜勤明けの工員達のために終日営業としていたのでしょうが、今も客層を変えながら同じ営業形態で続けているのは驚きです。工員向けの店だっただけあって、やたらご飯の盛りが多い。最初は、頼んだものが出てきた時に、「あれ、大盛頼んだっけ?」と途惑ったものです。
日本に全国チェーンではない、こうした地場の24時間営業の飲食店や居酒屋がある場所は、今ではそうないのではないでしょうか。

その一方で、代官山とか福岡の大名にありそうな、コーヒースタンドを備えたセレクトショップが出来ていたりします。


そうはいっても、製造業が去った後の主力産業が見つかっていない都市なので(人口減と高齢化の予測値は政令指定都市の中で一位)、街の中心地でも空きテナントが目立ちます。


製造業の撤退による人口減や高齢化、そして生産年齢人口の減少による活気のなさなどは、80年代からずっと続いてきた傾向なので、特に驚きはありません。
しかし、今回、久し振りに北九州で暮らしてみて気がついたのは、以前には見かけなかったタイプの個性的なお店や施設が増えてきていることです。

こちらは、古い長屋をリノベーションしたcomichiかわらぐちというプロジェクトです。


テナントの一つにアウトドアセレクトショップがありました。今年の6月1日に新しく入ったテナントです。



カウンターもあって飲食ができる作りになっています。店主にお話を聞いたところ、「北九州には、パタゴニアもノースフェイスもないので、自分でアウトドアショップを作りたかった。街のコミュニティ・プレイスとして機能させたい」ということです。


テナントの中には角打ちもあって、私が行った時に、ちょうど昼飲みを終えて出てきた労務者風の酩酊した初老の男性を見かけました。こうしたお店があるのも北九州らしいです。
北九州には昼飲みができるお店が多く、休日は昼からはしご酒をして、早い時間に帰って寝て、翌日の出勤に備えるという文化があるようです。これも工場労働者が沢山いた時代の名残りなのでしょう。


この物件のリノベーションを手掛けているのは、北九州家守舎という、北九州市内の遊休不動産解消の為、リノベーションを通じた街の再生、事業の創出、人材の育成をミッションとする企業体です。この物件の他にも、北九州でのリノベーション・プロジェクトを手掛けています。

これらのプロジェクトは、通常の建築案件のように、設計して、施行した完成物件を引き渡して終わるのではなく、 オーナー・設計者・テナントの3者でリノベーション費用を分担して、設計者(北九州家守舎)はオーナーから一括して借りた物件を各テナントへサブリースして、テナントからもらう賃料とオーナーに支払う賃料の差額から、建築費用を回収するという仕組みで運営されています。設計した側がリスクと責任を取る代わりに、きちんとテナントが入れば継続的に利益が得られるという仕組みです。
遊休不動産を、地場の個人事業主やクリエイターの活動の場となるようリノベーションし、物件のオーナー、設計者・仲介者(北九州家守舎)、個人事業主・クリエイター3者がそれぞれ利益を上げ、魅力的な場作りによって地域を活性化する試みです。
中央の大手資本が店舗が入居することは、オーナーにとっては魅力的ですが、そうした大手資本は地域の活性化や共同体への寄与には無関心なため、会社の求める最低限の収益性を見込めなければ出店しないし、仮に出店しても当初の収益予想が外れればすぐに撤退します。現に小倉駅前の大型商業施設は、伊勢丹が撤退した後テナントが埋まらず、建物の三分の二程度が空きテナントとなっています。人口の減少が続く北九州市のような立地では、小売業などの業種では、経済合理性だけで事業を継続するのは困難です。

