2020年6月20日土曜日

ただいま日本でバイト中、そして日本の行く末を案じた

4月下旬から日本へ一時帰国中ですが、ミャンマーに帰る目途は未だ立っていません。 6月末までヤンゴン国際空港は閉鎖ですし、入国条件も詳細不明です。 とりあえず、収入確保のため日本でアルバイトをしています。

現在、日本の某市で「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の一環として実施されている、特別定額給付金のデータ入力の仕事にパートタイマーとして従事しています。 日本の自治体の住民基本台帳のデータは、銀行口座等の個人の金融情報とリンクしていないため、今回のように給付金を全国民へ一律配布するという状況になると、個別に配布先に口座情報等のデータを人力で入力する必要があります。 たとえマイナンバーで申請しても、オンラインで処理が完結するわけではなく、各自治体の住民基本台帳のデータベースに基づいて、個別に人力で振込データを入力しています。もっとも、郵送での申請が大多数なので、入力作業の中心となるのは、申請者の手書きのデータを、入力担当者が目視で確認しつつPCへ手入力する業務です。 本来なら、オンラインで自動化すべき業務なのですが、個人情報の保護に対する懸念や行政手続きのIT化の遅延によって、日本では実現していません。
Facebookで海外在住者のタイムライン見ると、住民基本台帳と個人の口座情報が紐づけされているドイツやアメリカでは、オンラインで申請して、3日程度で給付金の振込がされているようです。

人口の多い大都市だと途方もない手間と人手を要するため、一定以上の人口の自治体では、これに関する処理を外注しているはずです。国内の各自治体から、この業務のアウトソーシング企業や人材派遣会社への外注が、相当な特需になっているのではないかと推測しています。もちろん出所は税金なので、新市場を創出して国内経済のパイを大きくしているわけではありませんが。

5月下旬からほぼ連日、朝9時から夜8時まで、昼休みを挟んで10時間、一日ぶっ続けでデータをPCに入力しています。新入社員当時は、よくこの手の作業をやっていましたが、30年前に比べて当然体力も視力も衰えているので、5時を過ぎたあたりから目がしばしばして、意識が朦朧としてきます。ただ、体力的にはしんどいですが、単に黙々とデータ入力するだけで、他人と会話する必要も、煩わしい人間関係もないので、お気楽な仕事ではあります。コミュ障の私にうってつけの仕事が、一時帰国中に見つかって良かったと感謝しています。

それに、日本人だけの環境で仕事をするのも久しぶりなので新鮮です。
改めて思うのが、日本人はロボットの代替として優秀だということです。
勤務中ひたすら入力作業に没頭していて、周囲の人と会話をすることもないので、事情は知りませんが、他の人もネットで人材派遣会社の募集を見て、応募したのではないかと推測します。つまり、みんな情報をネットで見つけて、バラバラに集まった人々です。
にも関わらず、会ったこともない人材派遣会社の担当者からのメールによる指示で、毎日定刻通りに職場まで来て、簡単なマニュアル読んで理解して、みんな黙々と一日中PC入力作業に従事しています。
ミャンマーに住んで長いので、どうしてもミャンマー目線で物事を見るようになっていますが、これはミャンマーではあり得ない。
こんな簡単な説明では、作業内容を理解してもらえないし、そもそもこれだけの大人数をタイトな出退勤管理やタイムカードなしに、定刻通り毎日通勤させるのは至難の業です。 ミャンマーでネットで人材募集して同じ業務をすると、出退勤管理の煩雑さと、マニュアル無視して、みんな好き勝手にデータ入力しだして、収拾がつかなくなり、現場は阿鼻叫喚と化すのではないでしょうか(私が知る例では、過去に建物の電気工事で設計図面を無視して、施行業者が好き勝手に配線して、収拾がつかなくったことがありました)。

