2015年3月24日火曜日

工芸からアートへ〜ヤンゴンの工芸品展に行ってきた


3月21日〜3月25日の間、"From Craft to Art ~ An Exhibition of Comtemporary Crafts"という展示会がドイツ大使館の関連施設Gothe Villaで開催されていたので行って来ました。
この展示会は、イギリス大使館、地元アーティスト支援を目的とするNPO New Zero Art Space、スイス大使館の後援で開催されています。


会場で配られていたパンフレットには、展示会の趣旨がこんな風に述べられています。
「このプロジェクトは、高品質なデザインの工芸品の製作のみならず、ローカル市場の立ち上がりを支援し、最終的に世界市場で通用するモノ作りへと道を拓き、生産者自身による中核地域が創造されることを目的としている」。
前の投稿のテーマと重なるところがあり、みんな同じ問題意識を共有しているのが分かります。地域経済圏の創造とか、ローカル性を武器にしたグローバル市場への参入とか。

趣旨はさておき、実際の展示品は、よく言えば大らかで素朴、悪く言えば大雑把で精巧さに欠けるミャンマーの工芸品の特徴が目につきました。
パンフレットには、プロジェクトの一環として、品質向上のための施策として、カナダ人インストラクターによるワークショップが開催されたと説明されていますが、なかなか一朝一夕では、このクオリティーの問題は解決されないようです。


少数民族が織った布は、ミャンマー工芸品の中で最もクオリティーが高いと思います。
しかし、こうした素材を使用して、実用品として落とし込んだ商品がないのがミャンマーの残念なところ。布だけだと、マーケットが布のコレクター(欧米人に多い)に限られるので。


展示会は即売会も兼ねていましたが、「SOLD」の札がいちばん貼られていたのは、シルバー・アクセサリーでした。中心価格が30USDと値段も手頃な上、商品としての完成度も高く、展示品の中でいちばん市場性がありそうでした。


展示会にイギリス大使館が関与していることは、19世紀に生きたイギリス人で、工業デザイナーの始祖とも言える人物ウィリアム・モリスを想起させます。
モリスは、当時のイギリスで産業革命による機械化が進展し、生産システムが大量生産に最適化される中で、プロダクト・デザインから、産業革命以前の生産品に備わっていた繊細さや精妙さが失われつつあることを批判し、職人技と手工芸の復興を訴えたアーツ・アンド・クラフツ運動を提唱者として知られています。今回の展示会のタイトル"From Craft to Art"も、モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動に引っ掛けているのかもしれません。

約130年前のイギリスで起こった職人技消滅の危機と同様の事態が、現在のグローバリゼーション押し寄せるミャンマーでも起こりつつあることを考えると、時宜を得た展示会であると言えるでしょう。

日本にも世界に誇るべき工芸家柳宗悦がいます。また、彼の提唱した民藝運動のような、日常的に使用される工芸品の美や価値を再定義・再評価した思想・哲学もあるので、こうした活動は日本や日本人が貢献できる分野でもありますね。

そういえば、この前日本に帰った時に読んだ本、岡本仁『果てしのない本の話』の中に、柳宗悦とミッド・センチュリーを代表する工業デザイナー チャールズ・イームズの交流があったというエピソードがあって、世界はいろんなところで繋がっているのだなと、改めて実感しました。

  

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2015年3月17日火曜日

日本でミャンマーを考えた 〜「ヒップな生活革命」

先週末まで、10日程確定申告のため日本へ一時帰国していました。
滞在期間中は、主に福岡の大名・今泉周辺で過ごしていたのですが、だいたい本屋行って、セレクトショップで商品眺めて、カフェで本読んで、時々友人と酒を飲んでいたら、あっと言う間に10日間が過ぎてしまいました。
今回は、そのときに感じた、日本とミャンマーの市場、市場が向かっている傾向の差異と共通点について、つらつらと書き留めます。