北九州家守舎の存在と活動は、この会社の代表取締役の一人でもある嶋田洋平氏の著書を読んで知りました。
人口が継続的に減少して、遊休不動産が増加し続けている環境では、新築の物件を建てる社会的な意義は失われており、むしろ効果的な既存物件のリノベーションを施すことが、地域の発展、地場資本によるビジネスの活性化、地元で創業する人材の育成などに寄与するという、「建てない建築家」嶋田氏の主張と実践が紹介されています。
少子高齢化と生産年齢人口減少が進む日本の中で、処方箋の一つとなる、示唆に富む内容の本なので、そうした問題に興味のある方にはお勧めです。


ただし、いくら理念や志が素晴らしくても、現実的に実践して、運営していくのはかなり難しそうです。
複数の物件を見ていて感じたのですが、テナントのクオリティを保って、物件の価値を維持するのが難しい。最初は個性的な地場のクリエイターをテナントとして誘致して、物件の価値を向上させ、地域を刺激することができても、そのテナントが出た後に同等のクオリティの新規テナントで埋めることがなかなかできないように見えました。競争力のあるテナントは、出店してある程度目途が立つと、ネット通販に切り替えたり、東京へ進出してしまうことがあるようです。
地方だとプレイヤーの層が薄いので、個性的で魅力的なテナントとなるクリエイターや個人事業主を次々と見つけるのは簡単ではありません。かといって、収益性を重視して、一定のクオリティに達していないテナントを入居させると物件の魅力は下がるし、地域の活性化にも繋がりにくい。
そもそも生産年齢人口が縮小の一途を辿っている北九州市のような都市で、新たな候補が次々と育ってくるという予想も立てにくい。

だったら、生産年齢人口の相対的な比率が日本よりも高く、絶対数も多い東南アジアからクリエイターや個人事業主をこのようなリノベーション物件に誘致してはどうだろうというのが、本稿の趣旨です。
そのアイディアの詳細については、次回の投稿に書くことにします。

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2018年9月9日日曜日

ミャンマー初の屋内型ナイトマーケット Urban Villageが閉鎖?、それとも縮小?

ミャンマー初の屋内型ナイトマーケットとして、昨年末に鳴り物入りで開業した商業施設Uraben Villageを先日訪れたところ、建物内のそのエリアがゲートで遮られており、営業を停止していました。


ここは当初Urban86という名称で開業し、その後、Urban Villageと改称しています。
開業当初は飲食店ブースは八割方埋まっていたものの、物販ブースは最大時で三割くらいの入居率でした。集客力のあるテナントもいないためか、入場者も少なく、今年の7月時点で、飲食店スペースは九割方撤退、物販スペースのテナントはわずか3、4店という有様でした。
事業不振のため開業2ヶ月くらいで、マネジメント層の入れ替えがあったようです。
運営主体はシンガポール資本で、バンコクのナイトマーケットの運営経験のあるミャンマー人も参加していると、以前のMyanmar Timesの記事にありましたが、その間に運営主体も変わっている可能性もあります。
ミャンマーの商業活動の現況をベンチマークする施設の一つとして、定期的にここを訪れて定点観測しています。
開業当初の昨年12月の状況を当ブログに書きましたので、当時の状況にご興味があればお読みください。

今のところ完全閉鎖なのか、規模を縮小して事業継続なのかは定かではありません。
運営者のオフィスはまだ残っていましたが、残務整理のためかもしれません。


立ち上がりから上手く行かなかった要因は、いろいろと考えられますが、前回のこの施設についての投稿で述べたので、改めて触れません。
ひとつ書き加えると、運営者の説明不足や不親切さも考えられます。
数字を書いた張り紙をした展示用カートが建物の入口近くに置かれていましたが、これでは何を意味してるのか分かりません。
ここで物販する時のレンタル費なのか、それなら何日単位のレンタル費なのか、それともカートその物を販売しているのかなど。しかも同じカートなのに、置いている場所によって貼り紙の数字が異なります。


