2017年4月14日金曜日

チェンマイの本屋でミャンマーの書籍文化を考えた〜古本編

前回は、チェンマイとミャンマーの新刊書店を比較して、両者の文化や環境の違いついて考察しましたが、今回は古本について同様の試みを行います。

旅行者が集まる、チェンマイの旧市街エリアに店を構える2軒の古本屋に行ってきました。
まずはGEKKOという古本屋。店先で本を読むストームトルーパーが目印です。


スターウォーズのキャラクターが店の前にいるだけあって、SF関係の古本が充実していました。SF専用の本棚があります。


ハヤカワSF文庫の青背の本は、ずいぶん中高生の頃に読みましたが、カート・ヴォネガットと並び最もハマっていた作家フィリップ・K・ディックのストックも充実していました。まさか、こんなおっさんになって東南アジアの古本屋でこれらの著作と再会するとは思わなかった。

次ぎに行ったのは、On The Roadという古本屋。


もちろんジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード (河出文庫)』からのネーミングでしょう。店内には棚にも、平積みにも同著作がありました。カオサンでもこの本は古本屋でよく見かけるので、バックパッカーのバイブルみたいな本なのでしょう。たしかに何の目的も生産性もなく、ひたすら移動するだけの話だし。




ここにもフィリップ・K・ディックの古本が置いていました。また、カート・ヴォネガットも結構揃っていました。他に目についたのは、ブレット・イーストン・エリスとニック・ホーンビーの著作です。アメリカで、エリスと同じ時期に作家デビューしたジェイ・マキナニーはいつの間にかフェードアウトしましたが、エリスはまだ読み継がれているのかな? 二人とも「ニューロスト・ジェネレーション」というくくりの中で登場した作家で、このムーブメントを代表する作家がエリスとマキナニーでした。古本屋の棚から、 どの作家がアクチュアルな文学的な価値を有しているのか推測するのも楽しいです。

また、この古本屋は音楽関係の古本が充実しています。デヴィッド・ボウイやマイルス・デイヴィスの伝記など良い本がたくさんありました。
2010年度全米図書賞受賞のパティ・スミスの自伝『ジャスト・キッズ』を見つけたので購入。



この古本屋は品揃えとセレクションのレベルが高いのでお勧めです。店主は偏屈そうな白人のおっさんで写真を撮ってたら「ここは撮影禁止だから」と怒られましたが(笑)。

カオサンの古本屋もそうですが、バックパッカーを含む旅行者や外国人居住者が多い場所柄、商品の入れ替えが頻繁なので、いま旅行者や外国人居住者がどんな本を読んでいるのかが、古本屋の棚から見て取れるところが面白いです。どの作家の作品が、アクチャリティを持って受けとめられているのかも推測できます。
ミャンマーはまだまだ旅行者や外国人居住者が少ないためか、品揃えとセレクションが充実した古本屋はありません。また、古本自体も内容が古過ぎて、どの作家が人気があるのかや、どんな本がアクチャリティを持って受けとめられているのかを、そこから読み取ることもできません。路上に敷いたゴザの上に置いている本でよく見かけるのは、ダイアナ妃の伝記本と、いつの時代かわからないヴァージョンのWindowsのガイドブックですから。

もちろんミャンマーでも近年増えつつある外国人居住者が現在の文化状況に満足しているとは考えられないので、いつかはきちんとしたセレクションの古本屋もできるでしょう。
ただ、ヤンゴンで空港を除く街場で、唯一の洋書の新刊を売っていたMonument Booksが、最近閉店したので、事態は一進一退といったところでしょうか。
個人的には、ちゃんとした文学的な価値のある本を揃えたブックカフェを作れればいいなと思います。
サードウェーブ・カフェ、クラフトビール、本屋などミャンマーには、まだまだ足りないものが沢山あるので、経済合理性を超えたパイオニア精神や、ミャンマーに新しい文化を根付かせる使命感を持った人が、ミャンマーに来ることを願います。

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