ポートランド・ブルックリン化する商業地区

日本に滞在中で読んだ本で、大変興味深かったのが『ヒップな生活革命 (ideaink 〈アイデアインク〉) 』です。
本書は、ポートランド、ブルックリンといったアメリカのリベラルな地域で、現在進行中の消費トレンドの変化についてのルポタージュです。
ここでレポートされているのは、グローバリゼーションの影響やグローバル企業の提供する商品・サービスに対するオルタナティブとして、地域の多様性や個々人の嗜好を評価し、地域経済への貢献を促進するライフスタイル、ビジネス、消費活動です。
グローバル企業の提供する商品やサービスは、コストが低い場所(途上国)で生産・製造されたモノを、消費地(主に先進国)へ輸送するため、消費地である先進国での雇用創出に繋がらないことや、流通経路で生じる環境負荷の高さが問題になっています。また、グローバル企業は、租税回避のため税率が低い地域で法人登記をするケースが多く、会社の収益が向上しても地域経済へ寄与しないとことも指摘されています。

同書によると、ポートランドの地元民は、スターバックスのようなチェーン系の店より、豆の選別と自家焙煎にこだわった、地場資本の店を選ぶことを好みます。
NY市内に位置する都会のブルックリンでさえ、NY近郊の農場で収穫された無農薬の農産物を使うレストランが人気だそうです。
アパレルでも、途上国の廉価な労働者によって大量生産されたファーストファッションより、地元のデザイナーが企画し、デザイナー本人や地域の縫製業者により、家内製造業的に製造された衣服を着ている方が、情報感度の高い人(つまりヒップ)と評価される傾向があります。
他にも、本を買うときはAmazonよりも地元民の嗜好を理解した棚作りをした、地域密着型の地元の書店で買う、アナログ盤を販売するレコード店が増えているなどのムーブメントがあるそうです。

ポートランドにも、ブルックリンにも、行ったことはありませんが、こうした地産地消・スローフード・スローファッションなどのムーブメントは、日本でも街に出ると肌で感じます。
4年前まで住んでいた下北沢には、地元資本の飲食店やアパレルショップが健闘しているエリアですし、今回滞在していた、福岡の大名・今泉地区でも同様の傾向があります。

今泉では一軒家を改装したセレクトショップや、こうしたタイプの店に置いている地元産の民芸的な雑貨を、街を散策していてよく見かけました。



日本で生産されたことを強調する商品もかなり店頭に並んでました。


無印良品とTSUTAYAの進化が止まらない

こうした消費動向に対応した、大手資本の店も目立ちました。
とくに無印良品は大手企業なのにも関わらず、エコロジー・地域経済的な価値観に非常に上手く対応しています。シンプルで簡素というのが無印のブランドイメージですが、原産地を大きくうたった食品、日本の地方産の陶器や、インド地方産の生地による雑貨等、特定の産地のイメージを打ち出した商品も数多く店頭に並んでいました。

少し前まで、無印はシンプルな雑貨店というイメージでしたが、今は本屋あり、カフェあり、家作りありで、無印の旗艦店が一軒あれば、衣食住すべて事足ります。無印的なライフスタイルを提案しながら、個人の生活を全てをフォローする総合店舗と化しています。
20年程前は、家具も家電も実際に買って使ってみると、けっこう微妙だった商品もありましたが、今では店舗に行く度に進化していて、コストパフォーマンスやデザインのレベルで、普通の家具屋や洋服屋が追いつくのが難しいレベルにまで達してます。
今回見に行った時は、IDEEの家具の販売やメンズスーツのオーダーメイドまでやっていて、もうかつての無印とはある意味別物です。




ヤンゴンにも欲しいわ。当分、来ないだろうけど(笑)。

同じく大手資本で、TSUTAYAの進化も目を見張るものがあります。
代官山蔦屋書店の全国展開なのでしょうが、本屋にカフェ併設で新著をコーヒー飲みながら読み放題だし、弁護士や行政書士が常駐する起業・スタートアップの無料相談窓口まであります。これはもう、意識高い系の人には堪えられない空間ですね。個人の起業の促進し、地場経済へ貢献する、ローカリゼーション的な価値観に対応したサービスでしょう。