この辺の運営者の説明能力の低さや不親切さも、この施設が振るわなかった理由の一つでしょう。

ミャンマーへの観光客数も頭打ちなので、ミャンマー人、在緬外国人を問わず在住者にとって魅力的で、集客力のある商業施設でないと継続は難しかったのは確かです。

飲食スペースのビア・ステーションのカウンターだった場所

飲食スペースだった場所

物販スペースだった場所

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2017年11月2日木曜日

【無料企画書付き】サンチャウンのカフェThe rough cut物件の継続利用者募集

本ブログでも何度か紹介したサンチャウンのカフェThe rough cutが先週末をもって閉店しました。

在りし日のThe rough cut

以前の投稿
サンチャウンに完全ブルックリン仕様のカフェ&バーが出来ていた
The Rough Cutが繁盛していた~ミャンマー繁盛店の法則

サンチャウン在住の外国人ならみんな知っている有名カフェだったのですが、従業員の定着率が低かったことで、お客さんを呼び込むフードメニューが作れず、イベント開催時や週末を除き客席回転率が低かったのが理由かと思われます。とても落ち着くお店なのだけど、頼むものがコーヒーとビール以外にないという感じでした。他にも簡単なカクテルもありましたが。

共同経営者のイギリス人が手をかけてコツコツ内装を作り上げたお店なので、ある種の現代文化遺産としてサンチャウンの地に残っていて欲しいなと個人的に感じています。
オーナーとしても愛情と手間暇とお金をかけて作り上げたお店なので、できれば賃貸を継続したままサブリースしたいという意向です。
このお店は、アートや音楽や文学などのヤンゴンの文化発信基地にしたいというオーナーの個人的な志を持って作られましたが、パトロンなしの文化活動はやはり困難だったようです。しかもミャンマーのお金持ちは、文化活動のような換金性の低いものに投資したがりません。
残念ながら(と言うべきか)、夢や理想を追求するには経済的な裏付けが必要ということでしょう。特にアートや音楽や文学は、ある意味道楽なので。自分もかなり道楽気質の人間なので、人のことはあまりというかまったく言える立場ではありませんが。

そんなわけで、物件を引き継いでいただけそうな何人かにお尋ねしたのですが、なかなか今すぐ出店というわけには行かないようです。

The rough cutは良いお店でしたが、オーナーが二人とも男性だったこともあり、ちょっとマニアックで無骨過ぎる雰囲気がありました。従業員の定着率が低く、集客力・収益性のあるメニューが作れなかったこと以外に、周辺環境と馴染まないアートな雰囲気だったためローカル客が寄り付かず、客層が外国人に偏っていたことも、継続できなかった理由としてあげられます。

こうした事実を踏まえて、この物件を居抜きで借りることを検討される方のために、企画書を作成してみました。

場所はサンチャウン・ストリートから入ったミン・ストリート沿いです

この企画書の基礎となる市場背景は以下の三点です。
まず、ミャンマーには外国人が食べられる油分少なめのミャンマー料理屋が極めて少ないです。Ranggon Tea Houseなどはそのカテゴリーに入るでしょうが、プレミアムが相当乗ったお値段になっています。次に、新鮮なフルーツが手頃な価格で容易に手に入る環境にも関わらず、砂糖等の添加物抜きのフレッシュ・ジュースが清潔な環境で飲める場所もミャンマーにほとんどありません。最後に、手頃な値段で食べられる、激甘ではない美味しいスィーツもほとんどここには存在しません。今までローカル店のスィーツで、食べて美味しいと思ったのはエッグタルトのみです。
以上の三点を鑑みて、軽食・フルーツ・スィーツを主体とした、女性向けのカフェを開店してみたらどうかと企画を考えました。

上の企画書を無料で公開いたしますので、ご自由にお使いください。
また、The rough cutの物件を引き継いで何かやりたいという方はオーナーにお繋ぎしますので、お気軽にご連絡ください。もちろん、私の案と同じお店でなくても結構です。店舗ではなく、事務所として使用しても良いかと思います。
800,000MMK/月、3ヶ月分の賃料前払いが現在の条件です。
アルコールのライセンスは、営業時にはありましたが、売却したので今はついていません。
ミャンマーでは例外的に、インテリアが最初からかっこいい物件なので、内装工事の初期費用は節約できます。

