2015年2月19日木曜日

ミャンマー進出がうまくいかない会社の特徴

久々にビジネスぽい投稿です。
こちらに来て約3年経ちますが、日本からミャンマーに来て、営業活動をしたり、パートナー探しをしても、なかなかうまくいかない会社に共通する傾向が見えて来ました。
ここは海外、文化も習慣も日本とは大きく異なり、しかも進出に関連する法律が未整備な場所です。日本と同じ感覚でやって来ても、当然、うまくいきません。
そうした会社に概ね共通する特徴を、以下に列記します。

1. 用意してくる資料が日本語のみ

ここは外国です。当然、日本語で作成したパワーポイントの文書を読める人はあまりいません。
ミャンマー語とはいいませんが、せめて英語の資料は準備すべきです。
取引先やパートナーを日本語話者に限ると、取引や業務提携の対象先が非常に限定されます。

2. 業務・技能がシステム化・形式知化されていない

日本のメディアではよくミャンマー人を「敬虔な仏教徒が多く、親日的で、穏やか、日本人と気質が似ている」と評しています。否定はしませんが、やはり文化や習慣が根本的に異なるので、ビジネス・労働観に関しては共通の基盤はないと見た方がよいでしょう。
受けて来た教育や、育った環境が違うため、仕事に関する知識や経験、業務の完成度に対する感覚等、日本とは前提がまったく異なります。
そのため業務に必要とされる技能や手順が、マニュアル化・システム化されていて、文章や図ですべて理解・習得できるよう、形式知として体系的に整備されている必要があります。
日本の中小企業にありがちな、習って覚えろ的なOJT方式では、教える側の負荷が高く、効率が悪い上、多人数に対応できません。
そもそも従業員の定着率が低いため、OJTで個々に対応するのは無駄な人的投資になりがちです。
現地での研修・教育が難しいため、ミャンマー人を日本に送り、OJTで研修させて、本国に戻すという方法も問題を生みやすいです。日本で研修を受けても、帰国後すぐに離職する、ミャンマーで日本と同水準の賃金・待遇を要求する、最悪、研修期間中に脱走して難民申請するなどのケースが有り得ます。
やはり、業務・技能がマニュアル化・文書化されていて、暗黙知に頼らずに、文化が違う海外でも理解・習得できるよう、研修・教育のシステムが普遍的に形式知化されていることが必須です。

3. 他国への進出経験がない

最後はややハードルが高い条件かもしれませんが、敢えて書き置きます。
メディアで「アジア最後のフロンティア」などと喧伝されるミャンマーですが、言い換えれば、同国内にビジネス・サービスのインフラがほとんどないということを意味します。
電力や物流等の物的なインフラが未整備なのは見れば分かりますが、見落としがちなのが、現地の人的な問題や法律が未整備なことです。
現地企業と提携・取引をする際、相手側からの文書による資料・情報の提示、双方の合意に基づく契約等、段階的に安全なプロセスを踏んで進出することは難しいです。同国では、これまで多くの場合、政府高官とのコネ、商売勘と口約束で仕事が完結していたので、国際的に通用する、透明度の高いビジネスのプロセスの知識や経験の蓄積がありません。そもそも、その必要性さえ認識していないふしがあります。
率直に言って、他のASEAN諸国と比較しても、ミャンマーは企業体力と海外進出のノウハウを要する国だと思われます。最初の海外進出ならば、ミャンマーが本当に自社に取って適正な国かどうかを再考することをお勧めします。
可能であれば、海外企業進出に対するインフラが整備された隣国タイあたりで経験を積んでから、ミャンマーへの進出を検討した方が良いかと思われます。海外で起きるトラブルへの免疫や対処のノウハウがない状態で、広い意味でのビジネスに必要なインフラ(一定の知的水準を達成する教育システム、要求水準に対応するスキルを保有する人材を選べる労働市場等々)や法が未整備な国へ進出するのは、相当の困難を伴います。

補項: 表敬訪問はもうやめましょう

2011年にアメリカの経済制裁が棚上げになった後、多くの日本の都道府県の商工会議所の代表団が、ミャンマー商工会議所連合会(UMFCCI)を表敬訪問しています。 
ミャンマー商工会議所の会議室で、意見交換、記念撮影、帰国後、会議所会報・社内報にその集合写真を掲載、実質的な業務提携や取引実績は残さない、というのが典型的なパターンです。
こうした日本のビジネスパーソンの行動は、ミャンマー人からNATO (No Action, Talk Only)と揶揄されています。
ミャンマーも他の東南アジア諸国と同様に、短期的な利益を追求し、現金収入や実利に直結しない稼働を嫌う気質があるため、この種の表敬訪問は、日本企業や日本人に対するイメージの低下を招いています。
また、儀礼的な訪問の中で、意見交換をしても、得られる情報の質が表面的なものに留まります
それより、ミャンマーに進出して、単独または合弁で現地法人を立ち上げた会社の方から話を聞いた方が得るものが多いでしょう。現地でミャンマー人を直接マネージメントしている人たちからの経験談を聞くことも重要です。 
できることなら、仮に進出した場合、雇用する水準の所得階層のミャンマー人たちと直接に接することをお勧めします。こちらへやって来たものの、要求水準に達する能力を持つ人材が得られず、苦労している企業も多いようです。
ホテルとJETROのオフィスミャンマー商工会議所を、大名行列よろしく、集団で移動しても、進出にあたって必要となる、現地のリアルな情報は得られません。
街へ出て、ローカルのレストランで食事し、現地のサービス水準や衛生観念を知ることも、ミャンマーの民度や市場の成熟度を測る方法のひとつです。

いろいろと書きましたが、外国人でもミャンマーが好きで、ミャンマーに住むこと自体がプライオリティになってる方は、楽しくやっているように見えます。
そうした経済合理性や得失損得を越えた価値観の人の方が、結果的にビジネスも軌道に乗ることが多いようです。山師的で、話の大きいタイプの人は、ここに長くはいられないようで、いつの間にか姿を消していきます。

とにかくミャンマーが好きで、ここで何かを成し遂げたい、この国の発展に貢献したい、そのための苦労は厭わない、今のミャンマーはそんな外国人のために開かれた国です。

面白かったらポチってね
  ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓  
にほんブログ村 海外生活ブログ ミャンマー情報へ
にほんブログ村

0 件のコメント:

コメントを投稿