両者ともインテリアのコンセプトが似ていて、木目調のエコ・ロハスな印象を与える作りになっています。
今はかなり情報感度が高くないと、大手資本のサービスやコンセプトを陵駕するのが難しいと実感します。
むろん個人だとユニバーサルなサービスを提供する必要がないので、特定の分野で一点突破という方法論がありますが。

20年くらい前、サンフランシスコの本屋でお客がコーヒー飲みながら、店の本を座り読みしているのを見た時、こういう本屋が日本にも欲しいと思った覚えがありますが、まさか無印とTSUTAYAが始めるとは、当時は思いもよりませんでした。なんか胸熱ですね。

ミャンマーで「ヒップな生活革命」は進むのか?

それでは、私が今住んでるミャンマーで、ポートランド・ブルックリン化は進むのでしょうか?
通常、こういうサスティナブルとか、エコフレドリーとか、手仕事への評価とか、地場資本への配慮とかの消費性向は、あるレベルまで成熟した消費者や市場が存在するのが前提とされています。
現在のミャンマーにそれがあるかと言えば、かなり疑問です。
以前、Facebookでヤンゴン在住の外国人が、H&Mの不用品のワンピースを無料であげると投稿した時は、もの凄い勢いでミャンマー女子が食いついていたのを見ても、ファーストファッションに対して、搾取や環境破壊を生み出す主体として抵抗感を持っているとは考えにくいです。
また、無農薬農業を推進している日本のNGOの方にお話を聞いたときも、ローカルには安全な食品に対する問題意識や需要がないため、今のところミャンマー在住の外国人が顧客になっていると言われてました。

ここまで書くとミャンマーでは「ヒップな生活革命」は時期尚早ということになります。
しかし、消費市場から生産現場に目を移すと違った風景が見えてきます。この国の生産現場には、先進国にはない強みがあります。

まず大幅に産業の機械化が遅れているため、織物や縫製などの手工業に手仕事の伝承が豊富に残されていること。
ミャンマーの地方では、まだ伝統的な製法による織物の製造者がかなり残っています。ヤンゴンのような都心でも、婦人服は既製服よりオーダーメイドが主流です。つまり手仕事により少量生産したプレミアム商品へ対応できる製造基盤があります。



次に流通網が未整備なため、中抜きの中間業者がほとんど存在しないこと。
中抜きの業者がいないため、直接、企画・販売者が生産者と繋がることが容易です。日本のように、流通業の業界慣行や規制に悩まされることがありません。

そして、ヒップな経済活動の実践者が現れはじめていること。
数日前に私も知ったのですが、ミャンマーで注文婦人靴を製造している日本人の方がいます(白星製靴)。
日本で展示会、採寸をして、ミャンマーの工房で製造した後、日本へ納品というプロセスでビジネスを進めています。 納品まで半年待ちということなので、かなりのバックストックを抱えているのでしょう。
他にも婦人服の分野で、オーダーメイドの婦人服事業を準備している日本人の方もいます。

少量生産によるプレミアム商品を製造できる職人や技能が残されていることは、ミャンマーにとって貴重な財産であり、先進国に対する強みです。
ミャンマーには、ヒップを評価する市場はなくとも、その市場へ対応できる生産現場があります。
先進国の先端的な消費市場へ、ミャンマーの生産現場の強みを生かして切り込んでいくのは、なかなかエキサイティングなアイディアではないかと思います。

ミャンマーの人々にとっても、低廉な労賃を目的に進出し、大量生産・大量消費の商品を製造するグローバル企業の代替可能な労働者になるよりは、独立自営業者として個人の技能や個性を認められる少量生産のプレミアム市場への供給者となる方が幸せではないでしょうか。
グローバル企業は、労賃が上がれば生産拠点を移転するという雇用の不安定さを抱えている上、キャリアにおいても個人の技能の向上がマーケットから評価されることも少ないです。中国産のユニクロより、ミャンマー産のユニクロの方が味があると評価されることはありません。