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2017年1月18日水曜日

【緊急】サンチャウンで物件を探しています

私の企画した商品も置いていただいているテーラーのPrincess Tailoring Shopが現在借りている物件が、オーナー側の意向により、他の店子に貸し出すことになりました。
2月末までに退去して、新しい物件に移転しなければなりません。


Princess Tailoring Shopは、日本のNGO AAR Japanさんにより運営されています。
AAR Japanさんは、ミャンマーでは障がい者への職業訓練を施し、社会保障のないこの国で、ミャンマーの障がい者の方が経済的・社会的に自立できるよう支援しています。



Princess Tailoring Shopで働いている従業員もAAR Japanさんの職業訓練校の卒業生です。
現在の店舗があるのはサンチャウンですが 、出来るだけ現在地に近いサンチャウンで物件を探しています。
現在の家賃は、350,000MMK/月です。借りた物件は店舗と3~5名の従業員の社宅を兼ねて使用します。現在の家賃と出来るだけ乖離しない価格帯の物件を探しています。


ミャンマーの人々にとっても価値のある活動をされているNGOなので、移転先として良い不動産情報をお持ちの方がいれば、是非ご一報ください。

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2013年8月29日木曜日

【Myanmar News】不動産価格の上昇が止まらない

ミャンマーの不動産価格の上昇が続いています。
ここ一年半で、賃貸料は3倍近くになったと伝えられています。
現在のヤンゴンのダンタウンの不動産価格は、マンハッタンと同程度ということです。
不動産業者の中には、需給で価格が決まる以上、現在の不動産価格は妥当と言っている業者もいますが、当然、ポジショントークと見るべきでしょう。
電気・ガス・上下水道のインフラが未整備な上、近隣地区から得られる文化的なアメニティがほぼ皆無という環境の現在のヤンゴンの一画が、図書館・美術館等の公営施設が充実し、様々なジャンルのクラブ・書店等が文化的な刺戟や情報を与えてくれるNYCの中心地の不動産と金銭的に等価であるのは、誰もが直感的に適正ではないと感じます。
不動産価格の高騰からインフレが進行していることや、中低所得層の人々が賃貸料の上昇に悩んでいることが、ミャンマー国内で大きな問題になっているため、不動産関連のニュースはメディアにもよく登場するトピックのひとつです。
今回は不動産市場の加熱ぶりを伝える、かなり詳細な記事があったので、ご紹介します。結構長い記事なので、時間の合間を見て訳していたら4日かかりました。ご参考になれば幸いです。

『mizzima BUSINESS WEEKLY』34号 2013年8月22日号 より記事転載(原文は英文)

