2017年4月25日火曜日

チェンマイでミャンマーのアパレルと雑貨を考えた2〜ヂャルーンラート通り編

前回の投稿では、チェンマイのターペー通りにあるアパレル・雑貨店を紹介しました。
今回は、ターペー通りの東側、ピン川に掛かるナラワット橋を渡ったヂャルーンラート通り沿いのショップを紹介します。ターペー門からターペー通りに入り、出口まで抜けるのが散策のコースだったのですが、その時点で歩き疲れて、なかなか川を越えてその先に進めませんでした。せっかくチェンマイまで来たのだからと、滞在の後半になって、橋を渡ってショップ巡りにトライしました。
なかなか興味深いショップが多く、行った甲斐がありました。


まずは、チェンマイでシャツを中心に展開するブランドのオリエンタル・スタイル。
大きな古民家を改装した店舗です。 メンズ・レディースのドレスシャツが豊富な品揃えでした。
チェンマイの店舗はかなりの規模なのにも関わらず、バンコクで店舗を見たことはありません。商圏は、チェンマイのみなのでしょうか? タグにはMade in Chaing Maiとクレジットしています。バンコクのブランドでは、Made in Bangkokのクレジットは見たことがなく、Made in Thaiと表記されています。ブランド・アイデンティティとして、チェンマイへのこだわりが感じられます。



次はガイドブックにもよく紹介されているヌサラーです。オーナーはチェンマイの織物の研究者として著名な女性らしいです。入り口は狭いですが、中に入ると石庭があって、びっくりするくらい広々としています。







価格は高めですが、セレクションやクオリティのレベルは高いです。エスニックな生地やそれを使用した商品がお好きな方にお勧めです。


前回の投稿で紹介した、ターペー通りで見つけたお勧めのショップUNIQUE SPACEが、ヂャルーンラート通りにもありました。どちらが本店かは不明です。こちらの店舗の方が広いですが、商品のヴァリエーションは、ほんの少しターペー通りの方が多いです。ターペー通り店にあって、こちらの店舗にはない商品もありました。



下の写真はゲストハウスですが、古民家をリノベーションして、カフェ・レストランやブティックやゲストハウスなどとして再利用しているケースが目につきました。
ミャンマーにもイギリス植民地時代のコロニアル建築がまだ多く現存しているので、こうした物件の利用法が増えれば、観光客の楽しみが増えるのではないでしょうか。


チェンマイを散策していると、表通りから外れた入り組んだ場所に、洗練されたブティックやお洒落なカフェが突然現れたりします。今のところ、ヤンゴンではそのような経験は滅多にできません。海外からの旅行者や居住者の数や外国人居住者層の厚みと観光地としての歴史の差が、こうした文化的な洗練度の違いの原因となっているのでしょう。
今後のミャンマーへの旅行者や外国人の居住者の増加に伴い、お店の選択肢が増えることことをミャンマー居住者の一人として願っています。
観光客誘致にとって大切なことは、国際空港の拡張や移転ではなく、旅行者が滞在して楽しい場所となることであるのは論を俟ちません。分かりやすく書くと、グルメとショッピングが楽しい場所でないと、普通の観光客は寄りつきません。
ミャンマーの観光政策として、ミャンマーでしか手に入らないリーズナブルで洗練された商品や、ミャンマーでしか味あうことができない上質な食事の開発を促進することが、現在計画中と言われている空港の移転や拡張よりも先に取り組むへき課題だと思います。

私もミャンマーでしか入手できないアパレル・雑貨の企画販売をしているので、これからミャンマーに来る方はよろしければ、店舗で手に取ってご覧いただけると嬉しいです。

製品・サービスについての最新情報は、YANGON CALLINGのFB Pageで随時更新しています。
https://www.facebook.com/ygncalling/

