2018年8月10日金曜日

ヤンゴンであった不思議な話

昨日の朝、先月作ったショッピング・サイトに、オンライン経由で初めて注文がありました。販売した商品は、シャン州の生地を使ったチュニック・ドレスです。
新商品としてサイトに登録した10分後くらいに、この商品へ注文が入りました。
登録の前日に出来上がりを見て、ちょっとカラーを攻め過ぎたかな、これは客を選ぶかもと思っていたところでした。



自分で作っておいて言うのも何ですが、個人が立ち上げたこんなマイナーな自作サイトで、しかもオンラインショッピングが一般的ではないミャンマーで、誰が買うのだろう?、と不思議に感じました。注文者の名前からすると、ミャンマー人の方のようです。
ともかく注文情報の中にあったメールアドレスへ連絡して、配達先の住所と配達日時を聞きました。ミャンマーでは、Yangon Connectionなどの情報交換サイトで物品販売の情報を掲載して、買うという意思表示があっても、実際には連絡してきた買い主が現れなかったというケースをよく聞きます。そんな事情もあり、ちゃんと返事が来るのかな、と訝ってましたが、普通に回答が返ってきました。
注文当日の午後に配達に行くことにして、指定された場所に向かいました。
まず、その場所に着いて当惑しました。
そこには、高さ4mくらいの威圧的な鉄扉が聳え立つ、巨大な門がありました。門の内側の敷地は、幅10mくらいのドライブウェイが上へと続いており、ドライブウェイが大きく右にカーブして視界を遮っているため、その先に何があるのかまったく見えません。
しばらくその前に佇んでましたが、見る限り、人の気配もありません。
これどうやって中に入るんだ?、としばらく思案に暮れました。
門には鍵が掛かっていないようだったので、鉄柵の間から中に手を入れて閂を外して、開けることもできそうでしたが、そんな入り方をしたら、放し飼いにしている凶暴なドーベルマンが飛びかかってきそうな雰囲気です。あくまで想像で、中には犬の姿はありませんでしたが。少なくとも、断り無しに勝手に入ったら、使用人かガードマンが飛んで来て一悶着あるのは間違いなさそうです。
とりあえず、注文者情報にあった携帯に電話してみるも、繋がりません。
次に、メールで「いま、巨大な門の前にいますが、どうやって入ったらいいんですか?」と聞いてみる。 ありがたいことに返信がすぐあり、「門番がいるから開けてもらって」とのこと。門番は門の内側の小屋で横になっていたので、外から姿が見えませんでした。
外側から声を掛けて、ここに住んでいる人に配達に来たんだけど、と伝えるが英語が通じない。ちょっと待てと制されて、門番がドライブウェイを駆け上がり、メイドと思しき若い女の子を連れてくる。この子もやはり話が通じない。また、待ってと言われて、二人目のメイドがやって来て、事情を再度説明して、何とか門の中に入れてもらう。
メイド二人に案内されてドライブウェイを登ると、50mくらい先の丘の頂上に3、4階建ての一軒家がぽつんと建っている。家の敷地面積は400平米くらい。ガレージにはレンジローヴァが一台駐まっている。
頂上の家に着くと、入口にさらに二人のメイドが待機していました。
そこで配達に来たんだけど、再度説明するも、どうも家の中には入れないようです。
私は買い主に会って、試着した上で、買うかどうか決めてもらうつもりでしたが(オンラインショップにそう書いたから)、持って来た物をここで出せというジェスチャー。四人のメイドに囲まれながら、バックパックに詰めた商品を出して一人に手渡すと、別の一人のメイドが握っていた現金をこちらに渡しました。 どうやら買い主は、私に会う気はないようです。

何か狐に包まれたような気持ちで、お屋敷を後にして、ドライブウェイを下りました。
いったん門の外へ出て、「いま手渡しました。代金も受け取りました。何か商品に問題があったら教えてください」 とメールすると、速攻で「ありがとう!」と返信がありました。買い主の人物は、実在するようです。

でも、あのお屋敷に住んでいるどんな人物が、どうやってサイトを探し出して、何の目的で商品を購入したのかが謎です。
まるでカフカの『城』の様で、いつまでたっても目的地に達したり、会うつもりの人物に会えない、不可思議で、不条理な感覚が残る経験でした。私の場合は最終的に、商品を渡して、お代はいただきましたが。


可能性として考えられるのは、先月、今月とミャンマー人の富裕層が住むゴールデンヴァレーのシティマートにポップアップ・ショップを出したので、購入者は、その時のリピーターか、その時の購入者から富裕層のネットワークを通して知った誰かということです。

帰り道で、ローカルのカフェで一休みしながら、あのお屋敷の住人はこういう場所に、まず来ることはないのだろうな、と考えると改めて不思議な気分になりました。



ミャンマーのような極端な階級社会だと、社会階層が異なる人間同士が交流することは、主従関係を除くとほぼありません。私のような外国人だと、その辺りの社会規範を無視して、色んな階層の人達と比較的対等に接することができますが。
昨日の件は、改めてミャンマーの階級社会の不可思議さの一端を垣間見たような気がしました。

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