不動産価格上昇の憂鬱
Text by Alex Palmer and Naomi Ng


2013年5月、ヤンゴンPyay Roadにある高級住宅地Golden Valleyの一区画が1スクエア・フィート(psf)あたり972USドルで売却された。2ヶ月後に、地主が土地を二つに分け、分割された半分の土地に付けた価格は1,228USドル psfだ。
今のヤンゴンでは、この種の話にこと欠かない。近年の政治・経済の改革は、ミャンマーを国際的に孤立した国家から、アジアの有望な開拓地へとその評価を転換させ、とりわけ不動産市場へ大きなインパクトを与えた。ほんの18ヶ月前には、ヤンゴンのダウンタウンにさえ賃貸市場がほとんど存在しなかった。外国人は土地の所有や賃貸を禁じられていたし、軍部による締め付けが、この国への投資の魅力を減じていた。単に市場を形成するだけの十分な需要がなかったわけだ。
ところが昨年以来、不動産市場はにわかに活気づき、価格は高騰し、外資系企業は最高の商業地を求めて駆け回っている。ヤンゴンの不動産コンサルティング企業 Scipio Servicesのマネージング・ディレクター Brett David Millerによれば、昨年月額2,000USドルで借りられた物件が、今では通常月額8,000USドル、中には30,000USドルになっている物件もある。
今年始め、Scipio Servicesは、ミャンマーの不動産市場を分析したレポートを発行した。その調査によると、「供給の少ないビジネスタワーの商業オフィスはすぐにテナントで埋まり、2011年中頃の相場の4USドルは、2013年5月に8USドルに上昇した。こうした物件は、リフォームなし、家具なし、維持費や電気・水道等は別途請求の条件だ。にもかかわらず、賃貸物件の相場は100%近く上昇した」。
不動産市場の急速な成長は 、外資系企業が急にミャンマーに押し寄せて来たことに、多くを負っている。外国人は一年間の賃貸契約に制限されているが、外資系企業がミャンマー企業の証明を使って、ヤンゴンのダウンタウンの一等地を取得するために、ローカルパートナーと提携することはそれほど一般的でない。
香港に本拠地を置く国際企業、Chevalierグループはそうした企業のひとつだ。彼らはミャンマーのローカルパートナーと組んで、不動産開発のプロジェクトを開始するための話し合いをしているところだ。Chevalierグループのエグゼクティブ・ディレクター Horace Ma Chi Wingは、不動産価格の高騰が外資系企業にとって、どんな障害になるか、本誌に語った。
「今の相場には驚かされます。あまりにも高すぎる。商業地の高い相場を払うだけの余力のある中小企業は、そう多くありません」。
彼は、ローカル企業は、土地を提供して、外資系企業と提携すべきだと付け加えた。その見返りにChevalierグループは、建設費用に資金を投入するだろう。しかしながら、現状では、対話は止まったままだ。法外な不動産価格が原因だ。
「土地の価格について、総意を得られるかどうか分りません。もし、我々が納得できなければ、プロジェクトは頓挫するでしょう」とMaは語る。

 上昇する市場

こうしたミャンマーへの進出ラッシュは、おしよせてくる最初の波だ、とMillerは語る。
企業は、大きな投資をする前に、ミャンマーの市場をテストする。そして、この国でビジネスをする上で、安定して収益が上げられると証明できれば、もっと多くの企業が押し寄せてくるだろう。
テナント価格が一定レベルまで達し、価格上昇のスピードも下がってくるだろうが、旺盛な需要に支えられて、価格は上昇し続けるだろう。
しかしながら、価値の高い物件の売買は、ほとんどし尽くされ、高層建築向けの土地は、市場に出回た途端に買い占められている。20年以上不動産業界にいる、Myanmar Real Estate Dealsのマネジメント・ディレクター Ma Pho Phyuaは、こうした場所の価格は、2006年から政権が変わった2010年まで緩やかに上昇していた、と言う。
その後、価格は新たな高みにまで跳ね上がった。Pyay RoadのGolden Valleyは、2011年600USドルpsfだったが、今の相場は1,228USドルpsfになっている。この傾向が続くなら、テナントは別のオプションを探すことを強いられるか、価格が下がるのを期待して様子見をすることになるだろう、と彼女は言う。
すでにいくつかの業者が住居をリースし、ニーズに合うようにリノベーションを施している。Aクラスの商業スペースはあまりにも割高だからだ。より安価な商業スペースと住居が混在したビルが、街には広がっており、価格の上昇もこのような物件の供給に伴い落ち着いてくるだろう。だが、質の高い物件が不足しているため、最高の物件の価格は、これからも上昇を続けるだろう、とMillerは予測する。
Heritage Capital Investmentのマネジメント・ディレクター Olivier Dananは、高い価格は、物件の価値を考慮すれば納得がいくものだと言う。
「ずっと国交を閉じて来た第三世界なのに値段が高すぎると、みんな考えています。だが彼らは農業をするためにやって来るわけではない。将来のビジネスのポテンシャルを考慮すれば、納得のいく価格だ」と彼は言う。