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2017年4月15日土曜日

チェンマイでミャンマーのアパレルと雑貨を考えた1〜ターペー通り編

今回、チェンマイを水祭り中の渡航先に選んだのは、チェンマイのアパレル・ブランドを視察するためです。タイのオリジナル・ブランドとして有名な、アパレル・雑貨のGingerや帽子のMuakなどのブランドは、チェンマイを拠点として生産されています。
そこで、今回初めてチェンマイを訪れて、現地のアパレル・雑貨店巡りをしています。

今回は、旅行者が通る目抜き通りのターペー通りの店舗をご紹介します。

ターペー通りはカフェ・レストランに並んでアパレル・雑貨店が軒を連ねる通りですが、さすがに外国人が多いエリアだけあって、ディスプレイが洗練されています。


タイの素材を使用して、ラルフローレン的なテイストの商品を製作・販売しているブランド。ロゴもラルフローレンに似ています。ディスプレイもラルフローレン的なテイストです。


いかにも代官山や恵比寿にありそうな、ディスプレイを設置している雑貨店。


店番をしている、お洒落で愛想の悪いタイ人の女の子。
90年あたりまで、日本のDCブランドのショップに、こうした綺麗で、お洒落で、愛想の悪い店員が結構いたので、なんだか懐かしくなりました。今の日本は余裕がなく、売らんかなと必死なので、こうした無愛想な店員はいなくなりました。ブランド側も専属の店員を雇用するコストを負担できないようで、それなりにハイブランドでも生活感が滲み出た主婦のパートさんが売場に立っています。日本にたまに帰国して、こうした現象を見るにつけ、改めて今の日本は余裕のなさを感じます。



ミャンマーにもいる、チェンマイのモン族の市場。ミャンマーでは、カチンやカレンの存在感が大きいですが、チェンマイにはモン族のコミュニティが存在するようです。ミャンマーで言うところのシャンバックも売っています。タイでは何と呼ばれているかは知りません。




このお店が今回のターペー通り来訪の一番の収穫でした。間口が1mくらいの狭い入口を入ると、藍染めを中心とした魅力的な布素材をベーシックな形のアパレル製品として仕上げています。ブランドのテイストとしては、自然素材をファッションとして結実させている点で、ハリウッド・ランチ・マーケットに近いです。価格は、HRMの四分の一から三分の一で、お財布に優しい価格帯です(タイ製品としては高めですが)。商品の80%くらいはレディースで、残りはユニセックスです。私が女性だったら、ここで目の色変えて買い漁るところでした。




文字通り鰻の寝床のような店内の奥で、おばちゃんが針を動かしています。
ひょっとして、このおばちゃんがデザイナーなのか?
陳列されている商品の洗練度と実際の製作風景のギャップがあり過ぎて、なかなかシュールでした。


ターペー通りと周辺を一通り廻って感じたのは、VMDが上手い店舗が多いことです。ミャンマーでは、商品が魅力的に見えるように陳列するという概念がないので、無造作に吊るしたり、重ねたりすることが一般的です。時には、商品の全体像すら見えないような陳列の仕方で、本気で売る気があるのかすら疑問に感じます。

ヤンゴンで品揃えとセンスの両面において、私が最も信頼している布屋さん。ただし、商品カテゴリー毎にヒモで縛っているので、良いデザインの布を探し当てるために、いちいち頼んで解いてもらう必要があります。

また、ブランド・店舗ごとにコンセプトやテイストがあり、それに沿った商品構成がされていることが多かったです。ブランド・コンセプトやブランド・アイデンティティも、まだミャンマーにはない概念です。

ミャンマー在住の外国人の増加につれ、自らブランドを立ち上げる人も現れてきているので、もう少しすれば状況が変わるかもしれません。

商品のコンセプトやデザインの独自性は、それほど感じませんでした。自分のやっているブランドの商品をここに置いても、それなり競争力が発揮できるのではないかと(私は)思いました。