白星製靴さんのようなヒップな実践者が現れはじめているのは、ミャンマーの将来にとって示唆的だと感じています。こういった事例が増えてくれば、ミャンマーは先端市場への供給者としての地位を確立できるかもしれません。

もしかすると、ミャンマーの生活革命は、他の先進国のように消費者サイドではなく、生産者サイドからはじまるのかもしれません。



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2015年2月28日土曜日

もうミャンマーに慣れたなと思う瞬間

ミャンマー在住アイルランド人のブロガーMareK Lenarcikさんが滞在3年目を記念して書いた、ミャンマーに長く居過ぎたと思う36の理由(滞在一ヶ月につき一つの理由)というのを見つけたので紹介します。
これからミャンマーに住む人に対する、ある種のガイド(警告?)として役立つかもしれません。

ミャンマーに長く居過ぎたと思う36の理由
  1. 停電が起こっても動じず、何事もなかったように、今までやっていたことを続ける。
  2. 二つ以上の飲み物や食べ物を頼んだ時、ウェイターが注文を覚えていることを期待しない。
  3. レストランやバーでウェイターやウェイトレスが注文を書き付け、確認していても注文通りに来ることを期待しない。
  4. キンマ(噛みタバコ)をくちゃくちゃさせないミャンマー人と話すのは無理だと知る。
  5. オンラインでYoutubeやビデオを見るのを、ネットが遅過ぎるので無理と最初から諦める。
  6. ストランド・ホテルのハッピーアワーが、最大のナイトライフ・イベントなのを思い知る。
  7. ホテルのバーと通りのビアステーションのみが、街で盛り上がっている場所だと悟る。
  8. 乾冷期の気候を楽しむより、その期間が短いと文句を言い、 夏には雨期の到来を待ちわび、雨期になると早く乾冷期の季節になるのを恋焦がれる。
  9. 一方通行の道を渡るのに、四方向を見るようになる。
  10. ちょっとした違反でミャンマー人警官が車を止めたとき、自然に財布取り出す。
  11. 車を運転するときに、とにかく空いてる場所を見つけて走り出す。
  12. 交差点に侵入するときハザードランプを点滅させる。
  13. 他のドライバーが自分に警告し、道を開けるようクラクションを鳴らすと、とりあえず腹を立て、悪態をつく。
  14. 他の車や歩行者へ警告し、道を開けるようクラクションを鳴らす。
  15. ハンドルが正しい側に付いた車を所有するのは特権だと知る(訳注:ミャンマーは右側通行だが、輸入車はほとんど右ハンドル)。
  16. 誰にも交通ルールを守ることを期待しない。
  17. 普段は温厚なミャンマー人ローカルが、どうして車の運転に関してはすぐ激昂するのか不思議に思う。
  18. 高速道路でバイクが逆走していても驚かなくなる。
  19. 牛の群れが高速道路の車線を塞いでる時、何事もなかったかのように同乗者と会話を続けながら、車線を変える。
  20. 時計よりカレンダーの方を当てにする。
  21. もはや水掛け祭りは楽しめなくなり、この時期はミャンマー国外に脱出することにする。
  22. 数百キロ先で紛争が起こっていても気にしなくなる。ミャンマーの交通事情では紛争が自分の住む場所まで及ぶことはなく、地方の紛争はその地域から広がらない。
  23. 事態がより悪化するので、外国人のトラベルアドバイザーの言うことを無視するようになる。
  24. まともな住宅の家賃が自分の国と変わらない、もしくはより高いことに驚かなくなる。
  25. サンダル、ゆるいシャツ、(性別によらず)ロングスカートが正装と思うようになる。
  26. オフィスが変わっても、鍵を新しく作ってもらうことを期待しない。 
  27. 何かにつけ「あそこよりマシだよ」と言うようになる。
  28. ローカル女性が大きな音を出してゲップをしても、まあ可愛いもんだと思うようになる。
  29.  支払いも、受け取りも、みんな現金。
  30. 銀行口座を持たずに生活する。
  31. 海外でクレジットカードやデヴィッドカードで買い物するときに興奮する。
  32. ビザランでバンコクに行くのは文明への逃避と考える。
  33. 「イエス」は、「イエス」か「たぶん」もしくは「ノー」を意味すると知る。
  34. 心臓病の診断なしにニトログリセリンを処方されたので、ローカル病院へは行かなくなる。
  35. シティマートではアスピリンもStrepsilsもバイアグラでも売ってるし、ローカル薬局では処方箋なしに抗生物質でもバリウムでも買えるので、ローカル病院へは行かなくなる。
  36. ローカルには記憶をリセットする特別なボタンがあって、彼らに頼んだことは何でも5分後には忘れられることができる、と考えるようになる。
以上です。
この人、ミャンマーで車を運転してるみたいで、車・交通関係の記述が多いですね。

