2013年8月29日木曜日

【Myanmar News】不動産価格の上昇が止まらない

ミャンマーの不動産価格の上昇が続いています。
ここ一年半で、賃貸料は3倍近くになったと伝えられています。
現在のヤンゴンのダンタウンの不動産価格は、マンハッタンと同程度ということです。
不動産業者の中には、需給で価格が決まる以上、現在の不動産価格は妥当と言っている業者もいますが、当然、ポジショントークと見るべきでしょう。
電気・ガス・上下水道のインフラが未整備な上、近隣地区から得られる文化的なアメニティがほぼ皆無という環境の現在のヤンゴンの一画が、図書館・美術館等の公営施設が充実し、様々なジャンルのクラブ・書店等が文化的な刺戟や情報を与えてくれるNYCの中心地の不動産と金銭的に等価であるのは、誰もが直感的に適正ではないと感じます。
不動産価格の高騰からインフレが進行していることや、中低所得層の人々が賃貸料の上昇に悩んでいることが、ミャンマー国内で大きな問題になっているため、不動産関連のニュースはメディアにもよく登場するトピックのひとつです。
今回は不動産市場の加熱ぶりを伝える、かなり詳細な記事があったので、ご紹介します。結構長い記事なので、時間の合間を見て訳していたら4日かかりました。ご参考になれば幸いです。

『mizzima BUSINESS WEEKLY』34号 2013年8月22日号 より記事転載(原文は英文)

不動産価格上昇の憂鬱
Text by Alex Palmer and Naomi Ng


2013年5月、ヤンゴンPyay Roadにある高級住宅地Golden Valleyの一区画が1スクエア・フィート(psf)あたり972USドルで売却された。2ヶ月後に、地主が土地を二つに分け、分割された半分の土地に付けた価格は1,228USドル psfだ。
今のヤンゴンでは、この種の話にこと欠かない。近年の政治・経済の改革は、ミャンマーを国際的に孤立した国家から、アジアの有望な開拓地へとその評価を転換させ、とりわけ不動産市場へ大きなインパクトを与えた。ほんの18ヶ月前には、ヤンゴンのダウンタウンにさえ賃貸市場がほとんど存在しなかった。外国人は土地の所有や賃貸を禁じられていたし、軍部による締め付けが、この国への投資の魅力を減じていた。単に市場を形成するだけの十分な需要がなかったわけだ。
ところが昨年以来、不動産市場はにわかに活気づき、価格は高騰し、外資系企業は最高の商業地を求めて駆け回っている。ヤンゴンの不動産コンサルティング企業 Scipio Servicesのマネージング・ディレクター Brett David Millerによれば、昨年月額2,000USドルで借りられた物件が、今では通常月額8,000USドル、中には30,000USドルになっている物件もある。
今年始め、Scipio Servicesは、ミャンマーの不動産市場を分析したレポートを発行した。その調査によると、「供給の少ないビジネスタワーの商業オフィスはすぐにテナントで埋まり、2011年中頃の相場の4USドルは、2013年5月に8USドルに上昇した。こうした物件は、リフォームなし、家具なし、維持費や電気・水道等は別途請求の条件だ。にもかかわらず、賃貸物件の相場は100%近く上昇した」。
不動産市場の急速な成長は 、外資系企業が急にミャンマーに押し寄せて来たことに、多くを負っている。外国人は一年間の賃貸契約に制限されているが、外資系企業がミャンマー企業の証明を使って、ヤンゴンのダウンタウンの一等地を取得するために、ローカルパートナーと提携することはそれほど一般的でない。
香港に本拠地を置く国際企業、Chevalierグループはそうした企業のひとつだ。彼らはミャンマーのローカルパートナーと組んで、不動産開発のプロジェクトを開始するための話し合いをしているところだ。Chevalierグループのエグゼクティブ・ディレクター Horace Ma Chi Wingは、不動産価格の高騰が外資系企業にとって、どんな障害になるか、本誌に語った。
「今の相場には驚かされます。あまりにも高すぎる。商業地の高い相場を払うだけの余力のある中小企業は、そう多くありません」。
彼は、ローカル企業は、土地を提供して、外資系企業と提携すべきだと付け加えた。その見返りにChevalierグループは、建設費用に資金を投入するだろう。しかしながら、現状では、対話は止まったままだ。法外な不動産価格が原因だ。
「土地の価格について、総意を得られるかどうか分りません。もし、我々が納得できなければ、プロジェクトは頓挫するでしょう」とMaは語る。

