2013年7月29日月曜日

【続き】ミャンマーでのネットビジネスの可能性(2)

前回の投稿の続きです。
先月の6月27日に発表された、ミャンマーの携帯電話事業の入札結果については、いろいろと裏を憶測する向きもありますが、選考過程は概ね公平・透明に運営されたのではないかと思ってます。
個人的には、選考委員会に提出した事業計画書の投資規模が決め手になったと感じています。
今回選ばれた二社(ノルウェイのTelnorとカタールのOoredoo)が提示した投資計画の金額は、日系の通信会社が提示した金額の6倍以上だったと関係者の間で囁かれています。共に約1兆円規模をこの国の通信事業に投資する計画は、日本政府が債権放棄した5,000億円を遥かに越える金額です。選ばれた二社が今回の入札に賭ける意気込みと覚悟を感じさせますね。
もうひとつ考えられる要因は、多くの日系大企業でありがちのことです。決定権を持っている職責の有職者が積極的にコミットしていなかったと思われます。現地に来て活動するのが課長や課長代理クラスの社員なので、満足なロビイングが出来ない。他の外資系企業では、全権委任を受けた役員クラスが、現地で陣頭指揮を執るのが一般的です。現地での広報活動に、いちいち本社にお伺いを立てないと動けないのでは、熾烈なロビイング競争を勝ち抜くのは難しいです。また、中間管理職クラスの役職者では、ミャンマーの担当大臣にお目もじするのは不可能でしょう。
それでは、記事の続きです。

『mizzima BUSINESS WEEKLY』30号 2013年7月25日号 より記事転載(原文は英文) 
 ミャンマーのネット難民(後編)
ソーシャルメディアは、負の側面を乗り越えて、ミャンマーのコミュニケーションを変えるか?
Text by Cate Cadell 



eコマースという選択肢
途上国で、オンライン販売のトレンドを予測することは難しい。
Squarのチームは、他の企業と同様に、銀行システムが機能していない現状を予測するために近隣のベトナムや中国のモデルを参考にしている。
「eコマースの見通しは明るいです。中国では通常の銀行振込は全体の僅か20%ですが、eコマースや電子決済は数百億円規模になります」Ritaは語る。
ミャンマーのオンライン消費市場にとってポジティブな指標は、中国の先行事例だけではない。オンライン・ゲーム雑誌をミャンマーで発行する業界のリーダーMMgamers.comの創業者Waye Tun Myintは、毎日10,000人を越えるローカル・ユーザがWorld of Warcraftをプレイするために、プロクシーサイトにアクセスすると語る。
「問題はお金ではなく、ネット接続環境です。私はいつも、たとえ第三世界の住人でも、やっぱりダイヤモンドとゴールドは好きだよと言ってます。ここでもみんなゲームにたっぷりお金を使うと断言できます」とWaye。
今のところWorld of Warcraftは国内でブロックされている。つまりユーザは、ミャンマーでのみアクセスできる7つの海賊サーバにアクセスしている。ユーザはたとえお金を払いたくても、払うことはできない。ミャンマーの銀行システムは、オンライン決済をサポートしていないからだ。「ユーザは30時間無料でプレイし、それからアクセス先のサーバを変えます」。
ネット接続の環境は、増加するオンライン・ゲーマーとって最大の問題だ。そもそも、World of Warcraftは比較的使用する帯域が少ないから普及した。「お金を持っているユーザにとっては、ネット環境が悪いことが制約になっている」Wayeは言う。「ヤンゴンのミャンマーITCパーク(訳注:IT開発企業があるミャンマーを代表するIT開発拠点)へ事務所を置いているが、それでも接続状態は良くない」。 