ヤンゴンの歴史との価値あるリンク

多くの地主が高層ビルへの投資を望む中で、Dananは歴史的な建造物が最も価値のある投資だと見ている。Yangon Heritage Trustは、ダウンタウンの巨大なヤンゴン庁舎のような、歴史的な建造物が200棟ほど存在すると見積もっている。歴史的な建造物は、すべて19世紀後半のイギリスの植民地時代に建設されている。
「こうした建造物がヤンゴンの顔になるべきです。高層ビルなら誰でも建てられますし、ヤンゴンを香港やシンガポールのような都市にするのは誰にでもできます。我々がこれらの建造物を保存して、商業向けに転用し、高層ビルと軒を連ねることになれば、ヤンゴンは都市としてのアイデンティティーと魅力を兼ね備えることになります」。
Dananによれば、ヤンゴンの歴史的建造物の建つ土地は、5,000万USドルまで価格が上がっている。一方、歴史的な住宅は — 高層の歴史的建造物よりは小さく、目立たないものの、風格やスタイリッシュさでは負けていない — 600万USドルまで上昇している。
ヤンゴンのダウンタウンのイギリス大使館の裏にある、Strand Mansonはそうした歴史的な住居のひとつだ。Heritage Capital Investmentは、商用と居住用の両方の用途に向けて、内装やリノベーションを手掛けてきた。1平方フィートあたり最低3USドルから4USドルの料金を設定している。もっとも、Strand Mansonの一部はまだ工事中だ。物件の内部には、スコットランドから輸入した鉄製の梁を備えた、6mの壁が聳える。
「ヤンゴンは世界で最も美しい都市のひとつとして、地図に記されるでしょう。適切な処置を取れば、そうなると信じています。天然資源が豊富で、ドバイやアラブ首長国連邦と同じ道を歩む可能性があります」。
だが、Dananは、頑固で、歴史的な建造物の本当の価値を認めようとしない地主に問題があると言う。法律では、地主はYangon City Development Committee(YCDC)が構造的に不適切と見なさない限り、取り壊しが許可されない。
Dananが言うには、歴史的な建造物を所有する地主は、物件が朽ち果てるのを待っている。YCDCが不適切と宣告してしまえば、建築物を取り壊すことが出来る。そして、地主は同じ場所に高層ビルを建設する。このやり方は、極めて危うい上に、(地主にとっては)効果的だ。地主は、ヤンゴンの苛烈なモンスーン気候が引き起こす、建物劣化に感謝すべきだろう。
結局、Dananと他の歴史的な建造物の買い手は、頑迷な地主を回避する方法を採ることになる。「土地を購入する代わりに、我々は建物内の部屋を購入する。我々が建物の60%を所有すれば、建物を良好な状態に修復する権利を取得できる」。
現時点でYCDCは189棟の建物を歴史的建造物としてリストアップしている。しかし、それれらを良好な状態に維持する、法的な拘束はない。
「政府は法を制定する必要がある。そうすれば、こうした建物は保護される。地場の業者には、そういう発想がない。古い物件には、威信と美を感じさせる。これはニッチな市場だ。多くの大企業は高層ビルのペントハウスを求めている。こうした傾向は、威信と信用を望んでいるからだ。現在の価格においてさえ、歴史的な建造物は宝の山だ。リノベーションの費用もそうはかからない」。