私もヤンゴンでミャンマーで生産された素材を使用したブランドを運営しているので、よろしければご覧ください。

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2017年4月14日金曜日

チェンマイの本屋でミャンマーの書籍文化を考えた〜古本編

前回は、チェンマイとミャンマーの新刊書店を比較して、両者の文化や環境の違いついて考察しましたが、今回は古本について同様の試みを行います。

旅行者が集まる、チェンマイの旧市街エリアに店を構える2軒の古本屋に行ってきました。
まずはGEKKOという古本屋。店先で本を読むストームトルーパーが目印です。


スターウォーズのキャラクターが店の前にいるだけあって、SF関係の古本が充実していました。SF専用の本棚があります。


ハヤカワSF文庫の青背の本は、ずいぶん中高生の頃に読みましたが、カート・ヴォネガットと並び最もハマっていた作家フィリップ・K・ディックのストックも充実していました。まさか、こんなおっさんになって東南アジアの古本屋でこれらの著作と再会するとは思わなかった。

次ぎに行ったのは、On The Roadという古本屋。


もちろんジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード (河出文庫)』からのネーミングでしょう。店内には棚にも、平積みにも同著作がありました。カオサンでもこの本は古本屋でよく見かけるので、バックパッカーのバイブルみたいな本なのでしょう。たしかに何の目的も生産性もなく、ひたすら移動するだけの話だし。




ここにもフィリップ・K・ディックの古本が置いていました。また、カート・ヴォネガットも結構揃っていました。他に目についたのは、ブレット・イーストン・エリスとニック・ホーンビーの著作です。アメリカで、エリスと同じ時期に作家デビューしたジェイ・マキナニーはいつの間にかフェードアウトしましたが、エリスはまだ読み継がれているのかな? 二人とも「ニューロスト・ジェネレーション」というくくりの中で登場した作家で、このムーブメントを代表する作家がエリスとマキナニーでした。古本屋の棚から、 どの作家がアクチュアルな文学的な価値を有しているのか推測するのも楽しいです。

また、この古本屋は音楽関係の古本が充実しています。デヴィッド・ボウイやマイルス・デイヴィスの伝記など良い本がたくさんありました。
2010年度全米図書賞受賞のパティ・スミスの自伝『ジャスト・キッズ』を見つけたので購入。



この古本屋は品揃えとセレクションのレベルが高いのでお勧めです。店主は偏屈そうな白人のおっさんで写真を撮ってたら「ここは撮影禁止だから」と怒られましたが(笑)。

カオサンの古本屋もそうですが、バックパッカーを含む旅行者や外国人居住者が多い場所柄、商品の入れ替えが頻繁なので、いま旅行者や外国人居住者がどんな本を読んでいるのかが、古本屋の棚から見て取れるところが面白いです。どの作家の作品が、アクチャリティを持って受けとめられているのかも推測できます。
ミャンマーはまだまだ旅行者や外国人居住者が少ないためか、品揃えとセレクションが充実した古本屋はありません。また、古本自体も内容が古過ぎて、どの作家が人気があるのかや、どんな本がアクチャリティを持って受けとめられているのかを、そこから読み取ることもできません。路上に敷いたゴザの上に置いている本でよく見かけるのは、ダイアナ妃の伝記本と、いつの時代かわからないヴァージョンのWindowsのガイドブックですから。

もちろんミャンマーでも近年増えつつある外国人居住者が現在の文化状況に満足しているとは考えられないので、いつかはきちんとしたセレクションの古本屋もできるでしょう。
ただ、ヤンゴンで空港を除く街場で、唯一の洋書の新刊を売っていたMonument Booksが、最近閉店したので、事態は一進一退といったところでしょうか。
個人的には、ちゃんとした文学的な価値のある本を揃えたブックカフェを作れればいいなと思います。
サードウェーブ・カフェ、クラフトビール、本屋などミャンマーには、まだまだ足りないものが沢山あるので、経済合理性を超えたパイオニア精神や、ミャンマーに新しい文化を根付かせる使命感を持った人が、ミャンマーに来ることを願います。

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2017年4月13日木曜日

チェンマイの本屋でミャンマーの書籍文化を考えた〜新刊書編

ミャンマーの水祭り期間をチェンマイで過ごしています。こちらも上座部仏教の国なので、同じ時期に水祭りを開催していますが、ミャンマーに比べれば穏やかなものです。
ミャンマーみたいに問答無用でホースやバケツで頭から水を掛けられることはありません。参加したい人同士で、お互い水を掛け合っていることがほとんどです。