自分の経験から付け加えるなら、

37. 街灯の少ない暗い夜道を歩くときは、野良犬の糞やネズミの礫死体を踏まないように気をつける。
38. ビアステーションで飲み食いしている時に、野良犬や野良猫が残飯をあさりに店内を徘徊してても気にしない。
39. ウェイターが器にがっつり指を入れて持って来ても、見なかったことにする。

くらいでしょうか。

別に誇張なしに、上記のことは日常的に起こっていることなので、魅惑の国ミャンマーにいらっしゃる方は、前もって知っておいても良いですね。

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2015年2月19日木曜日

ミャンマー進出がうまくいかない会社の特徴

久々にビジネスぽい投稿です。
こちらに来て約3年経ちますが、日本からミャンマーに来て、営業活動をしたり、パートナー探しをしても、なかなかうまくいかない会社に共通する傾向が見えて来ました。
ここは海外、文化も習慣も日本とは大きく異なり、しかも進出に関連する法律が未整備な場所です。日本と同じ感覚でやって来ても、当然、うまくいきません。
そうした会社に概ね共通する特徴を、以下に列記します。

1. 用意してくる資料が日本語のみ

ここは外国です。当然、日本語で作成したパワーポイントの文書を読める人はあまりいません。
ミャンマー語とはいいませんが、せめて英語の資料は準備すべきです。
取引先やパートナーを日本語話者に限ると、取引や業務提携の対象先が非常に限定されます。

2. 業務・技能がシステム化・形式知化されていない

日本のメディアではよくミャンマー人を「敬虔な仏教徒が多く、親日的で、穏やか、日本人と気質が似ている」と評しています。否定はしませんが、やはり文化や習慣が根本的に異なるので、ビジネス・労働観に関しては共通の基盤はないと見た方がよいでしょう。
受けて来た教育や、育った環境が違うため、仕事に関する知識や経験、業務の完成度に対する感覚等、日本とは前提がまったく異なります。
そのため業務に必要とされる技能や手順が、マニュアル化・システム化されていて、文章や図ですべて理解・習得できるよう、形式知として体系的に整備されている必要があります。
日本の中小企業にありがちな、習って覚えろ的なOJT方式では、教える側の負荷が高く、効率が悪い上、多人数に対応できません。
そもそも従業員の定着率が低いため、OJTで個々に対応するのは無駄な人的投資になりがちです。
現地での研修・教育が難しいため、ミャンマー人を日本に送り、OJTで研修させて、本国に戻すという方法も問題を生みやすいです。日本で研修を受けても、帰国後すぐに離職する、ミャンマーで日本と同水準の賃金・待遇を要求する、最悪、研修期間中に脱走して難民申請するなどのケースが有り得ます。
やはり、業務・技能がマニュアル化・文書化されていて、暗黙知に頼らずに、文化が違う海外でも理解・習得できるよう、研修・教育のシステムが普遍的に形式知化されていることが必須です。

