2013年6月25日火曜日

【Myanmar News】ミャンマーの人材問題

ミャンマーの投資環境の問題点として、ニュースメディアで常にあげられるのは、貧弱なインフラ設備です。
たしかに電気の供給は不安定で乾期は毎日のように停電があります。道路もある程度整備されているのは、ヤンゴン市内のみです。排水設備が整った空きの工場用地もありません。
これらの問題は、在住者でなくとも簡単にわかるので取り上げられやすいのでしょう。
これに加えて、ある程度の期間をミャンマーで過ごしたことが人ならば、誰もがインフラの未整備に勝るとも劣らない問題があるのを知っています。
人的資本の問題です。
工業化・産業化を発展させるためには、一定の水準に達した均質な労働力を安定的に供給する労働市場が必要となりますが、ミャンマーにはそうした労働市場は存在しません。
ミャンマー投資の魅力を語る枕詞に、「仏教徒が大多数を占め真面目で勤勉」、「石油、天然ガス、鉱物を産出する、豊かな天然資源」、「6000万の人口を擁する豊富な労働市場」、日本のメディアだとこれに加えて「親日的」と続くわけですが、必ずしも正確な表現とは言えません。
「真面目」と「勤勉」がこの国では別の概念であることは、以前このブログに書きました。
「豊かな天然資源」はその通りとして、「親日的」も文化的には、韓国のエンターテイメントのソフトパワーの影響下にあり、日本に対するイメージは市場の95%以上を占める日本車くらいしかないと思いますが、ここでは関係ないので触れません。
特に再考の余地があるのが「豊富な労働市場」です。
労働市場については、求職人口は多いものの、工場やオフィスを稼働するのに必要な、一定レベルの問題解決能力や事務処理能力を持つ人材が極端に不足しています。
マッキンゼーの調査によると、「2030年までに、その時の経済規模を考えた場合、それなりのスキルを備えた人の不足分は1300万人」と試算しています。

数字をあげられても実感が湧かないと思いますので、日常的に私が体験していることを以下に列記します。

(1)ホッチキスで角を留めた資料のコピーを頼む--->返って来たのはホッチキスを外さないまま、無理矢理、コピー機に当てたため折り目だらけ原本
頼んだコピーも、当然ななめにズレていて、正常に読める状態とは言い難い。

仕事の完成度や精度といった概念を教わったことも、要求されたこともないので、注意しても何が問題になったのかが分らないようです。

(2)いつも空港でのお客様の送迎の手配を頼んでいるスタッフに、「今度来るお客様の予定ね」と旅程表を渡す--->渡したのは「いつものように、お客様を送迎する車両の手配をしてね」という意図だったのですが、まったく伝わっておらず。したがって、当日になっても何も用意がされていない。

気を回すとか、メッセージの意味を読み取るという習慣がないので、「何月・何日・何時に、○○空港行きの車を○台手配してね」と明示的に伝えないと、こちらの要求することが理解されない。


 まだまだありますが、切りがないので止めときます。

彼らの名誉のために書き添えると、彼らはミャンマーの大学卒業者で、進学率の観点から見ても上位10%の教育を受けた選良です。
「廉価な労働力」を期待して、労働集約的な分野で、彼らのような高等教育を受けていない人々を雇用して工場等を稼働すれば、彼らをマネジメントする何倍もの労力が必要になるでしょう。
最近のミャンマーに関する報道で、人材の質と教育の必要性について言及されることが多くなったのは、実際にミャンマーに駐在所や支店を開設した外国人ビジネスパーソンが現地で採用活動をした結果、人的資本の脆弱さが多くの人々に知られることになったからでしょう。
もちろん、これはこの国に住む善男善女の皆さんの責任ではありません。
1962年以来、ほぼ鎖国状態を貫いていた上、1988年に学生を中心とする大規模な民主化運動が起こった際には、当時の軍事政権が反体制運動の再燃を防ぐため、教育レベルを意図的に下げ、学生が物事を考えないように教育制度を誘導してきました。
こうした、長きにわたる教育システムの結果として、今の人材不足は生じています。
今では、教育制度の改革は、この国への投資を考える外資系企業にとっても、この国自身の発展にとっても、最も大きな課題のひとつであるという共通認識に達しているようです。

今回は、ミャンマーの未来予測について、「教育」についての部分を抜粋しました。
その他、「政治」、「経済」、「環境」などのトピックについて論じられいますが、それらすべての根幹を成す、最も重要な問題が教育ではないかと思います。

『mizzima BUSINESS WEEKLY』25号 2013年6月20日号 より記事転載(原文は英文)

ミャンマーの未来予測
世界経済フォーラム東アジア会議(WEF:World Economic Forum on East Asia)が終わった今、ミャンマーが成すべきこと
Text by Theodore Cleph 



教育環境について

明るい見通し
ミャンマーの学生たちにとって、80年代、90年代は学校が開いていたとしても困難な時期だった。この時代、学生たちは民主化運動の中でも大きな影響力のあるグループを形成した。国境付近まで逃走したグループは、反政府勢力とも手を組み、しばしば武装化した勢力の中心にもなった。権力側は、過去の歴史を繰り返すように、激しくこれを弾圧した。大学は閉鎖され、再開したときには、ヤンゴン市内のいくつかの大学は、反政府勢力の組織化を阻むため、郊外へと移転させられた。大規模な民主化運動があった1988年に先立つ数十年においてさえ、権力側が設定した慣行が支配的なルールであり、教育現場では当然のように政治的な教化がなされていた。政府への忠誠心を計るためのアンケートも実施されていた。
それも今は昔。今では、ミャンマーは、数世代にわたり続いた教育の空白をとりもどそうとしている。ミャンマー政府は教育改革を、人的資本の底上げを喫緊の課題としている大統領の強力な意思のもと、押し進めようとしている。アウン・サン・スーチー女史は、英国がミャンマーの大学教育の改革を支援するという提案に同意している。ミャンマーの教育予算は劇的に増え、専門知識を持った海外に在住しているミャンマー人も、祖国の復興のため帰国し始めている。
改革の課程において、個人の意識はより前向きになった。外国語を学ぼうとするミャンマー人にとって、職業選択の可能性が広がったからだ。語学学校が都市部では急増し、英語、中国語、日本語、韓国語、お望みならどんな言語でも学ぶことができる。Linux、サーバーネットワーク、MySQL、それともウェッブデザイン?お金と時間があれば、学ぶのは難しくない。そして、昨今では、都市部の家庭は教育資金も持ち合わせている。もっと豊かな家庭では、海外に留学するという方法もある。

先行き不透明

経済環境については、道路の補修、安定した電力供給といった物的なインフラ設備が整備される間だけ、大規模な資金が投下されそうだ。教育部門は、ローマが一日にしてならなかったように、短期間での立て直しは不可能だ。教育改革は時間がかかり、困難な課題であるだけではなく、人的資本への資金と投資が必要となる。単純な例として、教師の再教育も十分ではない。また、政策担当者は、学校側へこれまで以上に管理と運営について支援する必要がある。学校設備は、近年発達した情報技術が利用できるように更改される必要もある。教科書にいたっては、信じがたいほど時代遅れなものが使われている。
プラスの面としては、教育改革の必要性を誰もが認識し、やるべきことに熱心に取組んでいることだ。質の高い教育システムという目的地へは道半ばだとしても、誰もがそれに関心を持ち、そちらに向かって進もうとしている。
  

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