 上昇する市場

こうしたミャンマーへの進出ラッシュは、おしよせてくる最初の波だ、とMillerは語る。
企業は、大きな投資をする前に、ミャンマーの市場をテストする。そして、この国でビジネスをする上で、安定して収益が上げられると証明できれば、もっと多くの企業が押し寄せてくるだろう。
テナント価格が一定レベルまで達し、価格上昇のスピードも下がってくるだろうが、旺盛な需要に支えられて、価格は上昇し続けるだろう。
しかしながら、価値の高い物件の売買は、ほとんどし尽くされ、高層建築向けの土地は、市場に出回た途端に買い占められている。20年以上不動産業界にいる、Myanmar Real Estate Dealsのマネジメント・ディレクター Ma Pho Phyuaは、こうした場所の価格は、2006年から政権が変わった2010年まで緩やかに上昇していた、と言う。
その後、価格は新たな高みにまで跳ね上がった。Pyay RoadのGolden Valleyは、2011年600USドルpsfだったが、今の相場は1,228USドルpsfになっている。この傾向が続くなら、テナントは別のオプションを探すことを強いられるか、価格が下がるのを期待して様子見をすることになるだろう、と彼女は言う。
すでにいくつかの業者が住居をリースし、ニーズに合うようにリノベーションを施している。Aクラスの商業スペースはあまりにも割高だからだ。より安価な商業スペースと住居が混在したビルが、街には広がっており、価格の上昇もこのような物件の供給に伴い落ち着いてくるだろう。だが、質の高い物件が不足しているため、最高の物件の価格は、これからも上昇を続けるだろう、とMillerは予測する。
Heritage Capital Investmentのマネジメント・ディレクター Olivier Dananは、高い価格は、物件の価値を考慮すれば納得がいくものだと言う。
「ずっと国交を閉じて来た第三世界なのに値段が高すぎると、みんな考えています。だが彼らは農業をするためにやって来るわけではない。将来のビジネスのポテンシャルを考慮すれば、納得のいく価格だ」と彼は言う。

ヤンゴンの歴史との価値あるリンク

多くの地主が高層ビルへの投資を望む中で、Dananは歴史的な建造物が最も価値のある投資だと見ている。Yangon Heritage Trustは、ダウンタウンの巨大なヤンゴン庁舎のような、歴史的な建造物が200棟ほど存在すると見積もっている。歴史的な建造物は、すべて19世紀後半のイギリスの植民地時代に建設されている。
「こうした建造物がヤンゴンの顔になるべきです。高層ビルなら誰でも建てられますし、ヤンゴンを香港やシンガポールのような都市にするのは誰にでもできます。我々がこれらの建造物を保存して、商業向けに転用し、高層ビルと軒を連ねることになれば、ヤンゴンは都市としてのアイデンティティーと魅力を兼ね備えることになります」。
Dananによれば、ヤンゴンの歴史的建造物の建つ土地は、5,000万USドルまで価格が上がっている。一方、歴史的な住宅は — 高層の歴史的建造物よりは小さく、目立たないものの、風格やスタイリッシュさでは負けていない — 600万USドルまで上昇している。
ヤンゴンのダウンタウンのイギリス大使館の裏にある、Strand Mansonはそうした歴史的な住居のひとつだ。Heritage Capital Investmentは、商用と居住用の両方の用途に向けて、内装やリノベーションを手掛けてきた。1平方フィートあたり最低3USドルから4USドルの料金を設定している。もっとも、Strand Mansonの一部はまだ工事中だ。物件の内部には、スコットランドから輸入した鉄製の梁を備えた、6mの壁が聳える。
「ヤンゴンは世界で最も美しい都市のひとつとして、地図に記されるでしょう。適切な処置を取れば、そうなると信じています。天然資源が豊富で、ドバイやアラブ首長国連邦と同じ道を歩む可能性があります」。
だが、Dananは、頑固で、歴史的な建造物の本当の価値を認めようとしない地主に問題があると言う。法律では、地主はYangon City Development Committee(YCDC)が構造的に不適切と見なさない限り、取り壊しが許可されない。
Dananが言うには、歴史的な建造物を所有する地主は、物件が朽ち果てるのを待っている。YCDCが不適切と宣告してしまえば、建築物を取り壊すことが出来る。そして、地主は同じ場所に高層ビルを建設する。このやり方は、極めて危うい上に、(地主にとっては)効果的だ。地主は、ヤンゴンの苛烈なモンスーン気候が引き起こす、建物劣化に感謝すべきだろう。
結局、Dananと他の歴史的な建造物の買い手は、頑迷な地主を回避する方法を採ることになる。「土地を購入する代わりに、我々は建物内の部屋を購入する。我々が建物の60%を所有すれば、建物を良好な状態に修復する権利を取得できる」。
現時点でYCDCは189棟の建物を歴史的建造物としてリストアップしている。しかし、それれらを良好な状態に維持する、法的な拘束はない。
「政府は法を制定する必要がある。そうすれば、こうした建物は保護される。地場の業者には、そういう発想がない。古い物件には、威信と美を感じさせる。これはニッチな市場だ。多くの大企業は高層ビルのペントハウスを求めている。こうした傾向は、威信と信用を望んでいるからだ。現在の価格においてさえ、歴史的な建造物は宝の山だ。リノベーションの費用もそうはかからない」。