3. 他国への進出経験がない

最後はややハードルが高い条件かもしれませんが、敢えて書き置きます。
メディアで「アジア最後のフロンティア」などと喧伝されるミャンマーですが、言い換えれば、同国内にビジネス・サービスのインフラがほとんどないということを意味します。
電力や物流等の物的なインフラが未整備なのは見れば分かりますが、見落としがちなのが、現地の人的な問題や法律が未整備なことです。
現地企業と提携・取引をする際、相手側からの文書による資料・情報の提示、双方の合意に基づく契約等、段階的に安全なプロセスを踏んで進出することは難しいです。同国では、これまで多くの場合、政府高官とのコネ、商売勘と口約束で仕事が完結していたので、国際的に通用する、透明度の高いビジネスのプロセスの知識や経験の蓄積がありません。そもそも、その必要性さえ認識していないふしがあります。
率直に言って、他のASEAN諸国と比較しても、ミャンマーは企業体力と海外進出のノウハウを要する国だと思われます。最初の海外進出ならば、ミャンマーが本当に自社に取って適正な国かどうかを再考することをお勧めします。
可能であれば、海外企業進出に対するインフラが整備された隣国タイあたりで経験を積んでから、ミャンマーへの進出を検討した方が良いかと思われます。海外で起きるトラブルへの免疫や対処のノウハウがない状態で、広い意味でのビジネスに必要なインフラ(一定の知的水準を達成する教育システム、要求水準に対応するスキルを保有する人材を選べる労働市場等々)や法が未整備な国へ進出するのは、相当の困難を伴います。

補項: 表敬訪問はもうやめましょう

2011年にアメリカの経済制裁が棚上げになった後、多くの日本の都道府県の商工会議所の代表団が、ミャンマー商工会議所連合会(UMFCCI)を表敬訪問しています。 
ミャンマー商工会議所の会議室で、意見交換、記念撮影、帰国後、会議所会報・社内報にその集合写真を掲載、実質的な業務提携や取引実績は残さない、というのが典型的なパターンです。
こうした日本のビジネスパーソンの行動は、ミャンマー人からNATO (No Action, Talk Only)と揶揄されています。
ミャンマーも他の東南アジア諸国と同様に、短期的な利益を追求し、現金収入や実利に直結しない稼働を嫌う気質があるため、この種の表敬訪問は、日本企業や日本人に対するイメージの低下を招いています。
また、儀礼的な訪問の中で、意見交換をしても、得られる情報の質が表面的なものに留まります
それより、ミャンマーに進出して、単独または合弁で現地法人を立ち上げた会社の方から話を聞いた方が得るものが多いでしょう。現地でミャンマー人を直接マネージメントしている人たちからの経験談を聞くことも重要です。 
できることなら、仮に進出した場合、雇用する水準の所得階層のミャンマー人たちと直接に接することをお勧めします。こちらへやって来たものの、要求水準に達する能力を持つ人材が得られず、苦労している企業も多いようです。
ホテルとJETROのオフィスミャンマー商工会議所を、大名行列よろしく、集団で移動しても、進出にあたって必要となる、現地のリアルな情報は得られません。
街へ出て、ローカルのレストランで食事し、現地のサービス水準や衛生観念を知ることも、ミャンマーの民度や市場の成熟度を測る方法のひとつです。

いろいろと書きましたが、外国人でもミャンマーが好きで、ミャンマーに住むこと自体がプライオリティになってる方は、楽しくやっているように見えます。
そうした経済合理性や得失損得を越えた価値観の人の方が、結果的にビジネスも軌道に乗ることが多いようです。山師的で、話の大きいタイプの人は、ここに長くはいられないようで、いつの間にか姿を消していきます。