これだけ均質で、勤勉な労働者を、ネットを通じて一定数すぐに動員できる国は、そうないのではないかと思います。
 冷戦時代、アジア唯一の工業国だった時期、人件費が欧米諸国に比べて安かった日本が、工業製品などの規格品大量生産で一時代を画したことは納得できます。
工場の組立ラインに必要なのは、一定水準以上の知的レベルに達した、多数の均質かつ勤勉な労働者ですから。
ただし、21世紀に入って、工業製品のコモディティ化、モジュール化が進んだことで、日本の競争力は一気に失われたのはご存知の通りです。
グローバル化が進展により、中国・韓国や東南アジア諸国が製造業に参入したことで、工業製品のコモディティ化、モジュール化が顕著になりました。この結果、従来の欧米諸国の後追い戦略から脱し、創造性やオリジナリティ、あるいはブランド価値の創造等により、新規参入してきた国々の製品との差別化を図り、製品価格が主な選好条件となるレッドオーシャン市場のプレイヤーとは異なるポジショニングを取ることを、日系企業が迫られるようになって久しいです。

わかりやすい事例として、スマートフォンを例にあげます。
- 機能の中核を担うOSは、AppleのiOSとGoogleのAndroidが独占しており、ハード(スマートフォン端末)は汎用部品の組立産業と化している。
- 利益率が高いのは、アプリや音楽販売のエコシステムを築いているOS開発・供給元であり、ハードメーカーは薄利多売の過当競争に陥っている。
- カメラの性能などで多少の差別化はできるものの、OS(iOS搭載のハードはAppleの専売なので、ここではAndroid)は同じなので、各メーカーが製造するハードが提供できる基本的な機能は同じで、大きな差別化はできない(よって、ハードの市場は価格競争のレッドオーシャンと化す)。
- こうした過当競争下では、膨大な国内需要を背景にして、大規模な設備投資を行い、製造単価の低減化を実現し、その生産体制を足掛かりに、世界市場に打って出る中国メーカーが優位に立つ。実際、ミャンマーのスマートフォン販売店で見かけるメーカーの大部分が、Huawei・OPPO・Vivoなどの中国メーカーである。日系メーカーの存在感は薄い。
- 中国や東南アジア諸国に比べて人件費や地代が相対的に高い(それでもG7で最低賃金)日本は、イノベーティブで利益率の高い事業分野への進出が望まれるが(スマートフォンOSのプラットフォーマーとなっているAppleやGoogleのように)、残念ながら、そのような創造性・構想力・マーケティング力を備えた大企業は見当たらない。
- 現在、世界時価総額20位以内にランキングされている日系企業はゼロ。日系企業の最上位 は、トヨタ自動車の42位。しかし、テスラモーターズやGoogoleが電気自動車・自動運転のOS開発競争をしている現状で、自動車のコモディティ化・モジュール化(要するにパソコン化・スマホ化)がトヨタの製造技術をバイパスして実現すれば、その地位も危うい。

人材が均質で、現場の労働者が勤勉なことが、事業の強みになりにくい21世紀になってから、日系企業の凋落が目立ち始めたのは、決して偶然ではありません。 ここ20年間さんざん議論されてきた(そして解決していない)問題なので、いまさら私が書くまでもありませんが。日経新聞系のメディアとかは、日本にGAFAが生まれない理由について年中書いているような気がするし(そして、何ら解決しているように見えない)。

この問題については、下記の本に体系立てて、詳しく説明されていますので、ご興味のある方はお読みください。


なんでこうしたことを延々と書くかと言うと、日本の行く末を案じてるから、という部分もなくはないのですが、ほぼ毎日、無言で10時間ぶっ通しでPC入力作業していると、作業の単調さに倦んで、いろいろと余計なことを考え出すからです。
他にも入力しながら、考えていることがあるので、気が向いたら書くかもしれません。
とりあえず、ミャンマー帰国の目途が立つまで、日本でこのバイトを続けるつもりです。

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