さて、いつもと違った場所を訪れると、必ず私が私が行く場所は本屋です。新刊書を扱う本屋も古本屋にも行きます。新刊書店で平積みしているコーナーを見れば、その場所に住む人達が何に関心を持っているのかが推測できます。古本屋に置いている本は、その場所の文化度やセンスを推し量る指標になります。
そんなわけで、チェンマイでもいくつかの本屋に行ってきました。

まずは新刊書店のBOOKSMITHへ。チェンマイの代官山や渋谷のキャット・ストリートに似たお洒落エリアのニマンヘミンにあります。場所柄アート系の本が充実していました。
この手の書店には、必ず置いているKINFOLKMONOCLEといったライフスタイル・マガジンも当然置いています。ちなみにヤンゴン国際空港のターミナル1の紀伊国屋書店にKINFOLKが置いています。おそらくミャンマーで唯一KINFOLKを売っている場所でしょう。




当然、村上春樹のタイ語訳もありました。新作を除く著作のほぼ全部が揃っています。



村上春樹以外の日本の作家では、伊坂幸太郎の翻訳本が目立っていました。


タイの日本のガイドブックは、近年どんどんマニアックになってきています。東京クラフトビールなる、東京のクラフトビールの酒造を紹介している本がありました。


タイでは、日本のサードウェーブ・コーヒーの紹介に特化したガイドブックも出版されています。藍染めにこだわったクラフト系のジーンズ・ショップもタイの街中でよく見かけるようになりました。

クラフト系ジーンズとは、私がいま作った造語ですが、こんなタイプのジーンズブランドを指します。
自分のためのデニムを。5人のプロフェッショナルが手がけるアップル アンド アティチュード

http://www.houyhnhnm.jp/news/57113/

タイにもサードウェーブウェーブ系男子が出現してきているのかもしれません。
サードウェーブ系男子についてご存知ない方は、ネーミングした辛酸なめこの下記のインタビューをお読みください。
清澄白河のブルーボトルに行ったら、行列に並びながら、コーヒーのうんちくを傾ける小洒落た恰好をしている男性たちがあまりに多くて驚きました。そこで、こうしたオシャレで、一杯一杯丁寧に入れたコーヒーが好きな男性やそうした店で働く店員さんのことを『サードウェーブ系男子』と名付けました
クラフト系やサードウェーブといったムーブメントの基底には、先進国の消費者の脱消費・脱大量生産的な時代の気分があります。
ムーブメントの背景を説明した記事を見つけたので、以下に紹介します。

https://gqjapan.jp/culture/column/20160127/third-wave-guys

現在、世界中で同時多発的に興りつつある、消費意識の変化について興味があれば、『ヒップな生活革命 (ideaink 〈アイデアインク〉)』と『物欲なき世界』をお読みください。2冊とも現在進行形の消費意識の変化を丁寧にレポートした良書です。



ポートランドや日本のサードウェーブコーヒーやクラフトビールを紹介する書籍が、タイで出版されるのは、タイも世界の先進国で興りつつある、消費意識の変化と共振している証左でしょう。

下の写真は、バンコクのアート系の本やライフスタイル系のお洒落な雑誌だけを揃えたセレクトショップ的な書店の棚ですが、 KINFOLKMONOCLEと共に、日本のサードウェーブ系男子御用達の雑誌『POPEYE』が置いていました。
おそらく若いタイ人が日本人に期待しているのは、 この種の格好良さだと思いますが、この種の格好良さや美意識を体現した若い日本人男性を東南アジアでほとんど見かけることがないのは残念です。代官山や恵比寿のカフェばかりにたむろしてないで、東南アジアにも来て欲しいものです。