とにかくミャンマーが好きで、ここで何かを成し遂げたい、この国の発展に貢献したい、そのための苦労は厭わない、今のミャンマーはそんな外国人のために開かれた国です。

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2015年2月3日火曜日

ミャンマーでトートバッグ作ってます2

前の投稿で書いたとおり、昨年末からミャンマーの伝統的な布素材を使用したトートバッグを製作しています。

サンプル製作時点では、思ったより完成度が高く、強度が必要な部分の素材を丈夫な布に変更したり、若干の縫製方法の改善で、本製品の製作にかかれそうに思われました。

しかし、ここはミャンマー、やはり問題が生じます。

ある程度の価格で、値段相応の品質を求められるトートバッグには、撥水性があり、摩耗に強いキャンパス布を使用されていることが多いです。
ミャンマー製のトートバッグでも、このキャンパス布を強度が必要となるバック底部に使用するつもりだったのですが、このキャンパス布がミャンマーでは入手できません。
生産委託先の工房に該当する生地を探してもらっているのですが、なかなか使えそうな生地が見つかりません。
製作するバックの要求水準を満たす生地が見つかるまで、いましばらく時間がかかりそうです。

欲しいのはこういうタイプの布です。
http://www.hide-aci.com/textile/special_canvas.html
もし、ミャンマーで入手できるお店等の情報をお持ちの方がいれば、お知らせください。

以前製作したサンプルは、日常の普段使いで使っています。ミャンマーらしい色使いが気に入っています。

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2014年12月17日水曜日

ミャンマーでトートバッグ作ってます1

ミャンマー製の雑貨で、デザインや品質の良いものを見つけるのは、なかなか難しいです。縫製や作りが雑で、商品として要求される完成度に達していない、デザインが我流で先進国のトレンドやライフスタイルとマッチしていない。そんなモノが大半です。
当然、作り手はミャンマー人ですが、ミャンマーで生活していると、先進国のライフスタイルや、トレンドの傾向など、知りようがないので、仕方がないと言えばそれまでなのですが。
私はモノが好きなので、ローカルの土産物屋や雑貨屋を良くチェックしていますが、なかなか、これと言ったモノに出会うことがありません。
おそらくミャンマー在住の外国人の多くが、同様に感じていることでしょう。

一方、ミャンマーの伝統的な布工芸は、日本人には思いつかないような大胆な配色、洗練されたパターンの配置で、目も綾な美しさのみならず、見る者を楽しませる、新鮮な驚きをも感じさせます。

こうした素材を使ったレベルの高い雑貨を探して、そろそろ2年経ちますが、未だに見つかりません。どうも待っていても誰も作ってくれそうもないので、重い腰を上げて、実際に自分で企画・製作することにしました。

最初に作ることにしたのは、トートバッグ。

日常的に使うことが多く、モノとして実用性を備えている上、素材とする布のデザインをそのまま生かすことが出来るという理由で、トートバッグを選びました。

実際に取り掛かったのは、半年程前で、近所の雑貨屋でサンプル作成を頼んでみたのですが、やはり縫製や作りが雑で、これでは、とても商品化には漕ぎ着けられそうもないと諦めていました。
その後、障碍者の自立支援をサポートする日本のNGOにより運営されている、研修所を兼ねた工房をご紹介いただき、ようやく製品化に目処が立ちました。
縫製も丁寧だし、こちらの要望も把握して聞いてもらえるので、仕事が進めやすい。なかなかミャンマーでは得難い工房です。



昨日、最初のサンプルの上がりを見たのですが、予想外の完成度の高さでした。
基本的な仕様や作りは、世界標準に達しています。
これに若干の修正や改善を加えれば、実用性・耐久性が高く、素材の持つミャンマー的な色彩感覚やパターンが見た目に楽しいバックが出来上がります。


 一つの柄の布から製作できるバックは5個。ミャンマーの流通事情では、安定的に同じ柄の布が手に入らないので、各パターン5個の限定品になりそうです。

もし、ご興味のある方がいれば、お早めにご連絡ください。
製作と平行して、予約販売も受け付けます。

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2014年12月1日月曜日

World Music Festival in Yangon

Inatitut Franc Ais de Birmanieというフランス文化センターのような場所で、11月28日、11月29日の二日間に渡り無料のジャズライブが開催されたので行って来ました。

ミャンマーは基本的に外国人が楽しめるような娯楽やイベントがないので、たまにこういうイベントがあると、外国人が総出でやって来ます。こんなに沢山、外国人がヤンゴンに住んでいるのかと改めて驚きます。
しかも普段の自分の生活圏では見かけないタイプの外国人。ファッション雑誌の街角おしゃれスナップに出て来そうなパリジェーンヌッ!!!とか、ウーピー・ゴールドパークみたいな黒人のオバさんとか、スペイン語を話している国籍不明のグループとか。