成長する都市

市場の凄まじい拡大は、価格が暴騰している高層建築や歴史的な建造物が並び立つ、ヤンゴンの伝統的な一画にも表れている。Ma Pho Phyuaは、ヤンゴン川の南にある水田が広がる未開発地帯Dalaでは、1年前に1エーカー700USドルで取引されていた土地が、現在70,000USドルで売られている、と語る。投機がこのエリアに押し寄せているのだ。多くの地元業者が土地の購入や開発で、利益を上げようと注視している。
熱に浮かされたような不動産投機は、政府がこの一画とヤンゴンのダウンタウンを繋ぐ橋の建設を計画しているという噂が頻繁に出ることで加速している。噂が駆け巡った2009年と2010年には天井知らずの暴騰を見せたが、何も具体的なアナウンスがないと値を下げた。だが、ここに来て、政府が本当に橋の建設を計画しているという断片的なニュースが流れると、再び価格は上昇した。その結果として、Dalaの土地を所有していた農家へ、土地の購入を持ちかける業者が殺到し、売却を選んだ者には突然の大金が流れ込んだ(訳注:その後、土地価格の高騰に業を煮やしたソーテイン大臣が、現政権中には橋の建設をしないことを明言した)。
外国資本の流入が加熱する中で、とりわけ成長が著しい、電気通信、石油、天然ガス、サービス業などの産業が、不動産価格を押し上げている。それに伴い、法律事務所、投資銀行、投資組合等の、それら会社をサポートする副次的なサービスを扱う会社が進出して来ている。各国大使館や、ミャンマーでのビジネスを求める国の貿易当局も同様だ。
ミャンマーで投資先として急に土地に人気が出たのは、他の代替的な投資先がないのが一因となっている。お金は国に溢れているが、株式市場は現在のところ存在しない。通貨価値の変動が激しいため、お金を銀行に預金するのは危険だと見なされている。
政府は、ヤンゴン不動産市場の関心が、長期的な都市計画の戦略の一部となるよう図って来た。YCDCによるとヤンゴン市の人口は、2040年までに100%増加する。そして、土地や建物の開発に対する外国資本の投資は、1,000万人が住む都市へ拡大する上で欠かせない。
政府はヤンゴン周辺に経済特区を計画しており、Millerによれば、ミャンマーに進出した様々な国の企業が、このエリアに強い関心を示している。信頼性の高い電力や他のインフラがこの国には大きく欠けているが、政府のヤンゴンにおける経済特区の開発への強い関与は、外国企業の信頼を得ることに繋がる。

未来のヤンゴン

Cheavalierグループのエグゼクティブ・ディレクターのMaは、政府がヤンゴンの開発に対して、未来を見据えた、柔軟な姿勢で取組むべきだと言う意見に同意する。彼は今の状況を、中国の最も重要な経済的なハブの一つ、珠江デルタに位置する東莞の20、30年前に例える。
東莞は、道路も電力供給も適切な下水施設も存在しなかった。政府はデベロッパーへ無償で土地を提供し、デベロッパーはインフラを自分達のコストで建設した。その見返りとして、数年後、デベロッパーは3分の1の土地を所有することが出来た。
ヤンゴンへの投資に対する需要が高まっているのは疑いがない。しかし供給が極めて限られている。Maは、もし政府がデベロッパーに土地を供与することで、市場が十分な土地を利用することが可能なら、不動産価格は、たちまち適切な水準へ落ち着くだろうと考えている。
「この方法は、中国では一般的です。政府が、十分な開発資金を持ち合わせないなら、デベロッパーが対処する、そうすれば、たちまち新しい開発区が拓かれる」と彼は付け加えた。
Maは、ミャンマーの開発ペースは中国よりも早くなると予測する。ミャンマーは他国からのベストプラクティスを採用できるからだ。ミャンマーの6,000万人近い人口という、恵まれた優位性もある。 
「我々は懸念しているものの、ミャンマーの未来に対して楽観的です。2、3年以内に政治的に安定が維持できるとはっきりすれば、さらに多くの外資系企業が、参入したいとやって来るでしょう」。
ヤンゴンの急速な成長と開発は、何をもたらすのだろう?「バンコクの高層ビル群を見てください。そして、ここミャンマーの空を眺めれば、この業界に我々が感じている興奮がお分かりでしょう」とMillerは語る。たった18ヶ月前まで不動産市場が存在しなかった都市が持ちうる可能性が、投資家達と住人達を同様に引き寄せている。

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