ミャンマーでは、サードウェーブ系コーヒーやクラフトビールのムーブメントは今のところ起こっていません。FBページのYangon Connectionで外国人のミャンマー在住者が「誰かここで旨いクラフトビール飲める場所知らない?」と聞いていましたが、まともな回答がありませんでした。「ミャンマービール」と答えていたミャンマー人もいたので、クラフトビールの定義もあまり知られていないようです。
そもそも、ミャンマーには脱大量生産的な時代の気分や感性 ー 大企業が工場で生産するマスプロダクトよりも、個人や小規模生産者が提供するクラフト的なこだわりのある商品やサービスを高く評価する ー は訪れていません。
ミャンマーの街場の新刊書店に、KINFOLKMONOCLEが並ぶような文化・生活環境の変化があれば、サードウェーブコーヒーやクラフトビールの店も現れることになるでしょう。いつになるかは分かりませんが。
ちなみにチェンマイのニマンヘミンは、サードウェーブコーヒーのカフェが相当な密度で林立しているのですが、これはこれで異様です。

本屋で新刊書を眺めていると、そこに住む人達の気分や関心領域が見て取れて楽しいです。
ミャンマーの新刊書店では、ローバート・キヨサキや『七つの習慣』のような自己啓発本が目立つので、経済的な栄達への関心が高いことが伺えます。
文芸書の翻訳は、ディケンズとかツルゲーネフのような古典がぽつぽつある程度で、現代文学についてはかなり手薄です。
また、ミャンマーの書店では、棚作りに軸というかセレクションに一貫性が感じられません。きちんと本の内容を把握して、魅力的な棚作りが出来る書店員が育つ文化的な環境に早くなればと願います。
それ以前に読むべき価値のある本が、しっかり翻訳されて、出版されている必要がありますが、出版に関連する版権や著作権の法が整備されていないのも大きな問題です。村上春樹のミャンマー語訳を見かけますが、版権等は正式に取得していないはずです。また、セックスシーン等の物議を醸しそうな部分は削除されているので、読んでも内容がよく分からないこともあるようです。
悲観的ことばかり書きましたが、最近アメリカから帰国したミャンマー人が同人文芸誌を作っているので、少しづつ変化の兆しは現れているのかもしれません。

チェンマイの古本屋についても、書こうと思いましたが長くなったので、次回の投稿にします。

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2017年4月8日土曜日

ミャンマーで自己啓発本を書いてみた

意識高い系の人が、自己啓発本の紹介やそうした本の受け売りみたいなことをブログに書いているのを時々見かけると、そんな薄っぺらい本を読まずに、もっと肚と魂にずしんとくる本をちゃんと読めばいいのにと思います。大きなお世話でしょうけど。
私が考える肚と魂にずしんとくる本というのは、たとえば、『カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)』とか『白鯨 上 (岩波文庫)』のような古典とか、準古典なら『百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)』とか『夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)』とか、現代の作品ならスティーブ・エリクソンの『黒い時計の旅 (白水uブックス)』とかロベルト・ポラーニョの『2666』のような本です。白状すると『夜の果ての旅』は20年以上積ん読していて、読んでませんけど。
身も蓋もないことを言ってしまえば、世界を変えるようなブレークスルーを引き起こすような、巨大な才能と運と根気に恵まれた人物は遅くとも35歳くらいまでに、大きな成功を治めているはずなので、天賦の才を最大限に生かすように継続的な努力していれば良いだけです。ゲイツもジョブズもイーロン・マスクも20代で世に出ていますし。彼らはおそらく自己啓発本なんかは読まずに、その時々の自分の関心や目標に突き進んだ結果として、世界の成り立ちや人々の生活に大きな影響を与えるイノベーションを生み出しています。私も含む凡人は、淡々と目の前の課題に愚直に取り組めば十分だと考えています。もちろん、非才の身ながらも、何がしらの結果として、周囲の人を幸せにしたり、社会に微力ながら貢献できればいいなとは思いますが。

こんなことを書いていても、自己啓発本を読んで気持ち良くなっている人には刺さらないでしょうし、その種の成功必勝法みたいなことも書いたことがないので(そもそも知らないし)、自己啓発本好きの人が私のブログを読んでいるとは考えにくいですが。
しかし、書店にあれだけ有象無象の自己啓発本があるということは、それだけ需要があるということなのでしょう。