規制の下で
ネットの接続環境が改善されたとしても、オンライン・ゲームが他国から孤立しているという問題がある。これはミャンマーのソーシャル・メディア共通の問題だ。
「プライベート・サーバでは、我々はミャンマー国内のユーザとだけ対戦できる。選択肢は他にない」とWayeは言う。 政府規制をかい潜る代償に、ユーザは国外のサーバではプレイできず、ミャンマー国内の限られたユーザを対象にするしかない。Wayeによれば「我々の多くは海外のゲーマと腕試しをしたいが、その方法がない」。
 スタートアップ企業やネチズンが、政府による入札で事業権を得たTelenorやOoredooといった大企業がミャンマーの通信市場へ信認を示したことに勇気づけられている。 この二社は9社間で争った最終選考を制し、一般的に疑念をもたれている市場へ、驚くほど大胆な投資を表明している。電気通信事業法が未だ成立していないにも関わらず、二社は数百億のインフラ投資計画を大胆にも実行しようとしている。
「法規制の大枠さえ存在しないところに、政府が事業認可を出したことは大きな懸念事項だ」ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア地区ディレクター副理事Phil Robertsonは指摘する。「今回この二社は、非常に大きなリスクを取ったことになる」。「彼らは携帯電話利用者の使用状況について、政府が求める監視、検閲へ協力することを求められるだろうが、それは個人情報を保護する会社の方針と相容れないはずだ」。
World of Warcraftのようなプラットフォームで監視と規制が適用される一方、ミャンマーではインターネットが比較的新しいことが有利となっている業者もいる。
「私達は政府と交渉したことはありません」Ritaは語る。「当面のあいだ規模が小さいため、その必要はなさそうです」。
「それと同じで、今のところみんな気楽にネットで好きなことを書いている。彼らは政府について、考えが及んでいない。彼らは、私に20年の実刑を言い渡した法律がまだ生きているのを考えていないみたいだ」とはNay Phone Lattの発言だ

ヘイトスピーチの問題
これからは、ソーシャルメディアに対して、政府機関の関わりが強化されることが予測される。だが、政府による監視が、規制の中に盛り込まれるかどうかはまだ分らない。
先月、ヘイトスピーチ防止のワークショップが、アメリカ大使館で開催された際、情報省副大臣のYe Htutは「政府は検閲の再開は考えていないが、法を犯す者を抑止する用意はある」と語った。現在のオンライン上の活動を禁じるミャンマーの法律は、2004年に制定された。
政府はソーシャルメディア対策の不備を取りざたされることを懸念している。最近の仏教徒とイスラム教徒との衝突が起こった時には、一部で批判が声が上がった。Ye Htutは、政府はオンラインでの通報システムを確立する意思があると語った。「有害な情報」を発見した場合は、政府により監視される。
「検閲で問題視されるのは、政治的な信条よりも、Webサイト上のセックスやポルノ的な情報に関連したモラルの問題だ」 ANUカレッジ・オブ・アジア・アンド・パシフィックの博士号取得候補者のDavid Gilbertは解説する。「モラルの問題に関する規制と検閲が緩和されるサインはない」。
「これからの規制と検閲は、新しく、より洗練させた方法が取られるだろう。時期が来れば、政府はアメリカのブルーコート・システムのような、先進的な検閲技術を採用するだろう」とDavidは語る。
「今の政府は少しばかり、迫り来る車のヘッドライトを見つめる大鹿みたいに見える。立ち止まったまま、それが何だかも分っていない」ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア地区ディレクター副理事Phil Robertsonは言う。「インターネットの規制に関して、ミャンマーが見習うべきベスト・プラクティスはある。しかし政府は今のところ、こうした概念が理解できていないようだ」。
政府がスピーチとヘイトスピーチの線引きが上手くやれれば、投資家とネチズンはミャンマーのインターネット・ユーザのアクセス先を増やし続けることだろう。
「Twitterでミャンマーのハッシュタグを見ると、みんな"CNN"か"Time"かミャンマーの問題に関する話題なの。でも私達には、語るべきもっといい話題があるはずだわ」Ritaは言う。「私達はプロパガンダのための機械を作る訳じゃない。ミャンマーの若い人が発言できる機会を作りたいの」。

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