成長する都市

市場の凄まじい拡大は、価格が暴騰している高層建築や歴史的な建造物が並び立つ、ヤンゴンの伝統的な一画にも表れている。Ma Pho Phyuaは、ヤンゴン川の南にある水田が広がる未開発地帯Dalaでは、1年前に1エーカー700USドルで取引されていた土地が、現在70,000USドルで売られている、と語る。投機がこのエリアに押し寄せているのだ。多くの地元業者が土地の購入や開発で、利益を上げようと注視している。
熱に浮かされたような不動産投機は、政府がこの一画とヤンゴンのダウンタウンを繋ぐ橋の建設を計画しているという噂が頻繁に出ることで加速している。噂が駆け巡った2009年と2010年には天井知らずの暴騰を見せたが、何も具体的なアナウンスがないと値を下げた。だが、ここに来て、政府が本当に橋の建設を計画しているという断片的なニュースが流れると、再び価格は上昇した。その結果として、Dalaの土地を所有していた農家へ、土地の購入を持ちかける業者が殺到し、売却を選んだ者には突然の大金が流れ込んだ(訳注:その後、土地価格の高騰に業を煮やしたソーテイン大臣が、現政権中には橋の建設をしないことを明言した)。
外国資本の流入が加熱する中で、とりわけ成長が著しい、電気通信、石油、天然ガス、サービス業などの産業が、不動産価格を押し上げている。それに伴い、法律事務所、投資銀行、投資組合等の、それら会社をサポートする副次的なサービスを扱う会社が進出して来ている。各国大使館や、ミャンマーでのビジネスを求める国の貿易当局も同様だ。
ミャンマーで投資先として急に土地に人気が出たのは、他の代替的な投資先がないのが一因となっている。お金は国に溢れているが、株式市場は現在のところ存在しない。通貨価値の変動が激しいため、お金を銀行に預金するのは危険だと見なされている。
政府は、ヤンゴン不動産市場の関心が、長期的な都市計画の戦略の一部となるよう図って来た。YCDCによるとヤンゴン市の人口は、2040年までに100%増加する。そして、土地や建物の開発に対する外国資本の投資は、1,000万人が住む都市へ拡大する上で欠かせない。
政府はヤンゴン周辺に経済特区を計画しており、Millerによれば、ミャンマーに進出した様々な国の企業が、このエリアに強い関心を示している。信頼性の高い電力や他のインフラがこの国には大きく欠けているが、政府のヤンゴンにおける経済特区の開発への強い関与は、外国企業の信頼を得ることに繋がる。

未来のヤンゴン

Cheavalierグループのエグゼクティブ・ディレクターのMaは、政府がヤンゴンの開発に対して、未来を見据えた、柔軟な姿勢で取組むべきだと言う意見に同意する。彼は今の状況を、中国の最も重要な経済的なハブの一つ、珠江デルタに位置する東莞の20、30年前に例える。
東莞は、道路も電力供給も適切な下水施設も存在しなかった。政府はデベロッパーへ無償で土地を提供し、デベロッパーはインフラを自分達のコストで建設した。その見返りとして、数年後、デベロッパーは3分の1の土地を所有することが出来た。
ヤンゴンへの投資に対する需要が高まっているのは疑いがない。しかし供給が極めて限られている。Maは、もし政府がデベロッパーに土地を供与することで、市場が十分な土地を利用することが可能なら、不動産価格は、たちまち適切な水準へ落ち着くだろうと考えている。
「この方法は、中国では一般的です。政府が、十分な開発資金を持ち合わせないなら、デベロッパーが対処する、そうすれば、たちまち新しい開発区が拓かれる」と彼は付け加えた。
Maは、ミャンマーの開発ペースは中国よりも早くなると予測する。ミャンマーは他国からのベストプラクティスを採用できるからだ。ミャンマーの6,000万人近い人口という、恵まれた優位性もある。 
「我々は懸念しているものの、ミャンマーの未来に対して楽観的です。2、3年以内に政治的に安定が維持できるとはっきりすれば、さらに多くの外資系企業が、参入したいとやって来るでしょう」。
ヤンゴンの急速な成長と開発は、何をもたらすのだろう?「バンコクの高層ビル群を見てください。そして、ここミャンマーの空を眺めれば、この業界に我々が感じている興奮がお分かりでしょう」とMillerは語る。たった18ヶ月前まで不動産市場が存在しなかった都市が持ちうる可能性が、投資家達と住人達を同様に引き寄せている。

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