いや、ちょっと待て。
ということは、自分で書いてみたらいいんじゃないか?
一時ミャンマーが「アジアのラスト・フロンティア」と喧伝された時は、ずいぶんその流れに便乗したミャンマー指南書が出版されていたし。ここはミャンマーの地域性と自己啓発本の定型的なフォーマットを組み合わせれば、少しばかり違う切り口の自己啓発本が作れそうだ。
つまり、内容は典型的な自己啓発本的なサクセス・ストーリーで、そこにミャンマーの事情やミャンマーでありがちなトラブルをトッピングすればいけそうだ。
ここは、自己啓発本的なポジティブ・シンキングで、意識高い系の需要に応えて儲けた方が、さっきまで書いていた小姑の小言みたいなことを書くより建設的ではないだろうか?
自己啓発本好きの読者にはお決まりの内容で気持ち良くなってもらい、書いた方は養分になってもらうことで利益を得る。自己啓発本がよく勧めている、Win-Winの関係の構築じゃないか。
何しろ、あれだけ書店に似た内容の自己啓発本が平積みされているわけだから、少しばかり違う切り口で書けばいけるかもしれない。

そんなわけで、私が書く自己啓発本の案を練ってみました。

タイトルは『人生で必要なことはみんなWin Starで学んだ』。
Win Starはこのブログで度々書いていますが、サンチャウン地区で最もメジャーなビアステーションです。5年前までは、ミャンマー人客しかいなかったのですが、近年、サンチャウンに外国人居住者が増えたことで、ミャンマー人以外の客層もかなり増えました。
ミャンマーには数少ない、客層に多様な人種が入り交じった店なので、ストーリーをドライブさせるのに最適な場として使えます。一番大きな理由は、私が夕刻になると毎日この店にいることなんですが(笑)。
自己啓発本にもいくつかスタイルがありますが、ストーリー仕立てにした方が書くのも楽だし、読む方も感情移入がしやすいでしょうから、ロールプレイング・ゲーム的にストーリーを進めていきます。
文章は平易で、1時間もあればさらっと読める薄い本です。


プロローグ:Win Starで一人でビールを飲みながら、これからのミャンマーでの身の振り方を考えている
1章 日本からミャンマーへ:運命のいたずらでミャンマーへ
2章 ミャンマーでの生活:停電、雨期の浸水、そしてゴキブリ、ネズミとの共生
3章 ミャンマーでの最初の仕事:ローカル企業で外国人として働く
4章 出会い:ミャンマー人女性と恋に落ちる、メンターに会う、仲間に出会う
5章 失職・蹉跌:様々な事情が重なりミャンマーで職を失う
6章 起業・挑戦:一念発起してミャンマーで会社を興す
7章 会社経営:最初はさっぱりだった事業が軌道に乗り出す
8章 危機:好事魔多し。思わぬ障害に経営危機に陥る。信頼していた仲間との訣別
9章 再生:危機を超人的努力と常人離れした運の良さ乗り切り、再び軌道に乗せる
エピローグ:Win Starで一人でビール飲みながら、これまでの波乱万丈のミャンマー体験を振り返る

筋立てとしては、上記のような紋切り型の展開で進みます。
自己啓発本でよくあるメンターとの出会いも、マイルド・ヤンキー受けする仲間との絆も抜かりなく入れています。サービスシーンとして、ミャンマー女性とのエキゾチックでオリエンタルなラブストーリーも挿話として加えました(そんな経験ありませんが)。
改めて言うまでもないありませんが、本書の唯一の真実はWin Starで私がいつもビール飲んでることだけです。
試し読み用に、プロローグだけ書いてみようかと思いましたが、面倒なので止めときます。
出版のオファーがあれば書きますので、大手出版社の編集者の方、ご連絡お待ちしております。自費出版する気はないので、自費出版社の営業はご遠慮ください。
目指せ印税生活!

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