会場は敷地内の前庭で、キャパシティは1000人くらい。客層はミャンマー人と欧米人がほぼ半々。ミャンマー人以外のアジア系外国人はあまり見かけませんでした。


初日は、ライブが始まる前から満席で、ずっと立ってるのは辛いなと思ってたら、最初のバンドの演奏が始まって三曲くらいすると二割くらいミャンマー人が帰ってしまい、無事座れました。60年代にウェイン・ショーターがやっていたタイプのジャズで、リズムセクションの間をソプラノ・サックスがピロピロ浮遊するような演奏でした。
これはミャンマー人にはウケないだろうと思ってたら、案の定退屈したようで、どんどんミャンマー人が席を立って行きました(笑)。
モード・ジャズとかミャンマーではまず聴く機会はないし、この種の音楽は学習機会や予備知識のない人が聴いても面白くないですからね。


二日目になると、結構空席が目立ちました。初日は開演前は満席でしたが、この日は七割くらいの客入りです。初日がつまらなかったという噂がミャンマー人の間で、広まったのでしょうか?

二日目の二番目に出たバンドが、このイベント中のハイライトでした。このバンドならお金払ってもでも観たい。
Eliane Amherdというスイスのシンガーソングライターで、歌もギターも上手い。リズム・アンド・ブルースやジャズを基本に、アフリカ的なポリリズムな要素も絡んで、聴いててとても気持ちいい。テイストが近い有名なミュージシャンを挙げるとノラ・ジョーンズあたりか。



何曲かやったカヴァーも秀逸。聴いてて曲名分かったのは、Tom Waitsの"Jockey Full Of Bourbon"、Tamba Trioの"Berimbau"とか。
個人的に一番盛り上がったのは、Ann Peeblesの"I can stand the rain"のカヴァー。
選曲センスもグッドです。


リズムセクションもボトムが太くて、迫力がある上、ファンキーでした。このバンドだけ、明らかにセンスも演奏力も次元が違ってました。
スイスって音楽のレベル高いのかなと思ったのですが、パンフレット読むとEliane Amherdさんはスイス人であるものの、活動拠点はニューヨークで、アメリカのラジオチャートにチャートインしたこともあるそうです。バックのリズムセクションの人たちも、ニューヨークで活動するスタジオ・ミュージシャンみたいです。
やはり層が厚くて、競争率の高いところで活動している人はレベルが高い。

Youtubeにも結構動画があるようなので、ご興味がある方はどうぞ。


ともかく野外で音楽聴きながら、ビール飲むのはとても気持ちが良いものです。このイベントの主催者の方たちに感謝します。ミャンマーにミュージシャンを招聘するのは、ヴィザや機材の輸送等、手続きや準備が大変そうですし。
ミャンマーにもこんなイベントが増えたら、在留外国人の一人として嬉しいですね。

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2014年11月22日土曜日

ヤンゴンで注文家具を作った

"男には二種類いる。女を愛する男と物を愛する男だ"

と、のっけからハードボイルド風の箴言で始めてみましたが、私は圧倒的に後者です(笑)。要するにオタク気質なわけです。なので、気がつくとモノがどんどん増えている。
そういう訳で、2年程前にミャンマーで買った本棚がすでに一杯になり、これ以上、収納ができなくなりました。

そのため以前このブログでご紹介したヤンゴンの注文家具屋さん sir. bo ni で本棚を購入しました。  竹の支柱と木の棚板の自然素材を組み合わせた、ミャンマーらしいデザインの本棚です。
作製依頼してから約1週間で完成。気になるお値段は60USD。他の国の注文家具と比べれば、かなりリーズナブルではないでしょうか。


買って1ヶ月程で、もうかなり中身が詰まってます。これ以上モノを増やさないようにせねば。


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